春宵
𝐍𝐚𝐦𝐞
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『源氏の装飾刀…?』
怪訝な顔をする俺に石切丸は真剣に頷いた。
「穢れを纏ってしまったら、
………どうするか決断するのは君だ、隊長加州清光。」
集められた視線に顔を歪めた。
どうする?どうするって何。
わかるわけないだろ。
俺、幕末の刀だよ?
………。
沈黙に思考を巡らせる。
事の発端は確か小さなものだったと加州は振り返る。
そう、それはただの遠征先に向かったはずだった………。
◇◇◇◇
『第二部隊、いってきまーす。』
采配を経て任命された遠征先は鎌倉。
資材補給を目的に組まれた部隊は
源氏兄弟に今剣。鳴狐と石切丸。
そして隊長の俺、加州清光。
かちゃり、と時空を超える音がしたと思えばそこは山の麓だった。
突然の眩しさに目を細め、山道を歩き始める。
建保7年、時は鎌倉時代。
鎌倉幕府3代目将軍の源実朝が、甥の公暁によって殺された事件が起こる。
それにより血筋は途絶え、北条家が執権の力を行使する時代へと移行。
今回の遡行軍の狙いとされているのは、その実朝の暗殺だった。
それを無事に史実通りに見届けることが俺らの今回の任務になるのだが……。
『ちょっと髭切!これどっちに進むの?』
「ええ、僕に聞くのかい?」
きょとんと惚けては白い外套を翻すこの刀、この編成で唯一この土地に詳しいはずなのだが、先程から全然当てにならなかった。
「ぼくたちのあるじは、かまくらいりをできずにしにましたものね。ひざまる。」
「…ああ、そうだな。」
「そうか、源義経は君の主だったね。」
今剣は地雷を踏み抜くようにそれを口にした。
それに同意せざるを得ない膝丸。そして何も考えずに同意する石切丸。
……知ってたけどさ。こうなるのは。
頭を抱えた隊長は、この重い空気と使えない道案内をどうにかすべきだと打開策を考えた。
『とりあえず二手に別れて偵察しよっか。』
そうして別れたが、俺は源氏兄弟と共に行動する羽目になってしまった。
結局髭切の道案内になるのか、と不安を募らせるが今回は膝丸がいる。少しは期待できるだろうと希望を持ち、足を動かす加州だった。
山を一周したら落ち合う約束の元に二手による偵察が開始された。
「実朝……、ねえ。変わった人間だったよねえ」
「源氏の最後の将軍をそのような言い草はどうなのだ兄者。」
「お前だって見ればわかるよ……。」
余り元の主のことについて言及しない髭切がそこまでいうとは相当なんだろうな、と苦笑いした。
「…源実朝が殺害されなかったとすれば、源氏の将軍が途絶えないことになるな。」
『となると歴史は大きく変わるかもね。』
ああ、と同意する膝丸も険しい顔をしていた。
膝丸もこの時代にここにいないとしても、源氏の重宝としての威厳があるのだろう。
そして数分、他愛無い会話をしては歩き続けるを繰り返していた時だった。
ぴく、と感じた独特の雰囲気に足を止める。
練度では源氏兄弟に劣るが、偵察率がいちばん高いのは俺だった。
『いる。かなり近い距離に大太刀が一振、太刀が三。短刀が二。』
「了解。太刀はお前がお殺り、僕は大太刀を相手しよう。」
「ああ、任されたぞ兄者。加州、
『いや、隊長オレなんだけど!』
加州の嘆きも乏しく、源氏兄弟は好戦的に笑うとそのまま敵の方向へ走っていく姿を見れば諦めたように笑った。
『はあ、俺も行きますか。』
刀を抜けば敵は凄い勢いでこちらへ近づいてきた。さあ、戦いの始まりだ………!
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