刀、拾いました。
𝐍𝐚𝐦𝐞
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その日の午後の授業は、何も頭に入ってこなかった。
もし、今荷物検査があったらどうしよう。
帰り道、警察に捕まったら?
罰金っていくらぐらいなんだろう。
友人の優しさに甘えて受け取ってしまったものの、事の重大さに今更気づいたのだった。
今日はバイト、休もう。直接家に帰ろう。
体調不良。と端的に理由を報告して休みの連絡をLINEに入れる。
精神的な面での、と付け加えようか悩んだが止めた。
駅に向かう道。
私は何も持ってません。そんなすました顔で交番前を歩く。
そんなことを知る由もない警察官は、私に目もくれず、他の作業に勤しんでいた。
ああ!なんて背徳感。
悪戯がバレないかと怯えながらも、バレた時を考えると少しだけワクワクしてしまう高揚感のような。
小さい頃の純粋な気持ちが少しだけ楽しめた所で、私の家はもう目の先だった。
「う〜ん!幸せ。」
講義の途中に怯えていた私は何処へやら。
バイトがない、明日は休み。
無限の可能性を感じるそんな今の状況を楽しまない理由はない。
そう思った私は、見たかったテレビやら何やらを消化することにした。
買ってきた食べ物たちを綺麗に口に収めてそのまたソファーに寝転ぶ。
不摂生って、最高。
寝転んだまま首を傾ければ、そこは反転した部屋。
その部屋の隅には、今日やってきたアレが置かれていた。
帰り道によったお店の傍らに見つけた「刀置き」と書かれた家具を買ってみた。
よく見るようなその形は鹿の角のよう。
置かれた刀は現代の私の部屋には不釣り合いなほど綺麗だった。
「人を殺すために作ったものなんだよね、」
ふとそんなことを口に出した。
日本人なら誰しもが知っている人。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。
刀を使って武士が戦った時代、戦国時代に名を挙げた武将を題材にした作品は現代の人々にも親しまれている。
私も詳しくはないもののその歴史は小学生から高校までの間で何度も学んだ。
歴史。博物館や城、書物など様々なものがそれを成り立たせている。
特に戦国時代なんてものは、私には理解ができない。
何がそこまで人を動かすんだろう。
天下を取るって何。
みんな一番じゃダメなの。
「よく怒られたなあ、そんなことは考えなくていいって。」
変なところに興味を持ってしまうわたしは、常に日本史やら世界史の先生に怒られた。
「懐かしいなあ、」
そんな独り言を呟けば、とたんに眠気に襲われていく。
明日は祝日。バイトも大学もない。
ゆっくり眠ればいいや、と眠りについた。
◇◇◇◇
祝日、それは誰にも指図を受けることなく寝ていられる素敵な日。
一人暮らしは誰のお願いも聞かなくて良い。
親に起こされるなんてことも無い。
そんなはずだった。
「起きて、起きてよ、ねえ、起きて。」
とんとん。
優しく叩かれた身体に目を覚ました。
そして聞きなれない声がひとつ。
「うん…、」
「おはよう、主、いい天気だよ」
「そう、だね、?」
何かに疑問を感じた私は目を開けた。
そこにいたのは黒髪の男の子。
黒い服に身を包み髪の毛は後ろで縛ったものを肩に垂らしている。
そして極めつけはその瞳の色。
真紅。
その真紅が私の視線と交わった。
「どうしたの?主、体調悪い?」
いやいやいや…
咄嗟に手を見ても私の手だ。
感覚だってちゃんとある。
部屋を見ても私の部屋。
夢から覚めてる?まだ夢?
どちらでもいいが現実では無さそうだ。
「ううん。大丈夫だよ。ありがとう」
当たり障りない言葉を返すと、その少年は嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、俺出ていくから、着替えてね。」
そう言って立ち上がり部屋から姿を消した。
「…なに、この夢。」
何故か用意されている私の私服を着てリビングに向かえば、そこには先程の少年が座っていた。
「今日もかわいいよ、主。似合ってる」
「えっ、あ、ありがとう。」
そんなド直球な褒め言葉。久しぶりに聞いた。
当の本人はケロッとしていて窓からの景色を眺めていた。
とりあえず夢だし、まあのんびりするか。
謎に現実感のあるそれを横目で見ながら珈琲を入れる。
あ、そういえば昨日のアレ、無事かな。
部屋に置かれているアレを見に行こうと部屋を出た。
「あれ、無い。」
しかし、そこに置いたはずの刀はどこにも無かった。
夢だから、だろうか。
しかし、刀置きのような骨董品はそのまま。
もしや、盗まれた?
どうしよう。盗まれなんてあったら、この近くで殺人が起きてしまう。
どくどく、
上がる心拍数に混乱が隠せなかった。
夢、これは夢。
わかっているのに、抑えられないこの焦燥感。
「主?!どうしたの?大丈夫?」
パタパタと走る音がしたと思えば、先の少年が座り込んだ私を見下ろしていた。
「ここにあった、刀」
おそるおそる指さしてみると少年は驚いた顔をして直ぐにため息をついた。
「何寝ぼけてんの、主。」
「え…?」
するとこちらに向かってきて私の前にしゃがみ込んだ。結んである髪飾りがやけにキラキラと光っていた。
「アレは、俺だよ?」
アレハ、オレダヨ?
エコーのように響く脳内の言葉。
アレは、俺だよ?
「アレは、、俺?」
これは悪夢。もう時期目が覚める。
大丈夫、大丈夫。
そう思ってぎゅっと目を閉じた。
ほら、もうすぐ意識が…
____________
________
____あれ?
「 夢が、醒めない。」
あっけらかんに言い放ち、少年に視線を向ける。
「 どうして、これ、夢だよね。」
じりじりと交わる視線。
少年の表情は変わることがなかった。
…刹那
「ぶっ、ははははははっ、」
一瞬にして少年は吹き出した。
「あるじっ、ほんとにいってんの?」
口に手を当てて上品でいるものの、笑い方はそこらの男子と何ら変わらなかった。
「っえ」
「なに、夢じゃないよ、ここ。ちゃあんと、平成?ああ、最近はれいわ…、だっけ?だよ。」
「ここ、私の家だよね?」
「そう、主の家。昨日ソファーで力尽きてそのまま起きなかったから、ちゃんと布団に運んだのは、俺。」
そういえば。
私、布団に寝てた。
「で、アレは、俺。」
私は先程少年が言った台詞を復唱した。
「そう、俺は加州清光。沖田総司の愛刀、なんて名がついたけど元はただの刀。扱いにくいが性能はピカイチ、いつでも使いこなせて可愛がってくれて、あと着飾ってくれる人大募集してるよ。ってね。」
ぱちり、と器用にウインクした少年は私の手を握った。
「かわいくするから、大事にしてよね。」
先程の言葉の意味を理解できない私は、魂を身体に宿らせるのに必死だった。
しかし、目の前に現れた美しくも儚い表情を浮かべた少年から目が離せなかった。
「あ、珈琲。珈琲出しっぱなし。」
キラキラと輝く少年の笑顔をみていたかったが、珈琲の存在を忘れていた。
ちょっと整理つかないし、意味わからないし、
なんならこの子本当にどこから来たのか分からないし。
「まあ、今日祝日だし。なんでもいいや。」
思考放棄。
今の私に1番大事な事である。
もし、今荷物検査があったらどうしよう。
帰り道、警察に捕まったら?
罰金っていくらぐらいなんだろう。
友人の優しさに甘えて受け取ってしまったものの、事の重大さに今更気づいたのだった。
今日はバイト、休もう。直接家に帰ろう。
体調不良。と端的に理由を報告して休みの連絡をLINEに入れる。
精神的な面での、と付け加えようか悩んだが止めた。
駅に向かう道。
私は何も持ってません。そんなすました顔で交番前を歩く。
そんなことを知る由もない警察官は、私に目もくれず、他の作業に勤しんでいた。
ああ!なんて背徳感。
悪戯がバレないかと怯えながらも、バレた時を考えると少しだけワクワクしてしまう高揚感のような。
小さい頃の純粋な気持ちが少しだけ楽しめた所で、私の家はもう目の先だった。
「う〜ん!幸せ。」
講義の途中に怯えていた私は何処へやら。
バイトがない、明日は休み。
無限の可能性を感じるそんな今の状況を楽しまない理由はない。
そう思った私は、見たかったテレビやら何やらを消化することにした。
買ってきた食べ物たちを綺麗に口に収めてそのまたソファーに寝転ぶ。
不摂生って、最高。
寝転んだまま首を傾ければ、そこは反転した部屋。
その部屋の隅には、今日やってきたアレが置かれていた。
帰り道によったお店の傍らに見つけた「刀置き」と書かれた家具を買ってみた。
よく見るようなその形は鹿の角のよう。
置かれた刀は現代の私の部屋には不釣り合いなほど綺麗だった。
「人を殺すために作ったものなんだよね、」
ふとそんなことを口に出した。
日本人なら誰しもが知っている人。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。
刀を使って武士が戦った時代、戦国時代に名を挙げた武将を題材にした作品は現代の人々にも親しまれている。
私も詳しくはないもののその歴史は小学生から高校までの間で何度も学んだ。
歴史。博物館や城、書物など様々なものがそれを成り立たせている。
特に戦国時代なんてものは、私には理解ができない。
何がそこまで人を動かすんだろう。
天下を取るって何。
みんな一番じゃダメなの。
「よく怒られたなあ、そんなことは考えなくていいって。」
変なところに興味を持ってしまうわたしは、常に日本史やら世界史の先生に怒られた。
「懐かしいなあ、」
そんな独り言を呟けば、とたんに眠気に襲われていく。
明日は祝日。バイトも大学もない。
ゆっくり眠ればいいや、と眠りについた。
◇◇◇◇
祝日、それは誰にも指図を受けることなく寝ていられる素敵な日。
一人暮らしは誰のお願いも聞かなくて良い。
親に起こされるなんてことも無い。
そんなはずだった。
「起きて、起きてよ、ねえ、起きて。」
とんとん。
優しく叩かれた身体に目を覚ました。
そして聞きなれない声がひとつ。
「うん…、」
「おはよう、主、いい天気だよ」
「そう、だね、?」
何かに疑問を感じた私は目を開けた。
そこにいたのは黒髪の男の子。
黒い服に身を包み髪の毛は後ろで縛ったものを肩に垂らしている。
そして極めつけはその瞳の色。
真紅。
その真紅が私の視線と交わった。
「どうしたの?主、体調悪い?」
いやいやいや…
咄嗟に手を見ても私の手だ。
感覚だってちゃんとある。
部屋を見ても私の部屋。
夢から覚めてる?まだ夢?
どちらでもいいが現実では無さそうだ。
「ううん。大丈夫だよ。ありがとう」
当たり障りない言葉を返すと、その少年は嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、俺出ていくから、着替えてね。」
そう言って立ち上がり部屋から姿を消した。
「…なに、この夢。」
何故か用意されている私の私服を着てリビングに向かえば、そこには先程の少年が座っていた。
「今日もかわいいよ、主。似合ってる」
「えっ、あ、ありがとう。」
そんなド直球な褒め言葉。久しぶりに聞いた。
当の本人はケロッとしていて窓からの景色を眺めていた。
とりあえず夢だし、まあのんびりするか。
謎に現実感のあるそれを横目で見ながら珈琲を入れる。
あ、そういえば昨日のアレ、無事かな。
部屋に置かれているアレを見に行こうと部屋を出た。
「あれ、無い。」
しかし、そこに置いたはずの刀はどこにも無かった。
夢だから、だろうか。
しかし、刀置きのような骨董品はそのまま。
もしや、盗まれた?
どうしよう。盗まれなんてあったら、この近くで殺人が起きてしまう。
どくどく、
上がる心拍数に混乱が隠せなかった。
夢、これは夢。
わかっているのに、抑えられないこの焦燥感。
「主?!どうしたの?大丈夫?」
パタパタと走る音がしたと思えば、先の少年が座り込んだ私を見下ろしていた。
「ここにあった、刀」
おそるおそる指さしてみると少年は驚いた顔をして直ぐにため息をついた。
「何寝ぼけてんの、主。」
「え…?」
するとこちらに向かってきて私の前にしゃがみ込んだ。結んである髪飾りがやけにキラキラと光っていた。
「アレは、俺だよ?」
アレハ、オレダヨ?
エコーのように響く脳内の言葉。
アレは、俺だよ?
「アレは、、俺?」
これは悪夢。もう時期目が覚める。
大丈夫、大丈夫。
そう思ってぎゅっと目を閉じた。
ほら、もうすぐ意識が…
____________
________
____あれ?
「 夢が、醒めない。」
あっけらかんに言い放ち、少年に視線を向ける。
「 どうして、これ、夢だよね。」
じりじりと交わる視線。
少年の表情は変わることがなかった。
…刹那
「ぶっ、ははははははっ、」
一瞬にして少年は吹き出した。
「あるじっ、ほんとにいってんの?」
口に手を当てて上品でいるものの、笑い方はそこらの男子と何ら変わらなかった。
「っえ」
「なに、夢じゃないよ、ここ。ちゃあんと、平成?ああ、最近はれいわ…、だっけ?だよ。」
「ここ、私の家だよね?」
「そう、主の家。昨日ソファーで力尽きてそのまま起きなかったから、ちゃんと布団に運んだのは、俺。」
そういえば。
私、布団に寝てた。
「で、アレは、俺。」
私は先程少年が言った台詞を復唱した。
「そう、俺は加州清光。沖田総司の愛刀、なんて名がついたけど元はただの刀。扱いにくいが性能はピカイチ、いつでも使いこなせて可愛がってくれて、あと着飾ってくれる人大募集してるよ。ってね。」
ぱちり、と器用にウインクした少年は私の手を握った。
「かわいくするから、大事にしてよね。」
先程の言葉の意味を理解できない私は、魂を身体に宿らせるのに必死だった。
しかし、目の前に現れた美しくも儚い表情を浮かべた少年から目が離せなかった。
「あ、珈琲。珈琲出しっぱなし。」
キラキラと輝く少年の笑顔をみていたかったが、珈琲の存在を忘れていた。
ちょっと整理つかないし、意味わからないし、
なんならこの子本当にどこから来たのか分からないし。
「まあ、今日祝日だし。なんでもいいや。」
思考放棄。
今の私に1番大事な事である。
