春眠
𝐍𝐚𝐦𝐞
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「まあ、色々あったが俺の兄弟刀のひなだ。よろしく頼むぜ。」
『人として未熟の身ですが、よろしくお願い致します。』
夕餉。
新たな刀を迎えた日は必ず祝杯を行うのだと言われ、引っ張られた雛壇に鶴と揃って一礼をすると盛大に拍手が贈られた。
「君が好きなものはなんだい?」
ふわりと薫るお香を見に纏った紫の髪。
優しそうな表情の刀が俺に尋ねてきた。
「ああ、自己紹介が送れたね。僕は歌仙兼定、料理や家事の担当を任されているんだ。」
かせんかねさだ、よろしく頼む。
挨拶を終えて好きなものを考える。
『基本何でも好みます。色鮮やかな金平糖が備えられた日はとても嬉しかったですね。』
「そうか。君も祀られていた刀だった。源氏の者が好む食事と同様な物を用意してみたのだけど、それで大丈夫かい?」
席は好きな場所へ座るといいよ。
またゆっくり話そう。
そうして彼は去っていった。
鶴の方へ視線を送ると、未だ素っ気ない態度ではあった。しかし、その隣席が空白な姿を見ると何だかそれも微笑ましかった。
「どうした、箸の持ち方も忘れたか?」
『つる、何故向かい側にが彼等がいるんだ、俺は彼奴らが苦手なんだ。』
対面に座る双刀に目線を向けないまま鶴にしがみつく。おおよそ彼の悪戯だと思った俺は、必死に訴えるも鶴が相手にしてくれることは無かった。
「つれないことをいうから、僕悲しくなっちゃったよ。」
「そうだな兄者、此奴は一体誰のお陰で収拾がついたのかを忘れたようだな。」
『………私の不甲斐なさは認める。そして貴方達の手を煩わせてしまったことは謝る、』
「うんうん、それで?」
『このような結果で収まったこと、感謝する。』
すると、双刀は顔を見合わせて笑った。
「ありがとう、でいいんだよ。」
「敬語を使わねばならないとしたらこちらの方だ。源氏の重宝とて神域に祀られていたお前の方が高貴だからな。ほら、敬語で
高圧的な弟、膝丸の瞳はまるで蛇。
挑発されても乗るだけの器量が俺にはない。
『辞めてくれ、俺は、』
「まあまあ、仲良くしようじゃないか。ねえ?同じ狢、君が知っている源氏、ぼくたちが知る源氏は同じなんだから。敬語も辞めてしまおう。それでいいね?」
手を差し出す髭切。
恐る恐る手を伸ばせばブンブンと交わされた握手。
「お前ら何かとコイツに関与するのはいいが、これは俺のだからな。」
「おお怖、別に取るわけじゃないよ。僕には弟がいるからね。」
膝丸 髭切、悪い刀ではない。
しかし俺にとっては脅威でしかないのだ。
『鶴、三日月はいるのか?』
「三日月宗近か?三条の奴らといるか、部屋にいるかだろう。それか審神者の部屋に入り浸って茶を飲んでるな。」
『会っても大丈夫だろうか。』
………そうだな。
少し間が空いた返事に戸惑う。
しかし、俺が堕ちることなくこの地へ来れたのは三日月宗近の言伝のお陰なのだ。
彼へ礼のひとつも言わないと気がすまなかった。
「何でもいいが、背負い込むなよ。どうせ抱えきれないことは目に見えてるからな。」
複雑な表情をしているであろう俺に鶴は警告をする。
でもそれは先程までの冷たい顔ではなく少しだけ俺への優しさが見えた気がする。
嗚呼、わかってる。と返事をして豪華に盛られた食べ物に手をつけたのだった。