刀の保健室って何ですか?
𝐍𝐚𝐦𝐞
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無言で着いていくと、小さな灯りのある公園に誘導され、ベンチに座った。
『ごめんなさいアホなんですよ私。でも今はちょっと傷心中で・・・小石を蹴っただけなんですって。』
「小石?」
小石知らないんですか?と行ったら叩かれた。いやだって何それみたいな顔したじゃん。
「君のことをざっと調べさせて貰ったが、特に体質的な特異性は無いな。それでもってあの空間に侵入できたとなると・・・・・・。」
聞き捨てならない言葉が聞こえたが、後半も濃い話だった。
話の処理をしようと頭を抱えた時、ポケットが振動したと思えば着信音が鳴り響いた。
『・・・・・・・・・。』
「特に興味はないが、でなくていいのか?」
びーびーびーびー。
振動し続けるポケットと、動こうとしない私を交互に見る彼から遠慮気味な声が聞こえた。
『いいんです。多分、出ても変わらないので。』
電話の相手などとうに分かっていた。
友人か、元恋人か。
今更、何を話すというのだろうか。弁解?謝罪?それとも逆ギレ?
電話相手の顔を想像しただけで気分が悪くなり、手を握りしめる。手を置いていた太もものスカートがくしゃりと歪んだ。
『先程、言ったじゃないですか。傷心中って。友達と彼氏が浮気してたんですよね、浮気じゃないかもしれない。でも放課後の教室に2人でいて寄り添ってるなんて、おかしいじゃないですか。』
何も言わない彼に甘えて、半分愚痴のような行き場も居場所もない今の私の経緯を話し始めた。
そんなもの興味無い。と一切してくると思ったのに、彼は隣に腰掛け優雅に足を組んだ。そしてこちらに向き直すと続きは?と言葉を述べた。
『え、あ、それで、二人に怒ろうと思ったんです。でもそれが出来なくて。何より自分に失望しました。こんなに自信がなかったんだ。大切なものを守れないんだなって。』
胸が苦しかった。
悪いことをしているわけじゃないのに。
被害者なのに。
それでも原因が私にあったのではないかと思ってしまうその自分の思考回路が嫌だった。
「自分の居場所を譲る行為は決して優しさじゃない。犠牲心を宿らせるな。身を滅ぼすよ。」
正論が隣から突き刺さる。
わかっている。
今こうして明日学校に行きたくないと思っているのは私だけ。
『まあ、いいんです。もう卒業だし、大学も行きたくないし。』
「保護施設に興味はあるか?」
え?保護施設ですか?オウム返しをすると、すかさず彼は脇に抱えた資料を渡してきた。
そこには持ち出し禁止!と参考者以外観覧禁止!の真っ赤な印が押されていた。
これ、私が見ていいやつなのかな。
「保健室という形態に擬似する場所だ。保護して次に行く場所まで滞在させて、時には看取るかもしれないけど、やりがいはあるし、このなら常に君の居場所もあるだろう。」
所謂保健所の事だろう。犬猫などの野生動物の保護や処分を行っているのは私も知っている。それも行政職じゃないか。ペラペラと捲った後に彼を見た。
『都合が良かったですか?』
「そうだな。とても。俺が探していた人材は、霊力充分、年齢は若めの体力がありそうな人間で、できれば家族関係が複雑でなく歴史に干渉するような人物でない。」
完璧じゃないか・・・・・・・・・。
ただ霊力とかいうスピリチュアルはよく分からないがその他は私に思い当たる節がある。
『求人広告とかそういった人ですか?』
「違う。俺の名は山姥切長義。歴史を守る政府の管轄にいる刀剣男士だ。」
寒くて居場所を失った夜。
私に新たな世界と居場所を提供してくれた人は、人間ではなかった。