甘い孤独
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……っ、服を着てくれないか!」
私がシャワーを浴びている間に目が覚めたのだろう。
朝着ていたワイシャツだけに再度袖を通し、タオルで髪を拭きながらリビングに入った私を見たダンデが最初に発したセリフはこれだった。
ソファに座ったまま、真っ赤になって私から顔を逸らす彼の、なんと可愛いことか。
まるで昨晩とは打って変わった初心な反応を見せるダンデに、内心苦笑する。
さっきまでは彼を飲み友達として失いたくないと思っていたけど、それよりも今は私を明らかに『女』として意識している彼を、もうすこし楽しみたい。
それに、昨夜は完全に彼に抱かれたわけじゃいから、実はほんのちょっとだけ物足りないとも思ってた。
だから、もっと私を意識させたくて、いじわるしてみたくなった。
「ちゃんと着てるじゃない。ほら」
「もっとしっかり服を着て欲しいと言ってるんだ!」
シャツの端を持ってヒラヒラさせるが、ダンデはそんな私を見るまでもなく、赤い顔のまま声を上げた。
思った以上に恥ずかしがるダンデの様子が面白くて、私の中の加虐心がくすぐられる。
タオルを首にかけて、ゆっくりとした足取りでダンデに近付くと、彼はあからさまに身を固まらせて更に顔を逸らした。
「私の家なんだから、どんな格好しててもいいじゃない」
「っ……だが、今はオレもいるんだぞ。男の前で、そんな格好をするのは……」
「誘ってる、って思われちゃう?」
ダンデの目の前に立ち、そのまま片膝をダンデの脚の間に滑り込ませる。
両手で彼の肩を軽く掴んだら、ぴくりと肩が跳ねるのがわかった。
「ばかな人ね。……誘ってるのよ?」
「……!」
耳元で、とびきりに甘くささやいて、耳たぶをかぷりと唇で食む。
舌先でチロチロ舐めれば、すぐそばで息を飲む気配がした。
行き場をなくした彼の手が私の腕を掴んで引き離そうとしたけど、力が入っていないから大した抵抗になっていない。
だから、まだ離れてあげないわ。
「ねぇダンデ。貴方にこんなことをする私はきらい?」
「そ、そんなことは……」
「あら、そう? じゃあいいじゃない」
「……なにがいいんだ」
いいことなんて、何ひとつないだろ。
真面目で堅物な彼はそう言って、ちらりと私に視線を向けた。
私を見る金色はなんだか悲しそうで、そして怒っているような気がして、思わず私のほうが目を逸らしてしまった。
なんだか、さっきと彼の様子がちがう。
なんとなくそう感じてダンデから離れようとしたら、腕を掴まれていた手に力を込められて、逃げることができなかった。
焦る私に、ダンデがため息混じりに口を開いた。
「なまえくん、昨日も言っただろう。キミには、もっと自分を大事にして欲しいと」
「そんなの……私の勝手じゃない。貴方には関係ないわ」
「そうか。……なら、オレも勝手にしていいんだな?」
瞬間、ぐらりと視界が激しく回って、私はダンデにソファへ押し倒されたのだと知る。
衝撃はさほどなかったから、多分手加減してくれたのだと思うけど、それでも彼がこんなことをするとは考えもしなかった。
驚いてダンデを見上げると、彼は怒りを隠そうともしない表情で私を見下ろしていた。
なんで、どうしてそんな顔で私を見るの?
私はなにも、悪いことはしてないのに。
「私のこと、きらいになった……?」
口をついて出た言葉は、想像以上に震えていた。
ダンデはまたため息をついて、その反応にすら何故かびくついてしまう。
「ちがうぞ、なまえくん」
「え……?」
「オレは、許せないだけだ」
ダンデの言葉に、思考が固まった。
いったい何を言ってるんだと、視線だけで訴える。
ダンデは一度視線を外して、それからまた私を見つめ直した。
「そうやって誘惑をするのが、オレにだけじゃないということが、オレは許せない」
…………え?
彼が私に向ける言葉が、ますます理解できない。
あまりのことに何も言えなくなってしまった私に、ダンデは更に口を開く。
「なまえくんは昨晩、オレに言っただろう? 寂しいから、複数の男とああいうことをするのだと。それが嫌なら、オレが寂しさを埋めてくれと。なまえくんが眠ったあと、オレは考えたんだ。どうしたらキミの寂しさが埋められて、キミに身体を大事にしてもらえるかを。そして、思いついたんだ」
頬に手が添えられる。
ダンデの紫色の長い髪がひと房、はらりと彼の肩から滑り落ちた。
「オレがなまえくんの恋人になればいいんだってな」