刀、学びました。
𝐍𝐚𝐦𝐞
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辿り着いた先。
それは時の狭間と呼ばれる異空間。
某猫型ロボットのような近未来を想像していた私は、口を開けたままその場に立ち尽くした。
空飛ぶ車や喋る動物、便利な機会は?
え?どこに?
『え?ここ?』
「はい。こちらです。」
いや、喋る動物はここにいるか…。とこんのすけを見る。
何も無い空洞な視界から突然、その景色は広がった。
『………………超田舎。』
竹藪。田畑。平屋の一戸建。
水田の横に流れる小川には蠢く小魚。
田舎のイメージを全て詰め込んだセットの様な景色に目を細めた。
「はい。こちらが時の狭間。そして刀剣男士様達が審神者様と暮らしている居住空間になります!」
私が自信満々にそう言ったこんのすけの瞳を私が見ることは無かった。
◇◇◇◇
「貴方の祖母様は審神者でした。」
『そこはかとなく、そうは思いました。』
通された茅葺き屋根の平屋の中には、人当たりの良さそうな男性がいた。
やっとまともな人に会えたと安堵したのも束の間。
その人の手に握られていたのは所謂電子機器。
そう、タブレット。
背景と会わないんだよ。
時代背景大事にしようよ。
その男性を「主」と呼び、大まかな流れを説明した和泉守兼定と堀川国広は、そそくさと退散してしまった。
その部屋に残された私と加州くんは、向かい合う形で床に座り込んだ。
『何故、祖母は私にその秘密、ええと、審神者であることを教えたのでしょうか。』
「それは私には、分かりかねます。しかし、こうして貴方のお祖母様の行動が今に繋がっていると考えたら妥当ではありませんか?」
妥当…。
たしかに。
刀を持った男の子達と過ごした記憶。
加州くんに出会った時に何故直ぐ思い出せなかったのだろう。
ぼんやりと曖昧なそれらを今まで思い出すことは無かった。
『貴方は審神者の方ですか?』
「ええ、今年で齢より審神者歴が上回りました。大事老いぼれです。」
…?
年齢より職歴が上回った?
「審神者は、もう普通では無いんです。この日本が始まり、今になるまでの歴史を守らねばならない。そう簡単に死なせてはくれないのです。」
『だから、審神者であることを告知してはいけないんですね。』
静かに頷く姿に、何も言葉が出なかった。
人間との関わりを断ち、誰にも言えない秘密を抱えて一生を過ごす。
そんなの、ただの孤独だ。
『寂しい、と感じることは?』
「ありますよ。勿論。でも、孤独ではありませんよ。何故か?
それは、貴方もよく知っているでしょう。」
にこり、と微笑んで私の隣に目線を移した。
……………。
『嗚呼、成程。』
かしゅうくんが、いるのか。
そうか。
祖母にも。この方にも。
刀剣男士は、審神者にとって
守り神であり、友人であり、家族なんだ。
『でも、私は祖母のそんな生活を奪いました。あの後、私は二度と会えませんでした。そして、私の祖母は、消えました。』
私が破った約束。
それがどれだけ禁忌なのかを今知る。
悔しさを滲ませるように、唇を噛む。
「ええ、知っていますよ。」
『え?』
???
しっていますよ、とは?
「ですから、存じ上げていますよ。」
『存じ、え?私の祖母をですか?』
ええ、と再び頷く人。
どんな状況?
加州くんを咄嗟に見るも、わからないようで首を傾げる。
「貴方がここに来たら、道標を与えて欲しい。貴方が後悔しているなら事実を教えて欲しい。それが貴方のお祖母様と私の約束ですから。」
そしてゴソゴソ、と袴の袖を動かす。
そこから出てきたのは封筒。
差出人、祖母。
宛名、貴方へ。
『これは……。』
「時間はたっぷりあります。急いではいけませんよ。」
触れた封筒の分厚さに手が震える。
どうしよう。こんなもの、貰って。
「あるじ。」
心配そうな顔をする彼に笑って見せた。
多分、ちゃんと笑えてないだろうな。
『…ありがとうございます。』
私が言えるのはそれだけだった。
この封筒を開く勇気があるのだろうか。
震えた手を止める手立てはあるのだろうか。
