怪異奇譚
帰り道、珍しく同じ時間に帰ることになったいるまちゃんとほぼ何時も一緒に帰るこさめちゃん、いつもはひまちゃんも一緒なんだけど今日は「なんか、嫌な予感するから俺今日は先帰るー」とか言って部活を休んで帰っちゃったからいない、今の状況的にひまちゃんの予感は合っていて、俺もこんな状況は初めてで流石にちょっと怖い
「やっばいなぁ…」
電車に乗って席に座ったところまでは覚えてる、気付いたら眠っていて起きたら、外に流れるのは知らない景色と車内で眠っている人達、そして俺の横で同じように起きて外をみて驚いてる二人
「えっ!ここどこ!?」
「……こんな場所あったか?」
俺一人ならともかく二人もいるとなると、生きて帰せるかな…
きっと2人には見えてないんだろうけど、座ってる人の中に幽霊混じってるなぁ…、嫌にはっきりと見えて不気味、亡くなったばっかりなのか?それとも死んだことを自覚してない?もしかしてここは死に近い?
「…っ!おい!すち!?」
「わぁ!な、なに?」
「やっと気づいた、こさめ達さっきからずっと呼んでたんだよ?」
「ごめん、ちょっと考え事してた…とりあえず、車掌室見に行かない?」
定番のところから調べていくべきだよね…
いればよし、いなければヤバいね、いっそ見えないほうがいいなぁ
「なんで?」
「んーこういうのの定番だから」
「……おい、すち?これあれか?この前と同じか??」
俺の言葉で何かを察したのか青褪めるいるまちゃん
「そうだよ、多分これ怪異だよ」
「なんでだよ……やっとマスク平気になったってのに…」
「あーそうだよね!なんかいるま君最近マスク嫌がってたよね?そういえばなんで?」
「言っても信じねぇからやだ」
「えぇ!そんなことないよ!教えてよ」
「やだ、絶対やだ」
こさめちゃんといるまちゃんが"教えて!""嫌だ!"と言い合いを始める、呑気だなぁ…いやまぁそれくらいでいいかなぁ?変に暗いと引っ張られるだろうし
「2人とも、俺は前の車両いくよ?」
「待て置いてくな!こえーだろうが!」
「いるま君、すち君待ってこさめもいく!」
「なら、みんなでいこ?」
俺を先頭に前の車両へ向かう、席に座ってる人はまばらにいるけど皆寝てるなぁ
「誰もいねぇ…」
「変だよね、こさめ達が電車乗った時、人たくさんいたよね?」
「……」
やっば!人と霊区別出来なくなってきてるじゃん!あれ生きてないの…?結構ハッキリ見えるけど……ううん?たしかに呼吸音とかしない、な?不用意に発言しなくてよかったぁ…それで2人が霊認識しちゃったら可愛そうだもんね
「先頭車両あともう1個先かな?」
「だな」
「誰もいないのなんか不気味…それになんかここ寒くない?」
「クーラー効きすぎ、羽織るもんほしいわ」
「わかるぅ」
寒いのやっばいなぁ、それに霊だとわかりにくいけど席にいる人達が大怪我してるからわかりやすい頭から血でてたり足が無かったり身体半分以上ないのもいる、生きて帰れるか心配になってきた…
車両内を歩いて先頭車両にたどり着き車掌室の前
「……」
「暗いね」
「中見えねーな」
2人には見えないのかぁ……車掌室から覗くおどろおどろしい瞳がギョロリとこちらを見て、それは笑ってその瞬間、案内放送が流れた
"次はきさらぎ〜、きさらぎ〜お出口は左側となります"
「きさらぎ?なんだそこ」
「こさめ知らなーい」
「…俺も知らないねぇ」
…知らないとは言ったけど、実は知ってはいる、きさらぎ駅はネットで有名な都市伝説、ひとりの女性がここに迷い込んでそれを匿名掲示板に書き込んで、最終的に親切な男に送ってもらうこと書き込むもののその男の様子がおかしいから様子を見て逃げる、と書き込んだの最後に帰ってきてない、そう帰ってきてないんだよね…
「降りよっか…」
「え、降りんの?」
「いいんじゃない?ここにいてもどこかわかんないし降りて何処か確認しようよ?」
「なるほどな、なら降りるか」
プシューっと電車の扉の開く音、扉が開いた先は普通っぽいベンチがあって自販機がおいてあるような普通の駅……普通過ぎてこわい
「駅名かいたのどこにあるかなぁ」
「お、路線図みっけ…きさらぎ駅の前はっと……やみ駅?お前等知ってる?」
「こさめ、知らなーい」
「俺も」
「ここの次がかたす駅、だってよ他の駅の名前は掠れてて読めねぇ、チッ使えねぇな…」
やみは黄泉、かたすは根の堅州国、ネットで言われるのはこうだったはず、これはマジのきさらぎ駅だなぁやだなぁ
「駅から出てみっか?」
「それは駄目」
「えぇなんで?外のがわかること多いかもよ?」
「駄目だよ、簡単に境界は超えちゃだめ、ただでさえここ異界なのに…」
「ん?何言ってるのすち君」
2人は起きてなかったけどここに来る時トンネルを通った、おそらくその時点で異界に踏み込んだ、だから境界になるようなところには慎重に近づかないと…改札を抜けたら元の世界に、ならいいけどこことは別の異界に飛ぶのであれば危険すぎる、それならここにいたほうがまだネットの情報があるほうが対処しやすい
「……一度ネット通りにしてみる?でもなぁ見たくないし会いたくないな…そもそも会って何か変わるのか?連れてかれるのはごめんだよ?……」
「おーいすっちー?思考が漏れてるぞ?」
「…え!あ、ごめん…ねぇ2人とも」
「「なに/なんだ?」」
「帰れなくても俺を恨まないでね?」
とりあえずネット通りにしてみよう。それで死んではいないからきっと大丈夫
「ねぇいるま君、なんかすち君の言ってる意味がわかんないんだけど」
「俺もよくわかんねぇけど、多分俺等はヤバいことに巻き込まれてて、俺等よりすちのがこういうのに詳しいだろうから任せたほうがいいってのだけはわかる」
「ヤバイことってなんなの?こさめ達知らない駅についただけじゃないの?」
「多分違うお前気づいてねぇの?夏なのにここ妙に寒いしあそこにある時計が12時から動かねぇ、スマホは圏外、信じたくねぇけどすちがあぁ言うってことは俺等はここから帰れない可能性がある」
「はぁ?」
「2人共ーとりあえず線路沿い歩いて次の駅向かうよ」
「おぅ」
「え、あっうん!」
いるまちゃんは一度口裂け女に会っちゃってるから、なんとなくヤバいことに気づいてるけどこさめちゃんはずっと戸惑ってる説明してないし当然なんだけどさ、知らないほうが安全なことが多いから
線路沿いを3人で歩く、変なことは今のところない
ただ遠くから太鼓と鈴の音が聞こえ始めた
「なぁ、なんか音聞こえね?」
「なんにも聞こえないよ?」
「なんか太鼓と鈴の音聞こえんだけど…」
ネット通りだなぁ…なら今から来る、かな
「……2人は今から後ろ見ちゃ駄目だよ」
「なんで?」
「連れてかれるかもしれないから」
「危ないから線路の上を歩いちゃ駄目だよ」
後ろから男の声がした。その声に俺は、振り向く
振り向けば片足のない男、来たね
「えっ!」
「こさめちゃん!振り向いちゃ駄目!」
「じゃ、じゃあなんですち君は振り向いてるの!?」
「俺は慣れてるから……このまま進むよ、血流してて片足のない男の人が見たいなら振り向いていいよ」
見た目がひどいだけだからあれなら多分見ても連れてかれない、けど結構グロ…血流してるとか聞いてないんだけど……
「みない!!こさめ振り向かない!!」
「こわいのやだ、こわいのやだ…」
こさめちゃんもいるまちゃんもわかりやすく怯えるなぁ…にしても俺の言葉信じてくれるのは助かるなぁ、冗談でしょとか嘘言っんてんじゃないのって言われるかと思ってた
「危ないから線路の上を歩いちゃ駄目だよ」
「繰り返し言うタイプか…」
「タイプとかあんのかよ!」
「あるよ一回しか言わないのとか繰り返し同じこと言って途中でキレるのもいるね、幽霊って構ってちゃんいっぱいいるよまぁ全部無視するけど」
「……すち君もいるま君も普通に話してるけどこさめ何起こってるのか全然わかんないんだけど」
「理解しないほうがいいよ」
理解すると途端寄ってくるからね
男の声が聞こえ初めてそしてそれがちょうど聞こえなくなった頃トンネルが見えてきた
「トンネルあったなぁ…」
「はいんの?」
「入るよ」
暗いトンネル内、等間隔に置かれた照明をたよりに前へ進み、トンネルを出たら少し先に1台の車と男性が見えた
「君たちこんな時間にどうしたの?」
「貴方こそどうしたの?」
「え、すち君?」
「なんの話だい?」
「ここにきた女性どうしたの?」
「……なんのことかな?」
「知りたかったけど教えてくれないならいいや、俺達は車に乗らないよ、ねぇきさらぎ駅はどっち?」
「チッ、駅はこの先だよ」
「ありがとう」
舌打ちをして男は指を指す、男の指差す方向は今まで俺たちが進んで方向と同じ、まぁだよねぇ…簡単に帰れはしないか
「さ、行こうか」
「え、いいの?同じ方向だよ?」
「いいんだよ」
こさめちゃんが不安そうに聞いてくるけど、これはきっとそういうものだから仕方ない、歩いた先にはきさらぎ駅の看板
「ループしてたか…なら駅構内になんかあるなぁ…いるまちゃーん?生きてる?」
ずっと喋らず俺の服の裾をつかんでたいるまちゃん、可愛らしいことするよなぁ、らんらんはこのギャップが好きなのかなぁ
「だ、だいじょ、うぶ」
「大丈夫じゃないねぇ…そんなに怖いなら手繋いどく?」
「いや、いい」
「はい!はい!こさめ!こさめが手繋ぐ!そんでいるま君の手をこさめが掴む!」
俺と手を繋いだこさめちゃんが無理やりいるまちゃんの手を掴む、なかなか強引だなぁ
「はぁ?」
「こさめよりびびってるくせになぁに強がってんの?なんか怖いし、すち君も何時も以上に分かんない行動するしでこさめよくわかんないけど、これはもうすち君に任せとけば良いんでしょ?」
「いいよ、変に動かれるのも困っちゃうし」
大人しく着いてきてくれるほうが助かる、何があるかわかんないから
「それにあとで教えくれる気もなさげだしこさめはもうぜーんぶすち君に任せることにした!」
「あはは…」
「……そう、だな…おいすっちー」
「何?」
「任せた!最悪俺は目をつぶる!」
「う、うん…いいけどね」
多分、いるまちゃん耳が良いから見えてないけど音だけは聞こえてるから目を塞いでも意味ないって言うのは酷かな…黙っててあげよ…
「でもなぁ脱出方法わかんないんだよねぇ…2人は駅で困った時どうしてる?」
「駅で?」
「そう、駅で俺は何時もならスマホで調べちゃうしその辺にいる駅員さんに話しかけちゃうんだけどさぁ」
「駅員…なら駅員室いけばいるんじゃね?」
「こさめも思った!ここにはおらんくても駅員室ならいるでしょ!」
「あぁ!そっか…駅員室か…全然思いつかなかった…」
そうか、駅員室…行ったことなかったから全然頭になかった…
「なら行こうか駅員室」
3人で手を繋いだまま駅員室を探せば改札付近にあるのを見つけた、そしてガラスの向こう側に黒い人形のナニカがいた、こちらを認識はしてないけど、なんかヤバそうな雰囲気してる…
「2人にはみえてる?」
「……なんかいるの?」
「何も見えねぇぞ?」
「そっか、じゃあ俺今からそこに見えてるのと話すけど手繋いだままでいいから後ろ向いてて、絶対に見ちゃ駄目だよ」
「わかった!」
「おう、後ろ向いて目つぶってる」
2人が後ろを向いたのを確認して、俺はナニカに話しかける
「ねぇそこの黒い人」
「……」
「聞こえてるでしょ?ここから現に帰る方法知らない?」
黒いナニカのちょうど口あたりが動くのが見えた、そして質問に答えるように音を発した
「蛻�ャヲ繧定ウシ蜈・縺励※縺上□縺輔>」
「切符?どこで買うの?」
「縺昴■繧峨�蛻ク螢イ讖溘↓縺ヲ雉シ蜈・縺ァ縺阪∪縺�」
「値段は?」
「險俶�縲∝ッソ蜻ス縲�。倥>縺ョ菴輔l縺九〒縺�」
「切符1枚で何人乗れる?」
「1譫壹〒菴穂ココ縺ァ繧ゆケ励l縺セ縺�」
「そうなんだよかった、切符持って電車乗ればいいの?」
「縺ッ縺�」
「そう、今言ったことは全部本当?」
「縺ッ縺�」
「……ありがとう」
聞きたいことを聞いて最後にお礼を言う、そうすれば黒いナニカはお辞儀をして駅員室のさらに奥へと消えた
「2人とも、もういいよ」
「大丈夫?もういい?」
「……」
「いいよ、切符買って電車に乗れば帰れるって」
「そっか!よかった!なら切符買って帰ろ!」
「……」
「いるまちゃん、もしかして全部聞こえた?」
「……きこえた…」
「あらまぁ…でも、よかったねぇ」
「何がだよ!めっちゃこわかったんだけど!」
「何て言ってるかはわかんなかったでしょ?」
「そう、だけど…」
いるまちゃんに視線を合わせるように少し屈んで、安心させるように微笑む
「いるまちゃんはまだ大丈夫、いるまちゃんは聞こえるだけなんでしょなら大丈夫、全部聞こえなかったことにすればいいよ、彼奴等は認識しなきゃ寄ってこない、気づいてないふりさえしてれば大丈夫、大丈夫だよいるまちゃんは見えないから簡単だよ、知らない声に反応しなきゃいいだけだから」
「す、ち…」
「……どうしたの?」
「っなん、だっけ切符買うんだっけ」
「あ!そうそう、俺が買ってくるからちょっと待っててね」
黒いナニカが教えてくれた券売機で1枚切符を買う、ボタンには何も書かれておらず同じボタンが3つ並んでる、これは俺の運次第ってことかな、対価はなんだろな押してからのお楽しみ
ポチッ
ボタンを押したのと同時に何か失った感覚、何をとられたのかわからないけどこれで帰れるかな
「お待たせ、買ったから電車戻ろっか」
「…おう」
「…うん」
なんか2人ともテンション低くない?まぁいいか、ふふよかったぁ…ちゃんと帰れそうだ俺はいいけど2人は帰んないとね
手を繋いだままの2人と一緒に電車に乗る、電車に3人で乗れば扉が閉まって
"次は六陣駅、六陣駅に参ります"
案内が流れて、無事に帰れそうで安心したのかなんか眠くなってきたな
「…いるま君、すち君、こさめ寝ていい?」
「奇遇だな俺も眠いんだ」
「俺も…とりあえず空いてる席座ろぉ」
3人で空いた席に座れば睡魔に襲われる、隣に座った2人もそうなのか目を閉じてるのが見える、重くなる瞼、堪えきれずに目をつぶろうとした時にナニカがみえて、そのナニカが俺をみて何か言った
「"縺ゅ◆繧峨@縺�が繝「繝√Ε縺ソ繝シ縺、縺代◆"」
やだなぁまた巻き込まれるのか
瞼を閉じて次目を覚ました時、目に映ったのは見覚えのある景色で無事に戻れたんだなと思った、そして先程言われた言葉を思い出す、あたらしいオモチャみーつけたか……次は何に目をつけられたのかな…
俺はその日から毎夜悪夢に悩まされるようになった