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ラブソングを君に。(いずレオ)【R15】

「セナぁー、起きろってー」

 ふわふわの髪の毛に陶器のように滑らかな白い肌。ベッドの上には昨日も遅くまで仕事をして帰ってきていた瀬名泉がスヤスヤと寝息を立てながら横たわっていた。最近は仕事が忙しいらしく、連日日をまたぐ頃に帰ってくるので久々のオフとなった今日、瀬名が熟睡をしているのも無理はなかった。
 それにしても……。セナの肌は本当に綺麗だなぁ。
 いくら声をかけても一向に起きようとしない瀬名の頬を軽くつつく。ピクリと反応するが、それでもまだ一向に起きる気配はなかった。
 最近、忙しそうだったもんなぁ。本当は起こしたくないんだけど……。ん?待てよ、この状況ってまるで眠り姫か白雪姫か、とすると最後は王子様のキスで起きるのか!?俺は王さまだけど!王子様じゃないけど!俺のキスで起きちゃったりするのか!?あぁ、インスピレーションが沸いてきた!今なら書ける、いい曲がたくさん書けるぞ!紙。紙とペンはどこだー!!?
 レオはすぐさま瀬名が寝ているベッドに横たわり、ベッド横に常備してある紙に降りてきた曲を書き始めた。この家では、レオがインスピレーションが沸いたとき、いつでもすぐに書けれるよう、家中そこらに紙とペンを用意している。
 あぁ、止まらない、止まらないぞ!ワルツにする?ロンドも良いな!やっぱり俺は天才だ!
 鼻歌混じりに曲を書き続けていると突然頭をポンポンとなでられ、レオの手が一瞬止まる。

「セナ!起きたか!?だけどちょっと待ってくれ!今良いところなんだ!いいものが生まれそうな予感!次は誰を登場させよう!あぁ、止まらない、止まらないぞ!」

 あふれ出る音楽に意識を持っていかれそうになる。そうなるとレオはもう止まらなかった。しかし、書く手は突然の横からの力によって強引に止められることとなる。

「どうしたセナ、いきなり引っ張ったらあぶな」

 突然引っ張られたことに対し、注意をしようとしたレオの口を瀬名の唇がふさいだ。

「朝からうるさいんだけどぉ」

 レオの口に軽く口づけ、一言だけ言い放つと、そのまま瀬名はレオの口をついばみ始めた。

「んっ……、セナ、駄目っ……」
「ふーん……、いやなんだぁ?その割に身体は抵抗してないよねぇ?」

 キスとキスの間、荒い呼吸をしながら、それでも瀬名の口は止まらなかった。

「ちがっ、そうじゃなくてっ……んっ」

 そのままレオの乳首をまさぐろうと首筋に手を触れただけでレオがビクッと反応する。その反応にスイッチが入ったのか、レオの体をもっとこっちに引き寄せようとしたところで息も絶え絶えにレオが待ったをかけた。

「ちょっとぉ、なぁに?」
「その、俺もセナ久しぶりだし、すっごい嬉しいし、インスピレーションすっごい沸いてくるんだけど、今はちょっと、その……」

 レオの煮え切らない態度に苛立ちを感じ始めたところでリビングの方から声が聞こえた。

「あ、俺に気にせず続けちゃっていいよぉ」

 学生時代でもあまり張った声を聞いたことなかったが、音符マークでも付きそうなその声を聞くや否や、瀬名はレオから手を放し、「ちょっとどうゆうことぉ!?」と声を荒げた。

「悪い……、リッツが来てるんだ」

 いつもの破天荒な笑みとは違い、申し訳なさを含んだレオの顔に最悪だ、と瀬名は呟いた。



「それで?なんでくまくんがうちにいるわけぇ?」

 軽く身支度を揃えた瀬名は、凛月が座るリビングのテーブルに腰かけた。あまり寝起きが良い方ではないので、少し不機嫌そうにあくびをしながらだ。しかも本当に空気読まないし、と決まり悪そうに瀬名が言い放つと「空気を読んだ結果だと思うけどなぁ」と頬杖付きながら凛月は意地悪い顔を瀬名のほうに向けていた。

「してから気付くのとする前に気付くのは傷の大きさも違うと思うしねぇ。それにしても朝から本当、元気だねぇ。俺なんか久しぶりに早起きしちゃったからもう眠くて眠くて」

 ふわぁ、と欠伸をしながらそのまま机にうつ伏せようとするので「だから用は何なの」と用件を促す。

「うーん……、王さまはぁ?出来れば2人一緒の方が嬉しいんだけど。説明2回するのも面倒だし」
「王さまなら湧いてきた曲を取り逃さないようにって、部屋に隠ったけど。何、結構大事が起きたわけ?……呼んでくるからちょっと待ってて」

 はぁ、と面倒くさそうにため息をついた後、そう言って瀬名はレオが隠っているであろう部屋へと向かった。



 それにしても……、卒業と同時に同棲する、て聞いたときは納得半分、驚き半分だったけど、思ったより上手く行ってるようで安心安心。まあ、セッちゃんが王さまのこと放っておけるとも思わなかったし、あの様子だと甲斐甲斐しく世話も焼いてるみたいだしねぇ。さすがに朝から現場に遭遇するとは思わなかったけど……。
 瀬名とレオが卒業してから2年、マメに連絡は取り合わないものの、Knightsのメンバーは程よく連絡を取り合っていた。たまに会おう、という話にもなるが、乗り気な嵐や司に比べ、瀬名の返答はいつもNoだった。レオが携帯を携帯するわけがなく、その連絡に気付くわけもなかった。そんなこんなで凛月が2人に会うのは本当に久方ぶりだった。

「ちょっと何?俺いま忙しいんだけど!リッツに構ってやりたいのは山々だけど、名曲が消えていくのは耐えられない!」

 凛月が2人の物思いにふけっていると、半ば強引に腕を引っ張ってきたのか、レオが不服そうな顔でリビングへとやってくる。
 その姿は2年前と何ら変わらない様子で、ほほえましくもあった。

「王さまごめんねぇ、呼んだの俺なんだ。2人にも関係あることだと思うから聞いて欲しくて」

 なんだなんだ、と大きな瞳を不思議そうに向けてくるレオと、訝しそうに眼を細めながら目を向けてくる瀬名を一瞥する。学生時代に比べ、物分かりが良くなったのはセッちゃんの教育の賜物だねぇ、と一応は聞く姿勢になってくれたレオに感心しながら凛月はここにやってきた訳を話すため、口を開いた。



「脅迫状?」
「正確には脅迫状らしきもの、かなあ。ご丁寧に、俺とナッちゃんとスーちゃんに届いてるからさぁ、2人の元にも届いてるかな、て」

 これなんだけどね、と凛月は白い封筒からポストカードサイズの紙を取り出し、レオと瀬名の前に差し出す。何の変哲も無いどこにも売っていそうな無地の白い紙。そこには、真ん中に一言、『誇りを忘れた騎士に粛清を』と印刷されてあった。

「いつ頃?」

 もう見たので用はない、とばかりに瀬名は凛月のほうに紙を押し返した。
 瀬名の声色にレオが一瞥すると明らかに不機嫌そうな顔。さっきまでは寝不足のところを起こされた寝起きの不機嫌そうな顔だったが、今は明らかに違う。
 これはあれだな、セナのやつ怒ってるな。
 2年も生活を共にしてきたのだ、怒りを押し殺しているようだが、レオには微妙な表情の変化が読み取れる程には瀬名のことを見てきたつもりだ。

「んーと、1週間前くらいかなぁ。2人の元には届いてない?ナッちゃんもスーちゃんもそれくらいだったと思うけど」
「1週間前か。ちょうど仕事が忙しくなって家には往復くらいしか出来てなかったときだけど……。見てないよねぇ?王さま。届いてたらさすがに言ってくるだろうし」

 そう言いながら瀬名がレオのほうに顔を向けてくる。その瞬間、えっ、嘘でしょ、と驚きを隠せない様子で「信じらんないんだけど……」と呟いた。
 レオが瀬名の微妙な表情の変化が分かるように瀬名も読み取ることが出来るのだろう。レオには凛月が見せてきた紙に見覚えがあった。しかもちょうど1週間前くらいだ。

「いやー、これ脅迫状だったのか!セナ宛に来てたぞ。俺が開けちゃったけど!わはははは!」
「いやいやいや、待って、何で勝手に俺宛のもの見てんの、とか聞きたいことあるけど、何で言わないかなぁ!この王さまは!」
「脅迫状だって気付かなかったしな!良い感じのフレーズだったんでインスピレーション湧いちゃって!名曲が生まれた。ちなみにあれだぞ、宛先無しの白い封筒だったから開けたらセナ宛だった、てだけだからな。わはははは」

 ほんっとうに信じられないんだけどぉ……、とただただ呆れ顔を瀬名はレオに向けていた。こんな時でさえ、本当に綺麗な顔をしてるな、と思ってしまうのはどうかしてるんだろうな、と思いつつも瀬名の顔をまじまじと見てしまう。

「さすが王さま。じゃあ、セッちゃんのところにも届いてたんだね、この手紙」
「あぁ!そっかそっか、これ知らせるべきだったんだな。そんなことよりも良い機会だな、ていうほうが強くて!」

 レオのいい機会、という言葉に反応したのか、また良からぬことを考えてるんじゃないんだろうねぇ、と瀬名の明らかに疑いの眼差し。
 うんうん、そんなセナの顔も好きだなぁ、インスピレーションが沸きそうだ。リッツはなんだか楽しそうだなぁ。リッツもそんなに慌ててない感じ、その紙が本当に脅迫状だとは思っていないのだろう。まぁ、リッツはいまいち何考えてるか分かんないけど。

「王さま、良い機会って?」

 訝しそうに見つめる瀬名とは真逆に、ニヤニヤと凛月が顔をこちらに向けてくる。

「俺とセナが卒業してもう2年だろ?ということは、スオーも卒業だろ?」

 そこで一呼吸を置いた後、レオはニッと無邪気な笑顔を携えながら「Knights再始動だ」とだけ言った。



 うちの王さまは本当に空気が読めない。というよりも読まない。自分が思うままに行動をする。それに振り回されるのなんて学生時代だけで慣れていたつもりだった。卒業してからも機会に恵まれ、2年ともに生活をしてきたけれど、自分が仕事で出張に行けばその間、ご飯を食べないことなんてざらだし、下手をすれば睡眠という睡眠を取らないこともざらだ。それこそ、同棲初めの頃は外出したまま帰ってこないこともあり、慌てて探し回ってようやく見つけたこともある。2年も一緒に暮らせばある程度は慣れてきたし、注意をすれば一応は聞いてくれるので予防策を張ることだって出来た。なので、最近では王さまの奇行にも慣れていたつもりだった。だから突拍子もないことをするのなんていつものことなのだが。
 悪戯っ子のような、それでいて瞳の奥には確たる意思が込められているレオの目を見ると何も言えなくなる。小さな身体に秘めてある大きな野望と意思はレオの象徴でもあり、そんなレオだからこそ瀬名は惹かれているのだ。ましてや、レオにとって学生時代、Knightsという存在は良い思い出ばかりではない。血と汗のにじむ思いで守ったものであり、自身を壊してまでも守り抜いたものだ。そんなレオがKnightsを再始動する、と言ったのだ。応えないわけがない。
 瀬名とレオが卒業と同時にKnightsの活動は休止していた。曰く、充電期間だと。瀬名の中では司が卒業するまでだと思っていたので、そこは読み通り。

「だから、何で本当に何にも言わないかなぁ、うちの王さまは!」
「セナ、イヤなのか?」
「誰も嫌だなんて言ってないでしょ」

  だからそんなにしょぼくれないで欲しい。レオのやることに不服なんてあるわけもなく。Knights再始動なんて、レオが守り抜いたものを、今もなお一人で大事に守り続けているものを一緒に守れるのだ。不服なんてあるわけがなかった。

「違うよ、王さま。セッちゃんは嫌なわけじゃなくて、何も言われずに王さまが一人で決めたことが寂しいんだよね」

 ねー、と凛月が同意を求めてくるが、それは無視。

「まったく、素直じゃないなぁ、セッちゃんは」

 凛月お得意のいかにも音符マークが付きそうな軽い口調に、2年前と何ら変わらない歓迎に感謝する。そんな感謝、絶対に言わないけど。

「んー、でもKnights始動となると、余計に脅迫状のこと無視できないかなぁ」
「でも1週間何もなかったぞ?そもそも脅迫状なのか、これ?俺にはインスピレーションを与えてくれた魔法の紙だけどな!ということで、Knights再始動の曲はこの紙から出来た曲にする」

 それは脅迫状を送った人間にとっては、Knightsが全力で答えた結果であり、本望だろね。などと、能天気に考えてしまうあたり、レオに少なからず毒されたのだろう。

「でもそうか、俺はまだ仕事柄家にいることが多いけど、みんなはそうはいかないもんな」

 うーん、と頭を捻らせているレオだったが、すぐに何かを閃いたのか、輝かせた顔をこちらに向けた。

「良いことを思いついたぞ!うーん、やっぱり俺は天才だな!」
「王さまの良いことの8割は良いことではなかったんだけど」
「そうか?でもこれは名案だぞ。みんながバラバラになっているから危険なわけであって、みんなが一緒ならまだ安心だろ?だったら一緒に住めばいいんだよ」

 突拍子もない提案にさすがに凛月も思考が追いついていないのか、珍しく驚いた顔を向けていた。しかし、すぐにいつもの調子に戻り、そうきたか、と瀬名の耳には聞こえた。突拍子もない提案に驚いたのはもちろん、瀬名も同様で。レオの提案に思考がついていかない。
 一緒に住む、とは5人で住む、ということだ。今の生活も当然なくなる。

「はあぁぁあああぁ?あり得ないんだけど」

 いやいや、ない、あり得ないからぁ!とものすごい剣幕になった瀬名に落ち着きなよ、と凛月が宥める。

「うーん、さすがに3人で話すような内容じゃなくなってきたし、また後日5人揃って今後のことを話し合う場を作った方が良さそうだねぇ。セッちゃんもいい加減本当にキレそうだし」

 そうか?と頭の中で自己完結をしているレオは放っておいて、とりあえずその日の話はそこまでとなった。



「じゃあ、俺は帰るねぇ」

 また皆で話し合いしなきゃね、と言い残し凛月が帰ってから早30分。凛月が帰ってすぐにリビングのソファに移動した瀬名は先日から読んでいた小説に手を伸ばした。しかし、当然その内容など入ってくるわけもなく、頭の中は先ほどのレオの発言でいっぱいだ。そんなこんなで凛月が帰ってからというものの、会話もなく静寂で微妙な空気の空間が2人を包み込んでいた。

「セナ、今日はどうする?気分転換に買い物でも行くかっ?」
「そんな気分じゃないからねぇ。今日はおうちでゆっくりで良いんじゃない」

 明らかに様子を探っているレオについ苛立ちを込めた声を出してしまった。レオが自由気ままなのなんて今に始まったことではないのに。そっかそっか、と言ったレオは思った通りしょぼくれてしまって、そんな顔をさせたいわけじゃないのに素直になれない自分に苛立ちが募る。

「なあ、セナ……。怒ってる?怒ってるよな」

 しばらくの沈黙のあと、レオは意を決したようにソファに座っている瀬名の膝の上にのしかかって問うてきた。

「別に、怒ってないよぉ。だから膝の上からどいてよねぇ。俺、今そんな気分じゃないんだけど」
「うー……。やっぱり怒ってる。いつもと違うってことは怒ってるんだろ!」
「俺だってそんな気分じゃないときくらいあるのー。だいたいいつもと違うって何。だいたいこんなんでしょ、俺」

 大して頭にも入ってきていない小説をパラりとめくりながら平然を装う自分に少し飽きれる。こんな時でさえ、意地を張ってしまう。

「いつもよりそっけない!セナ、いつもはもっと優しいもん。なんだよなんだよ!セナ宛の手紙勝手に見たことか?それともそれを報告しなかったことか?待てよ、休みの日にリッツが来て朝早くから起こしちゃったことか?」
「ちょ、ちょっと待ってよ。何一人で決めつけてんの。別に怒ってない、て言ってるでしょ」
「怒ってる!隠すなよ!分かるんだよ!何年一緒にいたと思ってるんだよ。何年セナのこと見てたと思ってるんだよ。俺には気持ち隠すなよ!」

 そう言ってレオは瀬名の膝の上で泣きじゃくり始めた。
 待て待て。泣きたいのはこっちのほうなのにこの状況は何なのだろう。1人で勝手に怒っていると決めつけ、散々喚いた挙句、泣き出したんだけど。それにしてもこの1週間そんなに飲み食いしてなかったっぽいね、この軽さ。本当に成人した男だろうかと疑いたくなるくらいの軽さに不安になる。

「はぁ……。王さま、ねぇ、聞いて王さま」

 レオの髪を軽くかき上げるが、それでもレオは泣きやむ様子がない。

「れおくん、いい加減こっち向きなよ」

 王さまではなく、名前で呼んだのが功を奏したのか、少しだけレオが反応したのを良いことに、両頬を持ち、レオの顔をこちらに無理矢理向かせる。目から鼻から流れ出た水達がレオのきれいな顔をぐちゃぐちゃにしていた。

「ふふっ、酷い顔」
「なっ!だってセナが訳も分からず怒るからだろ!久しぶりに会ったってのに、セナを怒らせちゃうし」
「あぁ、それで。それでそんな酷い顔になるくらいに泣いてたんだねぇ」

 つまりは瀬名のために泣いていたと言っても過言じゃない。
 ていうか、寂しかったんだろうねぇ。まぁ、それはこっちもなのでお互い様ではあるけれど。
 いまだに顔を持ち上げられている状態でじっと瀬名を見つめているレオの額に軽くキスを落とすと、やっと笑ったな、と凄く嬉しそうに言うもんだから、瀬名の歯止めはそこまでだった。



「で?結局なんでセナは怒ってたんだ?」

 そのままの流れでベッドへと持ち運ばれ、互いに気持ちよくなった後、レオはいまだに納得がいかず問いかけた。

「あ、でも待って!やっぱり妄想するから!想像するから!」
「はぁ……。あんたはだから人の話にもうちょっと真剣に耳を傾けたほうが良いよ。怒ってたんじゃなくてさ、その……だから……さ、」
「さ?」
「あぁもう!寂しかったの!れおくん、手紙のことも全然言ってくれないし、それどころか一人でKnights再始動のことも決めちゃうし、挙げ句の果てには5人で住もう、とか言い出すし。一人で全部決めちゃうなら俺なんのためにいるんだろうとか、れおくんにとって俺いらないんじゃないのとか、色々と考えちゃったの」

 そう言って瀬名はレオに背を向ける形で寝返りをうった。
 さっきまではセナを怒らせたとか、悲しませちゃったとか色んな気持ちが渦巻いてよく分からない気持ちになったけれど今はもう大丈夫。どんな姿でどんな顔をしてどんな気持ちでいるか全部分かる。

「セナ!やっばい、俺やっばいくらいインスピレーション降りてきた!題名はそうだな!セナが照れた歌!セナが素直になった歌!セナが顔を真っ赤にしてる歌!どれが良いかな、わはははは!」
「あぁもう、チョ〜うざぁい!そんなの歌にしなくて良いから!口ずさまなくて良いから!」
「照れるなよセナ!大好きだ、愛してる。それにな、5人で住もうとか言ったけど、手紙のこともあって念のため、てことで再始動して1年くらいのつもりだし、まあもしかしたらそれ以上になるかもだけど、この部屋はこの部屋で取っておこうな!いつでも戻れるように。だから安心しろ、俺はセナを手放すつもりなんて全然無いから」
「もうホントに……、チョ〜うざぁい……」

 そう言ったセナの声は心なしか少しだけ震えていた気がした。



「遂にknights再始動なのですね。先輩方、大変お待たせしました、この朱桜司、精一杯騎士としての役目を果たしましょう」
「うふふ、司ちゃんったら、張り切りすぎて転げないようにねぇ。それにしてもようやくって感じでアタシもわくわくしちゃうわぁ」
「2人も仲直りしたみたいで安心安心。あのときのセッちゃんの顔本当に酷かったんだから」
「あらやだ、2人ともケンカしちゃったの?何々、何があったの凛月ちゃん」
「ちょっとくまくん余計なこと言わないでよねぇ!なるくんも気にしなくて良いから。……て王さま何ニヤニヤしてるわけぇ?」
「わははは!この感じknightsて感じだな!みんなありがとう、大好きだ。これからもよろしくな」

「Off course」
「勿論よぉ」
「当然」

 3人の声が一斉に聞こえる。3人の声だけに不安を感じたレオは声を発しなかった方に顔を向けると向こうもレオの方をじっと見つめていた。真顔のその表情に少しだけドキリとするが、すぐに表情を崩し優しい笑みを携え瀬名は口を開いた。

「当たり前でしょ、俺たちは王さまの騎士なんだから」

~fin~
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