禁忌に触れた指先
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派遣先の職場は想像していたよりも過酷だった。毎日、職場と家の往復。帰ってきてからは腹を満たすだけの食事を摂り、泥のように眠ればあっという間に朝が来る。そして職場に向かい、また夜遅くまで働き続ける。そんな日々に真依子の心はすっかり擦り減ってしまっていた。
学生の頃は癒しを求めて季節のイベントがあるたびに大好きなテーマパークへ遊びに行っていたが、今はそんな時間の余裕もお金もない。そんな中、真依子の唯一の救いであり、鬱屈とした日常を忘れさせてくれるのは、画面の中に存在する「推し」の存在。肥大化した筋肉、露出した脳、四つんばいで床や壁を自由自在に這い回る素早い動き。そして長く強靭な舌と鋭く伸びた爪。それはバイオハザードに登場するクリーチャーのリッカーだった。
設定資料集を眺め、ゲーム画面を穴があくほど見つめる日々。一度でいいから本物のリッカーに触れてみたい。湿った皮膚の感触や、牙の隙間から漏れる息遣いをこの肌で感じてみたい。もし自分がゲームの中の主人公だったら……そんな妄想が真依子の頭の中をぐるぐると渦巻いていた。
そんなある日、いつも通り激務を終えた真依子は重い足取りで家に向かっていた。その途中、鈴をつけた黒猫が真依子の前に現れた。
「ニャー」
黒猫は可愛らしい声で鳴くと、まるで真依子を誘い込むようにちらりと後ろを振り返りながら路地裏へと入っていく。好奇心に駆られた真依子は黒猫の後ろを少し距離を置いてついて歩いた。すると突然、見慣れないレトロな駄菓子屋が真依子の前に現れた。『銭天堂』と書かれた看板。その入口に吸い寄せられるように店内へ足を踏み入れると、着物姿のふくよかな店主・紅子が店の奥で微笑んでいた。
「いらっしゃいませ」
「すごい……見たことないお菓子だらけ……」
店内の雰囲気に驚き、思わず言葉をつぶやく真依子。そんな真依子に紅子はすっと目を細めどこか怪しげな笑みを浮かべて話しかける。
「本日の幸運なお客様。こちらなどはいかがでござんしょう?」
紅子が開いた手のひらに乗っていたのは、『立体焼き』と書かれた小さなたい焼きだった。
「これは絵や画面の中にあるものを、そのまま立体として現実に取り出すことができる代物でござんす。お題は一円……」
「い、一円!?」
「ただし、使う時は立体にする物をよく考えて選ぶように……万が一間違えたとしても取り返しがつきませんから……」
紅子の話とその破格の値段を聞き、迷いなく財布の中から一円を出し紅子へ手渡す真依子は、購入した『立体焼き』を手に急いで家に帰った。
家につき、『立体焼き』の袋を開ける。すると、一円で購入した代物とは思えないほどに香ばしい香りが真依子の鼻をくすぐった。
「いただきます」
【衝動的に齧りつく】
【今一度よく考えてみる】
学生の頃は癒しを求めて季節のイベントがあるたびに大好きなテーマパークへ遊びに行っていたが、今はそんな時間の余裕もお金もない。そんな中、真依子の唯一の救いであり、鬱屈とした日常を忘れさせてくれるのは、画面の中に存在する「推し」の存在。肥大化した筋肉、露出した脳、四つんばいで床や壁を自由自在に這い回る素早い動き。そして長く強靭な舌と鋭く伸びた爪。それはバイオハザードに登場するクリーチャーのリッカーだった。
設定資料集を眺め、ゲーム画面を穴があくほど見つめる日々。一度でいいから本物のリッカーに触れてみたい。湿った皮膚の感触や、牙の隙間から漏れる息遣いをこの肌で感じてみたい。もし自分がゲームの中の主人公だったら……そんな妄想が真依子の頭の中をぐるぐると渦巻いていた。
そんなある日、いつも通り激務を終えた真依子は重い足取りで家に向かっていた。その途中、鈴をつけた黒猫が真依子の前に現れた。
「ニャー」
黒猫は可愛らしい声で鳴くと、まるで真依子を誘い込むようにちらりと後ろを振り返りながら路地裏へと入っていく。好奇心に駆られた真依子は黒猫の後ろを少し距離を置いてついて歩いた。すると突然、見慣れないレトロな駄菓子屋が真依子の前に現れた。『銭天堂』と書かれた看板。その入口に吸い寄せられるように店内へ足を踏み入れると、着物姿のふくよかな店主・紅子が店の奥で微笑んでいた。
「いらっしゃいませ」
「すごい……見たことないお菓子だらけ……」
店内の雰囲気に驚き、思わず言葉をつぶやく真依子。そんな真依子に紅子はすっと目を細めどこか怪しげな笑みを浮かべて話しかける。
「本日の幸運なお客様。こちらなどはいかがでござんしょう?」
紅子が開いた手のひらに乗っていたのは、『立体焼き』と書かれた小さなたい焼きだった。
「これは絵や画面の中にあるものを、そのまま立体として現実に取り出すことができる代物でござんす。お題は一円……」
「い、一円!?」
「ただし、使う時は立体にする物をよく考えて選ぶように……万が一間違えたとしても取り返しがつきませんから……」
紅子の話とその破格の値段を聞き、迷いなく財布の中から一円を出し紅子へ手渡す真依子は、購入した『立体焼き』を手に急いで家に帰った。
家につき、『立体焼き』の袋を開ける。すると、一円で購入した代物とは思えないほどに香ばしい香りが真依子の鼻をくすぐった。
「いただきます」
【衝動的に齧りつく】
【今一度よく考えてみる】
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