怪異奇譚


ちょうど日付が変わる頃、そばに置いていたスマホに着信が入る、眠たかったのもあって何も考えずに電話をとってしまった

「…もし、もし…」
「もしもし、私メリーさんゴミ捨て場にいるの」

ツーツー

……メリーさん??都市伝説の…?なんだっけ捨てた人形が戻ってくるやつ…?俺、人形なんて捨てた記憶ないけど?

まぁ悪戯電話でしょ、何時もの俺の視界をうろつく幽霊よりまし、目覚めちゃったし絵でも描こうかなってお茶いれて机に座ればまた、着信が入ってもしかしてと思って出れば正解

「もしもし、だれ?」
「私メリーさん、六陣駅前にいるの」

駅前…近所だねぇ…これ本当に来るのかなぁ…
まぁ殺されなきゃいいや、ただ描いてるときにきたらどうしよっかなぁ、手に持ったシャーペンを動かしながら考える
ペン入れとかしてて脅かされてブレるの嫌だし、デジタルにしとこ、描くのが楽しくて鼻歌を歌いながら描いてればまた着信

「私メリーさん六鳴マンションの前にいるの」

んー下にいるってことかぁ…にしてもこれ本当にメリーさん来るの?俺、人形捨ててないのに?変なの

なんか、お腹すいたなぁ…カップ麺でも食べようかな、あーでも冷凍のうどんあるしうどん温めよ

レンジで温めたうどんを水で冷やして簡単に切ったオクラと鰹節を乘せて麺つゆで食べる、冷凍って便利だよねぇ…

「いただきます」

誰もいなくても自然と言ってしまうのだから癖って怖いよねぇ…
さらっと食べ終わって

「ごちそうさま」

と言って使った食器を片付けて、手を拭いてるところで着信

「私メリーさん、あなたの…」
「?」
「……まちがえちゃった……」

間違えた?なにそれドジっ子?今これきっと後ろにいるんだよね?そぉっと後ろをみれば、ところどころ汚れてはいるけれど綺麗なお人形

「番号…まちがえちゃった…」

表情はないものの声でわかる、明らかに落ち込んでる…なんだか居たたまれなくなり普段なら幽霊とか怪異なんて無視するんだけど思わず

「そういうこともあるよね」
「…ぐすん、まいちゃんのとこ行くつもりだったのに…」
「間違って俺にかけちゃったの?」
「うん…」

可愛い人形だなぁデッサンとかしちゃダメかなぁ?

「君、俺の家に暫くいる?」
「…?なんで?」
「俺、君の絵描きたいんだ」
「わぁ!嬉しい!いいわ!私ここにいる!今日から私あなたのお人形よ!」
「いきなり元気になったなぁ…」

絵を描きたいといえば、弾んだ声で嬉しい!と言ってくるくるーと踊りだすメリーさん、踊ってるのなかなかに心霊現象だなぁもう慣れっこだけどさ

そうして俺の家にお人形が一体机のそばに置かれるようになった、なんか寂しいしって思って買った人形用の椅子を彼女は気に入ったのか座って鼻歌を歌う

「メリーさんそれ気に入った?」
「ええ!すちさんはセンスありますわ、だから自信をお持ちになって?蜂蜜色の彼もきっと落とせますわ!」
「メリーさん??なんで知ってるの?」
「女の子は恋バナが好きなんですわよ?」

おほほっと笑うメリーさん…
俺誰にもみことちゃんが好きとか言ってないんだけど??幽霊ネットワーク恐ろしいな

みことちゃん、友達のままでいいからそばにいれればなぁって思ってたけど頑張ってみようかなぁ…

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