魔国

母がいなくってから、働いて働いてはたらいて、生きるために必死になった。獣人の俺は低賃金でしか雇ってもらえないから生きてくためには何個も仕事を掛け持ちしないと今日のご飯すらない。教会の人が定期的に炊き出ししてくれるからそれで生きてるようなもの、でもついに体力の限界がきて路地の片隅で座りこんでいた…そんな時、頭上から「お前、なんでわらってんの?」と声が聞こえた。声を出す元気もなくてただ声の聞こえる方に顔を向けたら、心底不思議そうにこちらを見つめる紫髪の男の子

「ねぇ、なんで?」
「…っ、」
「話せない?」
「…は、なせる」
「ふーん、お前うちにこいよ」

無理矢理声を出して返ってきたのは、うちに来い、意味がわからなかった、俺が気づいてなかっただけでずっといたんだろう男の子は側にいた執事?が「連れ帰るのですか?」と聞いていた、それに男の子が「おれの従者にする」と返していた

……え、雇うってこと?なんで?

抵抗する元気もない俺は執事に抱えられて男の子の家までつれていかれ、メイドに全身洗われて乾かされ、ご飯を食べさせられた。すっごく美味しかった。そのまま寝かされ、次の日に男の子に再会した

「あ、お前…前髪ピンクだったんだ」
「えっと……助けてくれてありがとうございます」
「いいよ、その代わり俺のものになれ」
「……雇っていただける、ということですか」
「うん、父上がうるせーんだよ、一人ぐらい従者つけろって、同じ貴族のやつは面倒だし、父上の紹介する奴にするのはなんかムカつくし、それでお前!」
「はぁ」
「今から死ぬ気で仕事覚えろ、んで俺の従者になれ」

突然の出来事、俺に拒否権はない、それに断る理由もなかった、生きるためにはちょうどよかったし、それに何より、昨日は疲れ果てて意識も朦朧としてたから気づかなかった、顔が、顔がめっちゃ好み……好き……

「わかりました。」
「よーし!物分かりがよくて助かる、俺の名前はいるま、お前の名前は?」
「ランです」
「よし、ランこれからはお前は俺のもんな」

そう言っているま様は笑った、ニカッと笑う顔が可愛い、仕事覚えるの頑張ろうあの笑顔のために頑張ろう、そう思えたのは最初だけ、ちゃんとご飯は食べられるし睡眠もとれるけど、仕事をね、教えてくれる執事長がスパルタだった。それはもうスパルタ、なんでも一回で覚えろと、まぁ俺は?天才ですから?覚えましたけど?ハイスピードで仕事を覚えて、いるま付きになったけどな!まぁあのままあそこで倒れてたら野垂れ死にするか奴隷いきだっただろうから必死だったのもある、覚えられなくて捨てられたらたまったもんじゃない。そして出会った日から、お互い仲良くなって二人の時はタメ口で話そう、なんて言い始めた頃、突然いるまが質問してくる

「そういや、お前さーなんであの時、笑ってたの?」
「あー初めてあった時?母から、言われてたんだよ。笑顔でいればいつか幸せになれるからって」
「なるほどなぁ」
「あと、あんた顔は可愛いんだから笑ってたほうが得だよって」
「関心した俺の気持ちを返せ」
「ははっ!でも笑ってたからいるまが拾ってくれたんだろ?なら成功じゃん」
「うわぁ…」

ドン引きしてるの面白いなあ、俺、まんまとハマったの?と言わんばかりの顔してる。それより俺はなんで俺を拾ったのか気になるんだよなぁ

「ねぇ、なんでいるまは俺を拾ったの?」
「ん?言っただろ都合がよかったんだよ、あーあとこれ言うのイヤだけどな、路地裏で明らかにボロボロの奴が笑って絶望してんの気にならないほうが可笑しい」
「たしかに…他にはないの?」
「……ない」
「本当に?」
「……顔が…」
「顔?」
「顔が!好みだったから!そばにつけるなら好みの顔が良かったんだよ!」
「まぁじか…」

顔を真っ赤にして叫ぶように言ういるま、はぁ…照れてる顔好き…俺、この顔でよかった、ままありがとう…

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