春宵
𝐍𝐚𝐦𝐞
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『…膝丸!髭切!無事?』
2人に声をかけると、奥の方から問題なさそうな返事が聞こえたので安堵した。
無事にこちら側の時間遡行軍を殲滅したようだった。
「加州、久々の戦闘で鈍ったのではあるまいな?」
『ぐ……、あのねえ、俺は太刀じゃないの。刀装だって少ないんだから…。』
挑発する膝丸に噛み付く俺。
その様子を髭切はおやおや、と笑っていた。
「ひざまる〜!ひげきりさま~!きよみつ!!みつけましたよ~!!!!!!!」
戦闘後の一時も無く、丘の上から今剣がぶんぶんと手を振っていた。
見る限り怪我はしてない様子なので、あちら側も無事殲滅をしたのだろう。
『今剣、お疲れ様。そっちは無事に殲滅できた?』
「はい!だいじょうぶでしたよ!
…ええと、いしきりまるが、きてほしいといっていました!」
石切丸が…?
理由を聞いても、さあ?と答える今剣。後を追うように俺達は山道を下った。
◇◇◇◇
「まっておりましたぞ!さあさあ、こちらへ。」
「…遅かったね。」
鳴狐とそのお供の狐とも合流し、向かったのは紅い大きな神宮だった。
鳥居の横に掘られた文字に目を向けると、そこが何処かは一瞬で判断が着いた。
「鶴岡八幡宮だね。」
横で髭切が呟いた。
そう、鶴岡八幡宮。鎌倉を守る神宮であり、源頼朝が開いたとされる地。
そして、俺たちの任務が遂行できていれば、この先で源実朝は命を落とす予定の地でもあった。
「ありゃまあ…。」
『……なるほどね。』
境内を歩くこと数分、石切丸の背中を見つけたので声をかけてみると、そこから見える景色は所謂地獄そのものだった。
階段に
広がった血溜まりの中に倒れた姿こそ、源実朝だった。
騒々しい人を避けるように登った境内の屋根上から見えるその姿に言葉を失った。
「すまないね、こんな所にわざわざ呼び出してしまって。」
『まあ、これが正しい史実なわけだし。』
じゃあ帰ろっか。そう石切丸に告げると、私もそうしたいんだけれどね……。と続きを口にした。
「髭切さん、膝丸さん。君たちは源氏の装飾刀と呼ばれるものに心当たりはあるかい?」
…………装飾刀?
源氏の方へと目線を向けると、双方共に頷いた。
どうやらその装飾刀に覚えはあるようだ。
「だが、アレは宝飾品の類だろう?兄者。」
「うーん、そうだったかもしれないねえ。彼、よく分からない子だったから……。」
アレと言う膝丸と、彼という髭切。
認識はあるものの少し解釈がズレているのか。はたまた兄の方の気まぐれなのか。
進みそうにない話をよそに、俺は爪に視線を落とした。
「そのかたながどうかしたのですか?」
「いや、私の杞憂ならいいのだけどね。ほら、彼の血溜まりに落ちている白い刀があるだろう?恐らくあの刀がそれなのでは、と思ってね。」
ほら、あれだよ。と指さした石切丸。
それを追うように視線を向ければ、源実朝の横に投げ出されている刀だった。
『え。あれ髭切じゃないの?!』
「うん?あれは僕じゃないよ。」
僕、あんなに綺麗じゃあないよ。と優雅に微笑む髭切。
そこじゃいんだけど、とつっこむ力も無いので無言で石切丸に視線を送る。
「装飾刀は、民の願いを聞き届ける祭りや加持祈祷の祈りに使われる神聖な刀。もし、それが仇討ちの血飛沫という穢れに触れなどしたら…」
「彼は…実朝は、成仏できなくなってしまうだろうね。」
………そして状況は冒頭に戻るってわけ。
ここでいきなり隊長という名前を出して来た石切丸は暫く許さない事にした。
しかし、そんなことを今は言ってられない。
『実朝に呪いが乗り移るとか、そーいったこと?』
「うーん、まあそんな感じなんだけど、ほら、執着しちゃってるじゃない、あの子。」
…執着?
「ああ、長年寄り添った主がこのような無惨な死を遂げたのだ。それもわからなくもない。」
「ぼくだって、よしつねこうがああなってしまわれたら、そうなります。」
「………苦しみが聞こえる」
「あれは危険だ。あれはまた、大きく歴史を捻じ曲げかねない。」
髭切を筆頭に、膝丸、今剣、鳴狐、石切丸と思いの丈を呟いた。
『まって、ねえ、なにか聞こえてるの?』
「かしゅうどの、聞きたいなどとおっしゃる様なものでは御座いませぬ。」
鳴狐のお付の狐さえも、悲しそうに言った。
『な、なに、本当に何。聞こえてないの俺だけ?っていうか、俺以外みんな平安刀じゃん……。本当に怖いんだけど!!!!!』
叫べどもどうにもならず、俺は今やっと采配時の違和感に気づいたのだった。