1章
夢小説設定
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三度目の警備実習のバディは小牧でも堂上でもなかった。
私は一度神社へお参りに行こうかと思うくらい不運だと思う。
なぜならー
「悪いな、今日もお前のバディは体調不良で」
2人よりも数歳年上の40歳超え、がっしりした強面は玄田竜助三等図書監だ。
前回に続き今回も由美のバディは体調不良のため郁のところへ仲間に入れてもらっている。
「堂上から話は聞いているぞ、この前ぶん殴られたそうだな。
腫れはもう引いたのか?」
性格が豪胆なのか大雑把なのか、警備控え室で顔合わせした初手から痛いところをガシガシ突きにくる。
「お陰様で…」
「水無月はどうだ?」
「私の方も全然大丈夫です」
「災難だったが奴も融通のきかん男だからな。
まあ勘弁してやれ」
「私の全面的な過失です。
同期を危険にさらしました」
「もういいって言ってるのに」
「過失なら奴も同じだ」
玄田はあっさりそう片付けた。
「新隊員がミスをするのは当たら前だ。
お前もアホウだし、突っ込んでいった水無月もアホウだが、フォローが危うくなったのは堂上の責任だ。
本人も反省しとる」
「堂上教官、気になさってたんですか」
「やっぱり」
気にしないでください、って伝えたけどやっぱり気にするよね。
堂上はそういう人だ。
「相当へこんでたな。
軽症とはいえ、水無月を負傷させたんだから当然だろう、教官としては」
あの場は私が行くべきではなかった。
大人しく気まずい雰囲気のままでいれば私が怪我をすることもなかったのだ。
「しかしまあ余計なことはいうなと釘を刺されてるんでな、これは独り言だ」
ここまでべらべら喋って置いて今更何を、と由美と郁は顔を見合わせて笑った。
「よし、哨戒でるぞ」
市街哨戒に出るのは初めてだ。
良化特務機関の検閲部隊は概ね10名前後の良化隊員で構成され、没収物を運搬する輸送車輌を連れている。
「だから2台以上で隊を組んでいるバンがいたら要注意だな。
必ず複数台が連なって移動しているからしばらく観察してりゃすぐに見分けがつく。
全車が窓に偏光フィルター貼ってたら、まず間違いないと思っていい」
という説明を聞きながら郁が道路の反対側を指さした。
「あれは違うんですか?」
「おお、まさしくあれだ。
お前、目がきくな」
「や、何かたまたま目に入ったので」
玄田が腰のベルトに付けていたポータブルの無線機を取る。
「哨戒より本部、近隣路上に良化特務機関の車体を発見。
本日の襲撃確率は低いが警戒レベルは1上げられたし、どうぞ」
そのやりとりを聞いて郁が首を傾げていたので答える。
「停車位置が図書館に近すぎる。
良化特務機関の手口は騙し打ち。
こんな近くに無造作に駐車してあるってことは、今日の目的は図書館じゃないってことよ」
「よく分かってるな、さすがだな」
「いえ…」
「じゃあ、あれの目的は…」
「市政センターの近くにでかい書店ができたろう。
多分そこだな。
最近売り上げを伸ばしてるらしいから目をつけられたんだろう」
「え、なら早く行かないと!」
「どこへだ」
と郁の発言に玄田が怪訝な顔をする。
それに郁も怪訝な顔を返した。
「どこって、その書店ですよ!」
「何を言っとる、民間書店は非武装緩衝地帯だ。
かち合ったならともかくわざわざ乗り込んで検閲を妨害することはできん」
「そんな!
由美もそう思うよね!?」
「…郁。
玄田教官の言う通りよ。
私たちは助けに行くべきじゃない。
だって、私たちはー」
その先の言葉を言うのには憚れた。
だってきっと郁には辛いだろうから。
「水無月の言う通りだ。
俺たちは正義の味方じゃない」
由美が言えなかった言葉を玄田がかわりに言ってくれる。
そう私たちは正義の味方じゃない。
「ー見計らい図書の制度があります!」
言うなり郁はかけ出した。
「ちょっと、郁!!
玄田教官は基地に連絡をお願いします!
笠原は私が追います!!!」
私は一度神社へお参りに行こうかと思うくらい不運だと思う。
なぜならー
「悪いな、今日もお前のバディは体調不良で」
2人よりも数歳年上の40歳超え、がっしりした強面は玄田竜助三等図書監だ。
前回に続き今回も由美のバディは体調不良のため郁のところへ仲間に入れてもらっている。
「堂上から話は聞いているぞ、この前ぶん殴られたそうだな。
腫れはもう引いたのか?」
性格が豪胆なのか大雑把なのか、警備控え室で顔合わせした初手から痛いところをガシガシ突きにくる。
「お陰様で…」
「水無月はどうだ?」
「私の方も全然大丈夫です」
「災難だったが奴も融通のきかん男だからな。
まあ勘弁してやれ」
「私の全面的な過失です。
同期を危険にさらしました」
「もういいって言ってるのに」
「過失なら奴も同じだ」
玄田はあっさりそう片付けた。
「新隊員がミスをするのは当たら前だ。
お前もアホウだし、突っ込んでいった水無月もアホウだが、フォローが危うくなったのは堂上の責任だ。
本人も反省しとる」
「堂上教官、気になさってたんですか」
「やっぱり」
気にしないでください、って伝えたけどやっぱり気にするよね。
堂上はそういう人だ。
「相当へこんでたな。
軽症とはいえ、水無月を負傷させたんだから当然だろう、教官としては」
あの場は私が行くべきではなかった。
大人しく気まずい雰囲気のままでいれば私が怪我をすることもなかったのだ。
「しかしまあ余計なことはいうなと釘を刺されてるんでな、これは独り言だ」
ここまでべらべら喋って置いて今更何を、と由美と郁は顔を見合わせて笑った。
「よし、哨戒でるぞ」
市街哨戒に出るのは初めてだ。
良化特務機関の検閲部隊は概ね10名前後の良化隊員で構成され、没収物を運搬する輸送車輌を連れている。
「だから2台以上で隊を組んでいるバンがいたら要注意だな。
必ず複数台が連なって移動しているからしばらく観察してりゃすぐに見分けがつく。
全車が窓に偏光フィルター貼ってたら、まず間違いないと思っていい」
という説明を聞きながら郁が道路の反対側を指さした。
「あれは違うんですか?」
「おお、まさしくあれだ。
お前、目がきくな」
「や、何かたまたま目に入ったので」
玄田が腰のベルトに付けていたポータブルの無線機を取る。
「哨戒より本部、近隣路上に良化特務機関の車体を発見。
本日の襲撃確率は低いが警戒レベルは1上げられたし、どうぞ」
そのやりとりを聞いて郁が首を傾げていたので答える。
「停車位置が図書館に近すぎる。
良化特務機関の手口は騙し打ち。
こんな近くに無造作に駐車してあるってことは、今日の目的は図書館じゃないってことよ」
「よく分かってるな、さすがだな」
「いえ…」
「じゃあ、あれの目的は…」
「市政センターの近くにでかい書店ができたろう。
多分そこだな。
最近売り上げを伸ばしてるらしいから目をつけられたんだろう」
「え、なら早く行かないと!」
「どこへだ」
と郁の発言に玄田が怪訝な顔をする。
それに郁も怪訝な顔を返した。
「どこって、その書店ですよ!」
「何を言っとる、民間書店は非武装緩衝地帯だ。
かち合ったならともかくわざわざ乗り込んで検閲を妨害することはできん」
「そんな!
由美もそう思うよね!?」
「…郁。
玄田教官の言う通りよ。
私たちは助けに行くべきじゃない。
だって、私たちはー」
その先の言葉を言うのには憚れた。
だってきっと郁には辛いだろうから。
「水無月の言う通りだ。
俺たちは正義の味方じゃない」
由美が言えなかった言葉を玄田がかわりに言ってくれる。
そう私たちは正義の味方じゃない。
「ー見計らい図書の制度があります!」
言うなり郁はかけ出した。
「ちょっと、郁!!
玄田教官は基地に連絡をお願いします!
笠原は私が追います!!!」