春眠
𝐍𝐚𝐦𝐞
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歴史への干渉は、刀剣男士の禁忌である。よって、七日に渡る雑務、畑当番を命ずる。
_____審神者
意識が戻り、記憶があるうちにと渡された警告と書かれた紙に記された文面。
段々と昨日の出来事の記憶が浮上し、頭を抱えた。
起き上がろうとする刹那、腹と腕の激痛に悶絶する。鶴丸国永は、この本丸において最重要主力。それが本気の力で襲いかかってきた、その恐怖に再び身体を震わせた。
「あっ、起きてこられたんだね。お早う。」
フラフラとよろめきながらも、声が聞こえる大広間へ足を踏み入れると、待っていたと言わんばかりに髭切の姿。そして勿論横には膝丸の姿。
座るのも一苦労で、無言でそれらの前に座る。身体中が痛みに騒いでいるようで、頭を抱えた。
「随分派手に威嚇されたようだが、息災で何よりだな。」
『これの、何処が息災、だ。』
掠れる声で反論するも、痛みが上回りまた顔を顰める。痛い。痛すぎる。何だこの辛さ。
まあ、主もわかっていると思うよ。三日月宗近はいつもそうやって新人で遊ぶから。と髭切の言葉に盛大なため息を洩らした。
『少し、あるじと、話がしたい。』
部屋まで行ってくる、と言葉を残してその場を離れようとした時だった。立った拍子に踵が浮く。後方に倒れようとする自分を支える力は残っておらず、そのまま目を閉じた。
「おい。」
『あ、ぶなかった。』
どん、とぶつかる様でもなく、後方に倒れた訳でもない、後ろから支えてくれた者のお陰だと気づいた。
「大丈夫か。」
『大丈夫にみえるか?』
数秒の無言。お互い目を逸らすこと無く、その黄金の瞳と見つめあっていた。
大倶利伽羅だ。と横から膝丸の声が聞こえ、感謝を述べる。
『審神者の部屋を教えてくれないか、』
「階段を上がって突き当たり、主は今不在だ。」
そうか、居ないか。
有益な情報を感謝する。と言えば、無言で去っていった。
『鶴も、出陣しているのか?』
「いや、今日は畑当番だ。お前もそうだろう。その身体でやるつもりか?」
今日だけではない。七日間畑仕事だ。
それがどれほど辛いことか、双刀の表情から理解した。
「ひな、起きていたのか。」
『あ、鶴、』
自分が入ってきた障子と同じ場所から現れた昨日の加害者に目を泳がせた。三日月宗近に踊らされたと言っても、あれは俺の意思。再び鶴丸国永に絶望された。気まづそうに目を逸らした俺の感情を理解したようで、鶴は俺の前に膝立ちした。
「いいんだ、あれは俺が悪い。」
手入れ部屋を許可してもらったから行くぞ。
鶴の背中に体重をかけると、あっという間に立ち上がってしまう。何が何だと聞く前に、連れていかれてしまった。
移動中、手入れ中、鶴は片時も離れずに俺に経緯を話してくれた。柄でもなく酔っていたことで、三日月宗近の悪巧に気づかなかった己の失態だと。本当に申し訳なさそうな顔をする鶴を見て、俺は大丈夫だ。としか返せなかった。
『いつか俺がそうなってしまったら、止めて欲しい。きっと止められるのは鶴しかいないと思う。』
「そうならないように努力をしようぜ、なあ。」
冗談でも辞めてくれ、そう言われてしまっては辞めざるを得ない。鶴にまた心配かけてしまったな。と項垂れている鶴の頭に手をのせた。
『有難う。』
それに返答こそ無かったか、何処からか部屋に入ってきた桜の花びらが鶴の頭に乗る。
無言でそのまま鶴の頭を堪能し、手入れ時間はあっという間に過ぎていくのだった。
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