刀、拾いました。
𝐍𝐚𝐦𝐞
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「主って、昼間何しにどこ行ってるの?」
寝る前の穏やかな中で突然始まった質問タイム。
『大学、勉強しに行ってる。その後は、バイト、お金稼ぎに行ってる。』
指折りで二つのことを答えれば、ふうん。と予想外に興味無さそうなご様子。
『本当にそれだけだよ?加州くんこそ昼間は何してるの?』
「俺?俺は…掃除して、洗濯して、たまに買い物行く。」
やってること主夫と変わらないね。
しかし、その最後の買い物。という言葉に疑問を感じたので質問を返してみる。
『買い物って何買ってるの?』
「主がくれたお小遣いで色々。こないだは、こーひーまめ、が終わりそうだったから買ってきたでしょ?その前は、夜寒いからかいろ、を買ってきたよ。」
こーひーまめ。かいろ。
拙い日本語を唱える幼児のような発音に可愛さを感じる。
『珈琲豆買い足してくれてたんだ、ありがとう。』
「気にしないで、俺が好きでやってることだから。」
そして、朱に染まる爪を二本立ててピースサインをする加州くん。
加州くん、ピース知ってるんだ。
昼の間ずっと部屋で暇してたら可哀想だなと思ったけど、杞憂だったみたい。
「でも普段は凄い暇だよ。やることないし。ねえ、だから主に着いてっちゃダメ?」
そして突拍子もなく始まった強請り。
…ううん、可愛い。
『うん、来ても何もすることないよ?私とお喋りすることぐらいだよ?』
「いいよ、全然。正直に言うと、
最近 ゛変わった奴 ゛が近くに来てるから、出来るだけ主の傍に置いて欲しいんだよね。」
いさせて欲しい。じゃなくて、置いて欲しい。と言うあたりが物の付喪神なんだろうなあ、なんて思ってしまう。
ストーカーのことかなあ。
そういえば、それが加州くんを引き取る発端だったよな…。
『うーん、正直最近は大丈夫だと思ってたんだけど、昼間結構近くに来てた?』
「え?主、あれを普通に見かけるの?大丈夫だった?相当だとおもうけど。」
すごい顔された。
加州くんみたいな神様にとって、性欲に負けて動く人間ってそんなに汚く見えるのか…。
『最近はいないと思ってたんだけどな…。うう、明日は運悪く夜限の授業だし…。』
明日はバイトは無いものの、夜遅くまで残る授業だった。
最悪家に帰るのは11時すぎるかも…。
「俺がここにきた理由って、主を守るためでしょ?」
う゛…。
彼と出会った日、彼…いや、刀を引き取った経緯を彼に教えてしまったのだ。
「役目を果たさないと。」
『……わかった。ただし、本当に目立ったらダメだよ!あと、授業本当に暇だよ?』
すると本当に嬉しいようで、うん!と勢いよく頷いていた。
◇◇◇◇
迂闊だった。
遡行軍の行動を許してしまった。
過去の歴史を変えることだけが歴史修正ではない。
現代に残る逸話や伝説までもが全てこの国の『歴史』である。
現代の歴史を変えることは、未来の歴史を変えてしまうことなのだ。
今回起きた事例は安置されていた刀剣の窃盗。
「こんのすけ、盗まれたコードはわかりますか?」
「はいっ。調べによると恐らく本刃の加州清光ではないかと考えられます。」
加州清光か…。
歴史修正主義者によって本刃が盗まれることは珍しくない。
刀剣男士達を出陣させ、敵の部隊を相殺した後に元の場所に再び安置させることが我々の任務だった。
しかし、その相殺された遡行軍の持ち物から刀が出てこなかったという。
どこかで落としたのか、途中で隠したか。
いずれにせよ早く見つけなければならない。
……あの事件を再び起こさない為に。
ああ、あれも確か加州清光だったか。
◇◇◇◇
『うん!今日はちょっとカジュアルって感じで可愛い!』
「本当?嬉しい。」
大学について行くと言われた時はビックリしたけど、黒髪だし服のセンスは完璧だし、お弁当まで作ってくれる加州くんは、きっと良い旦那さんになると思う。
「いってきまーす。」
声を揃えて家を出る。
大学に行くのがこんなに楽しみになるなんて、私も加州くんの魅力にハマってるんだなあ…。
「ひな〜!おはよう。」
大学の入口の階段傍、呼ばれた私の名前に振り向くと、友人が立っていた。
『にーちゃん!おはよう。』
にーちゃんは、私に加州くんを押し付け…ううん、くれた人。
この大学に入ってからはずっとにーちゃんといる。
「主の友達?」
『うん、にーちゃんって言って、』
「なになに?カレシ?」
加州くんに説明する前に、にーちゃんは私ではなく加州くんの方に視線を向けていた。
『ちがっ、違うよ、彼氏じゃなくて、友達!加州くんっていうんだけど、すごい優しくてっ、』
戸惑う私に困惑な瞳を向けるにーちゃん。
「何言ってんの。加州くんなら、昨日も授業出てたじゃん。」
『えっ…?』
「何寝ぼけたこと言ってんの〜?彼氏かと思ったら清光くんかあ!おはよう!」
「うん、おはよう。」
加州くんもそれに慣れたように会話してる。
ついていけない空間に、私はぎこちなく笑うことしか出来なかった。
…一体、何が起こってるの?
