刀、学びました。
𝐍𝐚𝐦𝐞
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大丈夫ですか?と聞くこんのすけに頷く。
ごめんなさい。取り乱してしまって。
そう言えば気にしないでください。との返答。
「歩ける?大丈夫?」
『…あるける。』
背から降りてこちらに向かってきた加州くん。
歩けると言っているのに、それでも手を差し伸べてくる彼に呆れたように笑った。
その手を握って立ち上がる。
意識は戻ったようでも、傷は傷。
肩の服は破れ、痛々しい姿は変わらない。
私には、貴方の方が心配なのに。
そんな不安そうな目線に気づいたように、もうへいきだよ。と返されてしまった。
「この辺り一体は、もう既に神域に近い場所。普通の人間様には少々負担がかかると思われます。」
私の手から離れたこんのすけは、床を4本の足で歩きながらそう言った。
「人間様は深くに眠らせてしまった記憶や感情、思い出などを蘇らせてしまう方もいらっしゃるようです。」
身体への負荷は、人間の限界を超えるらしい。
それは言わば走馬灯。
最後に見る景色は、後悔や忘れた記憶なのだろうか。
それとも、私が忘れてしまっているだけの何かなのだろうか。
『死ぬ時に、また同じものを見るんですかね。』
「主。縁起でもないこと言わないの。」
怒る言葉と反対に何故か微笑んだ加州くんは、安心したように見えた。
「変わんないよね。ほんと。」
『え?』
んーん。気にしないで。
それより、と口を開く加州くん。
「さっきの、何?赤色が好きーって。」
『嗚呼、あれ?』
先程の時に、赤色が好きと誰かに行った記憶が流れてきた。
それは絵を描いていたのか、ただ話をしていたのか定かではなかった。
『なんかね、言わないといけない気がしたの〜。』
「なんだ。俺にも言ってくれたのかと思った。」
え〜?じゃあ、加州くんにも言ってあげる。
いいよ、別に。
やいやいと一連を言い合って笑った。
覚えてないけど、昔に加州くんとも出会っていたのかもしれない。
祖母を加州くんも知っていたのかな。
でも、加州くんは他の刀剣男士さんに会ったことないって言ってたしなあ………。
そんな葛藤と、全然語ってくれない彼の昔の話を想像した。
◇◇◇◇
「兼さん、もしかして。」
「辞めとけ、聞こえるぞ。」
仲睦まじい様子を後ろから見ていた二振の会話は、温度的には低い方だった。
「でも、だって、あの子はそれを知らないんじゃ………。」
「知らないんじゃねぇ。消されてんだよ。」
和泉守兼定は、本丸ではかなりの古参になる。
審神者からの信頼もある、長い付き合いだ。そしてひとつの事件を主から共有されたことがある。
神隠、と表面上の政府は判断したそれは、そんな易しいものじゃなかったようだ。
「………兼さん、僕達って何なんだろうね。」
察したように国広が口を開く。
その瞳は明らかに動揺し、揺れ動いていた。
あんま考えすぎんな、と小突く。
なあ、国広。
俺もまだそれを答えるほど人間やってねぇよ。
◇◇◇◇
わからない。
刀剣男士、審神者の生み出す付喪神。
歴史を守るために人の形を取った。
だが、人はそんな簡単な造りじゃない。
心。
感情。
原因不明な行動を取るのはそれらのせいだと主さんは言っていた。
兼さんにまたこうして会えたことは「嬉しい」と思ったし、土方さんが死んだ姿をみた時は「悲しい」や「悔しい」だった。
じゃあ今は?
本丸の子じゃない。
あの子はただの人間で、少し昔にこちら側と関わっていただけ。
それと、加州さん。
なのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
