1章
夢小説設定
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「ああーーー
もうつっかれたぁー!」
春先の基地食堂、昼は新図書隊員の悲鳴や泣き言が溢れる。
夜は訓練疲れでもう騒ぐ気力も残っていない。
「ちょっとあのクソ教官、あたしのこと目の敵にしてなぁい!?」
言いつつ郁は日替わり定食のチキンソテーにフォークを突き立てた。
勢い余って皿から肉が逃げそうになる。
「郁、落ち着いて。汚い」
「クソ教官て……堂上教官のこと?」
「そおよ!!」
堂上篤二等図書正。
先ほど郁に腕立てを命じ、私に詰め寄った「鬼教官」である。
「あたしだけ!
あたしだけよこんなに腕立て食らってんの!
ハイポート男子と混ざって12位で一体ナニに文句があるってのよ!
それだけ結果出したんだから最後でコケても大目に見たらどうなの!」
「いや、だからそれが問題なんだよ…」
そう由美は呟くが
「何か言った、由美」
「ううん、なんでもない」
郁には聞こえなかったらしい。
「12位って男子も混ざってるでしょうに。
化けものか」
そう言ったのは郁と由美と寮で同室の柴崎麻子だ。
図書館員として武蔵家第一図書館への配属が決まっている。
かく言う私と郁は防衛員としてやはり武蔵野第一図書館に配属だ。
関東図書基地は東京都配属の図書隊員の独身寮も兼ねているので、別の図書館でも配属が都内であればそのまま基地暮らしとなる。
「あんたは何位だったのよ」
「あたし?
今日はビリ」
「ビリ?
昨日はペナルティに入らないくらいの順位じゃなかったっけ?」
「あたしは郁と違って全てに全力じゃないの。
そこそこできればいいよ。
頑張ったって全て報われるわけじゃないんだから」
「あんた、ひねくれてるわよね
まあ、嫌いじゃないけど。
でも、あたし結構あの人スキかも。
ちょっとかっこよくない?」
由美の順位の話をしてたはずなのに突然話題は堂上へと変わる。
「柴崎アンタ目腐ってんじゃないの!?
なによあんなチビ!」
「あたしよりは高いしね」
そう言う柴崎の身長は157センチ。
対して郁は170センチ。
「あたしは同じくらいかなぁ」
問題の堂上は目算で165センチあるかないかというところである。
「でも笠原は背で選り好みしてたらオトコ作るハードルますます高くなるよ」
「ますます言うな!」
「ちょっと郁、もうやめな」
由美がそう止めるが郁の口はもう止まれない。
「背で選り好みできないとしても少なくとも奴だけは論外よ、性格悪いし!」
「あたしは止めたからね」
「…お前らの俺に対する評価はよく分かった」
背後からの低い声を振り向き、郁はぎゃあっと悲鳴を上げた。
「なんでこんなとこに、おられるんですか!」
教官は隣の士官食堂を使うのが基本だ。
堂上は由美たちの後ろのテーブルにつきながら答えた。
「今日はこっちの方が日替わりのメニューが旨そうだったんだ」
それから、と付け加えるに
「無理して敬語つくらなくていいぞ、さっきの口調の方がよほどラクそうだしな。
チビで性格の悪いクソ教官か…
俺も人間だからたまたま耳に入った罵詈雑言が指導に影響を及ばさないかどうかまでは保証できんが」
「あたしは褒めてたから関係ないですよねー、教官」
柴崎がさっさと郁を切り捨てて保身にかかる。
ならば
「なら私も止めたから問題ないですよね」
「問題ありまくりだ!!!
訓練だろうと全力を出してやれ!」
げっ…そこまで聞かれてたとは思わなかった。
「訓練で本気出さなくて本番の時…」
「はいはいわかってますよ。
そんなこと」
結局私も怒られるハメになった。
目の前では食事をガツガツかきこんでいる郁。
「早食いは体に悪いよ、笠原さん。
ね、水無月さん」
上からかかった声は別の班の教官、小牧幹久二等図書正。
堂上とは確か同期のはず。
ところでどうして私や郁の名前を知ってるの?
小牧教官と個人的に言葉を交わしたのはこれが初めてだと思うけど。
「柴崎、由美、行こう」
私たちの返事も待たずに郁は立ち上がる。
トレイを持って歩き出したところへ
「おい、落としたぞ」
声をかけた堂上が郁に向けて差し出したのは2つに折ったハガキである。
郁が立ち上がった拍子に落ちたらしい。
「いいです、捨てといてください」
「いいって、お前、もう書いてあるじゃないか」
「出せないと思ったから折ったんです。
親元にそんなハガキ出したら連れ戻されちゃう」
と、一方的に切り上げて、郁は行ってしまった。
「他人に信書捨てさせるか、まったく」
「郁の家、ちょっと複雑みたいなので。
私郁に渡しておきます」
「あ、悪いな」
「気にしないでください」
「午後からは格闘技訓練だ。
本気でやれよ」
「げっ…」
「げとはなんだ!!」
これ以上反抗すれば小言が来そうだったので
「頑張ります」
それだけ言ってその場を去った。
もうつっかれたぁー!」
春先の基地食堂、昼は新図書隊員の悲鳴や泣き言が溢れる。
夜は訓練疲れでもう騒ぐ気力も残っていない。
「ちょっとあのクソ教官、あたしのこと目の敵にしてなぁい!?」
言いつつ郁は日替わり定食のチキンソテーにフォークを突き立てた。
勢い余って皿から肉が逃げそうになる。
「郁、落ち着いて。汚い」
「クソ教官て……堂上教官のこと?」
「そおよ!!」
堂上篤二等図書正。
先ほど郁に腕立てを命じ、私に詰め寄った「鬼教官」である。
「あたしだけ!
あたしだけよこんなに腕立て食らってんの!
ハイポート男子と混ざって12位で一体ナニに文句があるってのよ!
それだけ結果出したんだから最後でコケても大目に見たらどうなの!」
「いや、だからそれが問題なんだよ…」
そう由美は呟くが
「何か言った、由美」
「ううん、なんでもない」
郁には聞こえなかったらしい。
「12位って男子も混ざってるでしょうに。
化けものか」
そう言ったのは郁と由美と寮で同室の柴崎麻子だ。
図書館員として武蔵家第一図書館への配属が決まっている。
かく言う私と郁は防衛員としてやはり武蔵野第一図書館に配属だ。
関東図書基地は東京都配属の図書隊員の独身寮も兼ねているので、別の図書館でも配属が都内であればそのまま基地暮らしとなる。
「あんたは何位だったのよ」
「あたし?
今日はビリ」
「ビリ?
昨日はペナルティに入らないくらいの順位じゃなかったっけ?」
「あたしは郁と違って全てに全力じゃないの。
そこそこできればいいよ。
頑張ったって全て報われるわけじゃないんだから」
「あんた、ひねくれてるわよね
まあ、嫌いじゃないけど。
でも、あたし結構あの人スキかも。
ちょっとかっこよくない?」
由美の順位の話をしてたはずなのに突然話題は堂上へと変わる。
「柴崎アンタ目腐ってんじゃないの!?
なによあんなチビ!」
「あたしよりは高いしね」
そう言う柴崎の身長は157センチ。
対して郁は170センチ。
「あたしは同じくらいかなぁ」
問題の堂上は目算で165センチあるかないかというところである。
「でも笠原は背で選り好みしてたらオトコ作るハードルますます高くなるよ」
「ますます言うな!」
「ちょっと郁、もうやめな」
由美がそう止めるが郁の口はもう止まれない。
「背で選り好みできないとしても少なくとも奴だけは論外よ、性格悪いし!」
「あたしは止めたからね」
「…お前らの俺に対する評価はよく分かった」
背後からの低い声を振り向き、郁はぎゃあっと悲鳴を上げた。
「なんでこんなとこに、おられるんですか!」
教官は隣の士官食堂を使うのが基本だ。
堂上は由美たちの後ろのテーブルにつきながら答えた。
「今日はこっちの方が日替わりのメニューが旨そうだったんだ」
それから、と付け加えるに
「無理して敬語つくらなくていいぞ、さっきの口調の方がよほどラクそうだしな。
チビで性格の悪いクソ教官か…
俺も人間だからたまたま耳に入った罵詈雑言が指導に影響を及ばさないかどうかまでは保証できんが」
「あたしは褒めてたから関係ないですよねー、教官」
柴崎がさっさと郁を切り捨てて保身にかかる。
ならば
「なら私も止めたから問題ないですよね」
「問題ありまくりだ!!!
訓練だろうと全力を出してやれ!」
げっ…そこまで聞かれてたとは思わなかった。
「訓練で本気出さなくて本番の時…」
「はいはいわかってますよ。
そんなこと」
結局私も怒られるハメになった。
目の前では食事をガツガツかきこんでいる郁。
「早食いは体に悪いよ、笠原さん。
ね、水無月さん」
上からかかった声は別の班の教官、小牧幹久二等図書正。
堂上とは確か同期のはず。
ところでどうして私や郁の名前を知ってるの?
小牧教官と個人的に言葉を交わしたのはこれが初めてだと思うけど。
「柴崎、由美、行こう」
私たちの返事も待たずに郁は立ち上がる。
トレイを持って歩き出したところへ
「おい、落としたぞ」
声をかけた堂上が郁に向けて差し出したのは2つに折ったハガキである。
郁が立ち上がった拍子に落ちたらしい。
「いいです、捨てといてください」
「いいって、お前、もう書いてあるじゃないか」
「出せないと思ったから折ったんです。
親元にそんなハガキ出したら連れ戻されちゃう」
と、一方的に切り上げて、郁は行ってしまった。
「他人に信書捨てさせるか、まったく」
「郁の家、ちょっと複雑みたいなので。
私郁に渡しておきます」
「あ、悪いな」
「気にしないでください」
「午後からは格闘技訓練だ。
本気でやれよ」
「げっ…」
「げとはなんだ!!」
これ以上反抗すれば小言が来そうだったので
「頑張ります」
それだけ言ってその場を去った。