poison remover
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昔、誰だったかに「お前のバトルスタイルには華がない」と言われたことがある。
興行としての側面があるガラルのポケモンリーグバトルにおいて、バトルでの華やかさ、魅力はある程度必要なのだろう。
それは分かる。充分に理解できる。
だからといって、長年ポリシーとしてきた自分のバトルスタイルを簡単に変えられるかと言われれば、俺は首を全力で横に振る。
「でもよ……これはあんまりじゃねーのか……!」
アラベスクタウンに住む俺の元に届いた一通の手紙。
その中には、俺がジムリーダーを務めているどくジムのマイナーリーグ降格通知が無情にも記載されていた。
その忌々しい紙きれをグシャリと丸め、乱暴にゴミ箱の中へ叩きつける。
くそ、何がいけなかった。
スポンサーを増やすためにバトルに華を出せと言ってきた企業のお偉いさんに威嚇をかましたことか。
慣れないファンサをもっと増やせという言葉を無視してきたことか。
それとも……。
「全部なんじゃないのかい」
「!?」
突然背後から聞こえた声に、思わず振り返る。
そこには杖をついたまま、俺の部屋を見渡すポプラさんがいた。
色んなものに八つ当たりした結果、ひどく乱雑になった部屋を見てため息を吐くポプラさんに、視線だけで帰れと念を飛ばしてみる。
が、この人にそんなものが通用するはずがなく、また気にする素振りも見せなかった。
「ずいぶん荒れてるねぇ。ま、こうなることは予想していたけどさ」
「……どういう意味ですか。ていうか勝手に人の家に入らないでください」
「子どもの頃に世話してやった人に対して、なんてこと言うんだい」
昔はピンクの似合う可愛い子だったのに、とため息を吐かれ、思い出したくもない苦い記憶が蘇る。
俺の家と古くから付き合いのあったらしいポプラさんには、子どもの頃にそれはもう色んな意味で世話になった。
会うたびに男の俺が着るには可愛すぎるピンクの服を着せられたり、フェアリータイプのポケモンにさんざん付きまとわせられたり。
おかげでピンクを見るだけで蕁麻疹がでるようになったし、フェアリータイプに対してトラウマレベルの嫌悪を抱くようになった。
俺がどくタイプを極めたのも、大嫌いなフェアリータイプに対抗できる数少ないタイプのひとつだったことも大きい。
そんな風に俺の人生に多大な影響を与えた張本人に、どうして優しくできようか。
「……今の俺は虫の居所が悪いんです。わかったらさっさと帰ってくれませんかね」
「なまえ。あんた、そんな風に誰彼構わず噛みついてると、いつかジムリーダー権もはく奪されちまうよ」
大人しくあたしの跡を継げば良かったのに、とのん気な声でとんでもないことを言うポプラさんに、ギリ、と奥歯を噛みしめる。
黙れだまれ。余計なことを言うんじゃない。
「うるせえ! 俺はあんたの、誰の言いなりにもならねぇ! これ以上何か言うんだったら、あんたの苦手な毒で今すぐ溶かしちまうぞ!」
ついに怒りに任せて吐き叫べば、ポプラさんはやれやれといった風に肩を落として俺の家から出て行った。
くそ、イライラする。なんで俺がこんな目に。
「……全部、溶けちまえばいいのに」
呟いた言葉は、誰の耳にも入ることはなかった。
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