第2話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ねぇねぇ。真緒くんって彼女作ったりしないの?」
凛月と同棲を始めて気がつけば、凛月と真緒と名前の3人で家で飲むことが増えた。何となく苦手意識を持っていた真緒に対してもあの1件以降、今はあまり苦手には感じられない。
名前の横で明らかに度数の強いお酒をグイグイ飲みながら凛月は「ま〜くんは俺が彼女〜」とふざけている。
「お前の彼女は横にいるだろ」
「名前は俺の彼女だけど、俺はま〜くんの彼女なの」
「凛月、それなんか複雑だからやめて」
これで酔っ払っていないのだから質が悪い。今日はいつもよりも饒舌だから少しは酔っているのかもしれないが。「え〜、名前のケチ」と口を尖らせたって複雑すぎる。
話が逸れそうだったので、「それで?」と促すと「まぁ、良い機会か」と困り顔。
「実はさ……、つい最近できたんだよな」
それは凛月にとってとんでもない爆弾発言で。
「は?聞いてないんだけど」
横でヘラヘラと楽しそうにお酒を飲んでいた時からは想像も出来ない低い声が聞こえた。その声に自然と凛月から少し距離を取ると、恐らくは真緒に見えない場所で凛月は名前の手を強く握った。その強さに痛みも感じるが、それよりもなんとなく震える凛月の手に名前は手を預けた。
「そりゃ、今言ったからな」
「なんで言ってくれなかったの」
「言うタイミングがなかった、ていうかそんな言いふらすことでもないだろ。凛月も知らないやつだし」
「はぁ?何それ。ま〜くんにとっては俺は言うに足りないない存在だってこと?」
「何キレてるんだよ、凛月。そんなことは言ってないだろ」
「だってそういうことでしょ?言うタイミングなんていくらでもあるじゃん。今日だって名前がたまたま聞かなかったら言わないままだったんでしょ?」
次第にヒートアップする凛月に「凛月、落ち着いて」というと「名前は黙ってて」と一蹴。それと同時に凛月に繋がれている手の力が強くなる。
「とにかく。俺はどこの馬の骨かも知らない人がま〜くんの彼女なんて許さないから」
「なんでお前に許可を貰わないといけないんだよ。あと凛月。馬の骨はさすがにキレるぞ」
そうして暫くあまり良いとは言えない沈黙が続いた後、徐に「……トイレ」と凛月が席を立った。
「ごめんね、本当に悪いタイミングで聞いちゃった」
もとはと言えば名前が真緒に何となく聞いたことが原因で。そのことを真緒に謝ると「名前のせいじゃないから気にすんな」と困ったように笑った。
「んもう、凛月も素直におめでとう、て言えばいいのに。……ねぇねぇ、どんな子なの?」
女の立場からすれば、真緒が選ぶ女性がどんな人かはとても興味深い。
「どんな、って……良いやつだよ」
「そんなの、真緒くんが選ぶ女性だもん。分かってるよ。どこに惹かれたーとかさ」
名前が食い気味で来るからか、真緒にしては珍しくたじろぎ、「いや、えーと」と濁される。
「女って本当にこういう話題好きだよな」
あははは、と困ったような笑い顔。
「当たり前だよ。私としては、真緒くんが彼女作ったことが凄く嬉しいんだよ。凛月はあんな感じだけど、心底嫌に思ってるわけじゃないと思うし。子供が自分のもの獲られて拗ねちゃってるだけだと思うから」
そこまで言って真緒に「後ろ後ろ」と言われていることに気付いた。名前の後ろはドアしかない。どういうことかと振り向くと、そこにはにっこりと笑顔を携えた凛月の姿。
「ふぅん。俺がいないと中々言うじゃん、名前も」
「凛月さん……。戻ってるなら戻ってるって……」
その笑顔に妙な寒気を感じ、思わず「さん」付けになる。
「まぁいいや。……ま〜くん、呼んで」
何を、がない凛月の発言に「は……?何をだよ」と真緒も困惑気味だ。
「はぁ?ま〜くんの彼女に決まってるでしょ。こうなったら今から俺が見定めてあげる。ま〜くんにふさわしいかどうか」
「いやだからなんでお前に……。……ったく。来るかどうかは知らんぞ」
凛月の無茶ぶりにも関わらず仕方ないな、と呼ぶ辺りは真緒らしい。自分の電話を握りしめ廊下に出るとどこかに電話をし始める。相手は間違いなく彼女だろう。
廊下への扉が閉まるのを確認して「凛月」と叱咤。
「なに」
「あんまり真緒くん困らせちゃ駄目。真緒くんが誰と付き合おうと真緒くんの自由。凛月が干渉し過ぎることじゃないでしょう?」
「……名前までま〜くんの味方なの」
「味方とか、そういう話じゃないでしょ」
「うるさい」
そう言ってそっぽを向き、凛月は机の上にある先程注いだ、まだほぼ無垢であろうお酒を一気に飲み干した。
「ちょっと、凛月、今日飲み過、」
「俺にはま〜くんしかいなかったの」
名前の注意も終わらない内に三角座りで膝に顔を埋めながら呟いた。その呟きは本当に小さな呟きで名前にも辛うじて聞こえる大きさだった。
「子どもの頃から俺のそばでずっと変わらず一緒に居てくれたのはま〜くんだけだったの……。家のことや、俺自身の体質のことで周りに友達と呼べる人はいなかったし、俺自身も特に必要と感じていなかったから、ずっと1人だった。けど、ま〜くんは突然俺の前にやって来て、俺の面倒や世話をしてくれて……。ま〜くんがいなかったら多分俺はいまここにいない。ま〜くんが居てくれたから朔間零の弟の朔間凛月として、Knightsの朔間凛月として、そして名前の旦那の朔間凛月として存在してる。俺にとって衣更真緒という存在は俺の世界そのものなの。ま〜くんに家族が出来ちゃったら、俺のことなんて見てくれなくなる、もう俺のことなんてどうでもよくなっちゃう」
凛月がこれまで真緒に固執してきた理由が垣間見えた気がした。「凛月……」ポロと出た呟きに「ごめんね」と返される。
「俺がこんなだから名前を不安にさせちゃう」
前回の1件のことを言ってくれているのだろう。
「ふふ、馬鹿だね、凛月は」
だからこそ、この間言われた台詞を名前はそっくりそのまま返した。
三角座りをしている凛月の肩に頭を預け、寂しそうに床に置かれている手をそっと握る。
「名前……?」
「この間、凛月が私の思いを聞いてくれて受け止めてくれたように、私も凛月の思いが聞けて嬉しい。以前の私だったら確かに不安になってたかもしれないけど、今はそんな凛月のことを支えたいなぁ、て素直に思うよ。ずっと一緒にいたんだもん。凛月が寂しがるのも不安になるのも当たり前だよ。でもね、ずっと一緒にいたからこそ、真緒くんは誰よりも凛月に受け入れられて祝福されたいんじゃないかな。大丈夫だよ。あの真緒くんだよ?真緒くんの中で優先順位は変わっちゃうかもだけど、凛月のことを蔑ろにすることも忘れることも絶対無いよ。それこそ、私が嫉妬しちゃうくらい。だから、ね。凛月。真緒くんにちゃんとおめでとう、て言おう」
「……名前」
「……て、なんか偉そうに言っちゃった」
ごめんね、と笑うと「やっぱり俺には名前がいないともう駄目みたい」と凛月の頭の重さがそっと降りかかってきた。
そっと甘えてくれた凛月に幸せを感じていると後ろから聞こえるノックの音。振り向くと入ろうか悩んでいる真緒の姿。ドアに取り付けられたガラスは磨りガラスとなっているため、2人がどんな姿でいるかはもろバレだ。そこで真緒の存在を忘れていたことに気付く。
ガバッと頭を上げると凛月の頭を思い切り払いのけた形になり、「名前、痛い……」と呟かれる。
そこでそうっと真緒が扉を開けた。
「えぇ……っと、邪魔して悪い」
「ううんううん!むしろこっちこそご、ごめんね」
「もう、ま〜くん、邪魔しないでよねぇ。ふふ、続きはまた夜に、ね」
おちゃらける凛月に叱咤すると、そっと「ありがと」と耳元で囁かれ、耳元が擽ったく感じられた。
凛月と同棲を始めて気がつけば、凛月と真緒と名前の3人で家で飲むことが増えた。何となく苦手意識を持っていた真緒に対してもあの1件以降、今はあまり苦手には感じられない。
名前の横で明らかに度数の強いお酒をグイグイ飲みながら凛月は「ま〜くんは俺が彼女〜」とふざけている。
「お前の彼女は横にいるだろ」
「名前は俺の彼女だけど、俺はま〜くんの彼女なの」
「凛月、それなんか複雑だからやめて」
これで酔っ払っていないのだから質が悪い。今日はいつもよりも饒舌だから少しは酔っているのかもしれないが。「え〜、名前のケチ」と口を尖らせたって複雑すぎる。
話が逸れそうだったので、「それで?」と促すと「まぁ、良い機会か」と困り顔。
「実はさ……、つい最近できたんだよな」
それは凛月にとってとんでもない爆弾発言で。
「は?聞いてないんだけど」
横でヘラヘラと楽しそうにお酒を飲んでいた時からは想像も出来ない低い声が聞こえた。その声に自然と凛月から少し距離を取ると、恐らくは真緒に見えない場所で凛月は名前の手を強く握った。その強さに痛みも感じるが、それよりもなんとなく震える凛月の手に名前は手を預けた。
「そりゃ、今言ったからな」
「なんで言ってくれなかったの」
「言うタイミングがなかった、ていうかそんな言いふらすことでもないだろ。凛月も知らないやつだし」
「はぁ?何それ。ま〜くんにとっては俺は言うに足りないない存在だってこと?」
「何キレてるんだよ、凛月。そんなことは言ってないだろ」
「だってそういうことでしょ?言うタイミングなんていくらでもあるじゃん。今日だって名前がたまたま聞かなかったら言わないままだったんでしょ?」
次第にヒートアップする凛月に「凛月、落ち着いて」というと「名前は黙ってて」と一蹴。それと同時に凛月に繋がれている手の力が強くなる。
「とにかく。俺はどこの馬の骨かも知らない人がま〜くんの彼女なんて許さないから」
「なんでお前に許可を貰わないといけないんだよ。あと凛月。馬の骨はさすがにキレるぞ」
そうして暫くあまり良いとは言えない沈黙が続いた後、徐に「……トイレ」と凛月が席を立った。
「ごめんね、本当に悪いタイミングで聞いちゃった」
もとはと言えば名前が真緒に何となく聞いたことが原因で。そのことを真緒に謝ると「名前のせいじゃないから気にすんな」と困ったように笑った。
「んもう、凛月も素直におめでとう、て言えばいいのに。……ねぇねぇ、どんな子なの?」
女の立場からすれば、真緒が選ぶ女性がどんな人かはとても興味深い。
「どんな、って……良いやつだよ」
「そんなの、真緒くんが選ぶ女性だもん。分かってるよ。どこに惹かれたーとかさ」
名前が食い気味で来るからか、真緒にしては珍しくたじろぎ、「いや、えーと」と濁される。
「女って本当にこういう話題好きだよな」
あははは、と困ったような笑い顔。
「当たり前だよ。私としては、真緒くんが彼女作ったことが凄く嬉しいんだよ。凛月はあんな感じだけど、心底嫌に思ってるわけじゃないと思うし。子供が自分のもの獲られて拗ねちゃってるだけだと思うから」
そこまで言って真緒に「後ろ後ろ」と言われていることに気付いた。名前の後ろはドアしかない。どういうことかと振り向くと、そこにはにっこりと笑顔を携えた凛月の姿。
「ふぅん。俺がいないと中々言うじゃん、名前も」
「凛月さん……。戻ってるなら戻ってるって……」
その笑顔に妙な寒気を感じ、思わず「さん」付けになる。
「まぁいいや。……ま〜くん、呼んで」
何を、がない凛月の発言に「は……?何をだよ」と真緒も困惑気味だ。
「はぁ?ま〜くんの彼女に決まってるでしょ。こうなったら今から俺が見定めてあげる。ま〜くんにふさわしいかどうか」
「いやだからなんでお前に……。……ったく。来るかどうかは知らんぞ」
凛月の無茶ぶりにも関わらず仕方ないな、と呼ぶ辺りは真緒らしい。自分の電話を握りしめ廊下に出るとどこかに電話をし始める。相手は間違いなく彼女だろう。
廊下への扉が閉まるのを確認して「凛月」と叱咤。
「なに」
「あんまり真緒くん困らせちゃ駄目。真緒くんが誰と付き合おうと真緒くんの自由。凛月が干渉し過ぎることじゃないでしょう?」
「……名前までま〜くんの味方なの」
「味方とか、そういう話じゃないでしょ」
「うるさい」
そう言ってそっぽを向き、凛月は机の上にある先程注いだ、まだほぼ無垢であろうお酒を一気に飲み干した。
「ちょっと、凛月、今日飲み過、」
「俺にはま〜くんしかいなかったの」
名前の注意も終わらない内に三角座りで膝に顔を埋めながら呟いた。その呟きは本当に小さな呟きで名前にも辛うじて聞こえる大きさだった。
「子どもの頃から俺のそばでずっと変わらず一緒に居てくれたのはま〜くんだけだったの……。家のことや、俺自身の体質のことで周りに友達と呼べる人はいなかったし、俺自身も特に必要と感じていなかったから、ずっと1人だった。けど、ま〜くんは突然俺の前にやって来て、俺の面倒や世話をしてくれて……。ま〜くんがいなかったら多分俺はいまここにいない。ま〜くんが居てくれたから朔間零の弟の朔間凛月として、Knightsの朔間凛月として、そして名前の旦那の朔間凛月として存在してる。俺にとって衣更真緒という存在は俺の世界そのものなの。ま〜くんに家族が出来ちゃったら、俺のことなんて見てくれなくなる、もう俺のことなんてどうでもよくなっちゃう」
凛月がこれまで真緒に固執してきた理由が垣間見えた気がした。「凛月……」ポロと出た呟きに「ごめんね」と返される。
「俺がこんなだから名前を不安にさせちゃう」
前回の1件のことを言ってくれているのだろう。
「ふふ、馬鹿だね、凛月は」
だからこそ、この間言われた台詞を名前はそっくりそのまま返した。
三角座りをしている凛月の肩に頭を預け、寂しそうに床に置かれている手をそっと握る。
「名前……?」
「この間、凛月が私の思いを聞いてくれて受け止めてくれたように、私も凛月の思いが聞けて嬉しい。以前の私だったら確かに不安になってたかもしれないけど、今はそんな凛月のことを支えたいなぁ、て素直に思うよ。ずっと一緒にいたんだもん。凛月が寂しがるのも不安になるのも当たり前だよ。でもね、ずっと一緒にいたからこそ、真緒くんは誰よりも凛月に受け入れられて祝福されたいんじゃないかな。大丈夫だよ。あの真緒くんだよ?真緒くんの中で優先順位は変わっちゃうかもだけど、凛月のことを蔑ろにすることも忘れることも絶対無いよ。それこそ、私が嫉妬しちゃうくらい。だから、ね。凛月。真緒くんにちゃんとおめでとう、て言おう」
「……名前」
「……て、なんか偉そうに言っちゃった」
ごめんね、と笑うと「やっぱり俺には名前がいないともう駄目みたい」と凛月の頭の重さがそっと降りかかってきた。
そっと甘えてくれた凛月に幸せを感じていると後ろから聞こえるノックの音。振り向くと入ろうか悩んでいる真緒の姿。ドアに取り付けられたガラスは磨りガラスとなっているため、2人がどんな姿でいるかはもろバレだ。そこで真緒の存在を忘れていたことに気付く。
ガバッと頭を上げると凛月の頭を思い切り払いのけた形になり、「名前、痛い……」と呟かれる。
そこでそうっと真緒が扉を開けた。
「えぇ……っと、邪魔して悪い」
「ううんううん!むしろこっちこそご、ごめんね」
「もう、ま〜くん、邪魔しないでよねぇ。ふふ、続きはまた夜に、ね」
おちゃらける凛月に叱咤すると、そっと「ありがと」と耳元で囁かれ、耳元が擽ったく感じられた。