特別な関係
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
新たな改良データを構築するため、定期的にリッカーの血液サンプルを採取する日がある。数名いる研究員の中から、その危険な役目に選ばれるのは、いつも決まってティナだった。理由は単純。リッカーがなぜか、彼女にだけは一切の敵意を向けないからだ。ティナがこの研究所に配属される前は、飼育室に催眠ガスを充満させてリッカーたちを完全に眠らせてから採血を行っていた。彼女が来てからはその薬代が丸ごと浮いて好都合だと、上司は下卑た笑い声を上げて喜んでいた。
「よし、これで全員分、採り終わったかな」
冷たい試験管に満たされた赤黒い血液。ティナは個体数とサンプルの数を確認し、それらを丁寧にプラスチックケースに収めた。カチャリ、と静かなケースの閉まる音が響いた瞬間、その様子をじっと窺っていた一体のリッカーが、滑るような素早さで床を蹴り、ティナの目の前まで小さく跳躍した。
「――ッ!?」
凄まじい風圧とともに、目の前に迫る赤い肉塊。リッカーはティナの肩に軽く前肢をかけ、体重を預けるようにしてすり寄ってきた。
「もう、急に飛びつかないでっていつも言ってるでしょう?」
ティナが軽く叱るように言うと、リッカーはきゅぅ、と喉の奥から切ない小犬のような鳴き声を漏らした。そして、さきほど注射針を刺した前肢をティナの膝にそっと乗せ、首を傾げて見せる。
(ほら、いい子にしてたよ。だから褒めて)
眼球のない異形の頭部が、熱を帯びた歯列の揃う口元をティナの首元にしつこく押し当ててくる。ティナは呆れたように息を吐き、小さくゴロゴロと喉を鳴らし始めたリッカーの剥き出しの頬を優しく撫でてやった。この一体は他の個体とは明らかに違っていた。ティナに対して執拗なまでの好意と甘えを見せてくるのだ。これはまだ、他の研究員たちも知らない二人だけの秘密だった。手のひらから伝わる体温に、リッカーは恍惚としたように身を震わせる。すると、その様子を羨ましそうに見ていた後方のリッカーたちが、じわじわと這いずりながら近づいてきた。自分たちもティナに愛でられたいのだと言わんばかりに、長い舌をちろちろと覗かせている。
「みんな、今日はいつもに増して積極的だね?」
ティナはふっと微笑み、近づいてきた別の個体にも手を伸ばそうとした。しかし、その指先が触れる前に目の前のリッカーの長い舌が鋭く伸びた。ティナの手首にねっとりと絡みつき、引き止めるように自分の方へと引き寄せる。突然の行動にティナが瞬きをした瞬間、リッカーは彼女の手を庇うように立ちはだかり、他の個体に向けて牙を剥き出しにしながら、空気を震わせるほどの咆哮を放った。鼓膜を突き刺すような威嚇の猛り。その圧倒的な力に怯えたように、近づいてきたリッカーたちは反撃することもなく、すごすごと天井や壁の闇へと這い戻っていく。この一個体は、群れの中でも一際強い力を持っているようだった。ティナは苦笑いしながら、その独占欲の強さに内心で舌を巻く。
「そんなに意地悪しないであげて。みんな仲間でしょう?」
そう言うティナの声を無視してリッカーは彼女に向き直った。ずるりと長い舌を引き戻し、口角を吊り上げるようにして、楽しげに喉を鳴らす。そして、まるで「待て」をされた犬のように、ティナの正面できちんと座り直した。ハァハァ、と荒い吐息がリッカーの裂けた口元から漏れる。興奮しているのか、生温かい涎が一滴、ぽとりと糸を引いて床へ滴り落ちた。じっと見つめてくるような見えない視線。ティナの唇を小突くように優しく頭を寄せ、それから高い声で甘えるように鳴いた。
言葉はなくとも、その熱い要求は嫌というほど伝わってきた。
周囲では、退けられた他のリッカーたちが、天井や壁をやきもきとした様子でソワソワと這い回っている。その包囲網のような空気に耐えかねて、ティナは諦めたようにため息をこぼし、リッカーの口元へ軽く自身の唇を重ねた。
その瞬間、飼育室の静寂を破り、リッカーの喉から歓喜の奇声が響き渡った。物足りないとばかりに、リッカーの頑強な前肢がティナの肩を突き飛ばす。背中が冷たい金属の壁に叩きつけられた。逃げ道を塞がれ、見上げるほどの巨体に押し潰される。驚きに目を見開いたティナの隙を突き、リッカーはぬるりと濡れた、驚くほど熱い舌を彼女の口内へとねじ込んできた。
「んんっ……ッ! や、ん、んぐっ……!」
強引に抉るようにうねる舌。苦しさに耐えかねて必死に鼻や喉で息を吸おうとするたび、腐肉と鉄が混ざり合ったようなむわりとした臭気が直接喉の奥へと流れ込んでくる。酸素を求める呼吸そのものが肺を濃厚な異臭で満たし、頭を酷く眩ませていった。
(もっと奥まで、満たしたい)
そんな本能が突き動かしているのか。リッカーは舌を止めることなく、さらにその先へ、抵抗するティナの喉の奥へと強引に侵入を試みた。
「あ、ぐ……っ、ん、ぅっ!!」
喉の奥まで侵食してくる異物感に、ティナが思わず激しくえずく。苦しげに涙目で首を振るが、リッカーは構うことなく、ただそこにある『穴』を埋めるように、さらに深く、容赦なくその長い舌をねじ込んでくる。まるで彼女の喉の奥にある深い闇さえも、自分の体の一部で塗りつぶそうとするような執拗な侵略。
「ごふっ、んっ……ぅ、ぅぐ……ッ!!」
苦しさで全身が硬直する。酸素を奪われ、視界が白く明滅するほどの強烈な接触。異物を押し返そうとティナの喉は無意識に収縮し、リッカーの舌を締め付ける。しかしリッカーはその感触を、恍惚とした様子で喉を鳴らしながら楽しんでいるようだった。
自ら重ねた口づけ。けれど、返ってきたのは甘い愛撫などではなく、抗いようのない暴力的な質感だった。「大丈夫」と自分に言い聞かせる意識すら、ぬめりを帯びた肉の厚みと、口腔を隙間なく埋め尽くす容赦のない質量に呑み込まれていく。受け止めたいと願う感情を置き去りにして、喉の奥まで侵入してくる熱い蠢きに、脳と肉体が本能的な拒絶とパニックを起こしていく。ただ必死に、その異質な温もりに耐えることしかできなかった。
「ぅ、あ……がっ……ぅうっ……」
考えることすらできなくなり、ティナの思考と意識が限界を迎える頃、リッカーはようやく満足したのかズルリと素早く舌をその口に引き戻した。喉から長い異物が一気に引き抜かれ、その反動でティナの体はビクリと大きく跳ねる。
そのまま冷たい床に仰向けで寝転がり、しばらく動くことができなかった。喉の奥に残った違和感を抱え、何度か嗚咽の混ざった咳を吐き出し、やっとの思いで起き上がると、顎を伝うベットリとした涎を白衣の袖で拭った。
解放されたティナは、赤く染まった頬を震わせ、酸素を求めてひどく乱れた呼吸を整える。それなのにリッカーはまだ足りないとばかりに、荒い息を吐きながらティナの太ももにその大きな頭部を擦りつけてきた。太ももの肉を押し潰すように滑らせるその仕草。それは、雄としての本能が求める次なる欲求を彼女に察してほしいと問いかけるような、切実で執拗な強請だった。
ストッキング越しに伝わる熱情。彼が何を望んでいるのかを理解してしまった瞬間、背筋に冷たいものが走る。これを受け入れてしまえば、研究員と実験体という一線を完全に踏み越え、二度と後戻りはできなくなる。触れられている場所から広がる熱に眩暈を覚えながらも、ティナは逃げ出すために必死で思考を巡らせ始めた。
本能的な危機感が力無く横たわっていたティナの身体を突き動かした。脚の隙間に身体をねじ込ませようとするリッカーから逃げるよう身をかわし、重い二重扉の開閉スイッチに手を伸ばす。ゆっくりと開かれる扉の隙間に一刻も早くと体を滑り込ませ、外へと飛び出した。
張り詰めた胸を撫で下ろし、乱れる心音を抱えながらハッチの分厚いガラス窓から中を覗き込むと、リッカーはティナが戻ってくるのを期待しているのか、首を傾げたままドアのすぐ前で大人しく座り込んで待っていた。しかし数秒後、他の個体たちから「抜け駆けの仕返し」と言わんばかりの襲撃を受け、リッカーは獰猛な咆哮を上げて、視界の奥の暗闇へと飛び去っていった。
冷たい通路に取り残されたティナは、まだ熱を持ったままの自身の唇にそっと指先を触れ、乱れた衣類を整えながら、深く吐息を漏らす。そして自分の中に目覚めつつある雌の本能を理性で抑え込むように血液サンプルの入ったケースを胸に抱きかかえ、急ぎ足で研究室へと戻るのだった。
end.
「よし、これで全員分、採り終わったかな」
冷たい試験管に満たされた赤黒い血液。ティナは個体数とサンプルの数を確認し、それらを丁寧にプラスチックケースに収めた。カチャリ、と静かなケースの閉まる音が響いた瞬間、その様子をじっと窺っていた一体のリッカーが、滑るような素早さで床を蹴り、ティナの目の前まで小さく跳躍した。
「――ッ!?」
凄まじい風圧とともに、目の前に迫る赤い肉塊。リッカーはティナの肩に軽く前肢をかけ、体重を預けるようにしてすり寄ってきた。
「もう、急に飛びつかないでっていつも言ってるでしょう?」
ティナが軽く叱るように言うと、リッカーはきゅぅ、と喉の奥から切ない小犬のような鳴き声を漏らした。そして、さきほど注射針を刺した前肢をティナの膝にそっと乗せ、首を傾げて見せる。
(ほら、いい子にしてたよ。だから褒めて)
眼球のない異形の頭部が、熱を帯びた歯列の揃う口元をティナの首元にしつこく押し当ててくる。ティナは呆れたように息を吐き、小さくゴロゴロと喉を鳴らし始めたリッカーの剥き出しの頬を優しく撫でてやった。この一体は他の個体とは明らかに違っていた。ティナに対して執拗なまでの好意と甘えを見せてくるのだ。これはまだ、他の研究員たちも知らない二人だけの秘密だった。手のひらから伝わる体温に、リッカーは恍惚としたように身を震わせる。すると、その様子を羨ましそうに見ていた後方のリッカーたちが、じわじわと這いずりながら近づいてきた。自分たちもティナに愛でられたいのだと言わんばかりに、長い舌をちろちろと覗かせている。
「みんな、今日はいつもに増して積極的だね?」
ティナはふっと微笑み、近づいてきた別の個体にも手を伸ばそうとした。しかし、その指先が触れる前に目の前のリッカーの長い舌が鋭く伸びた。ティナの手首にねっとりと絡みつき、引き止めるように自分の方へと引き寄せる。突然の行動にティナが瞬きをした瞬間、リッカーは彼女の手を庇うように立ちはだかり、他の個体に向けて牙を剥き出しにしながら、空気を震わせるほどの咆哮を放った。鼓膜を突き刺すような威嚇の猛り。その圧倒的な力に怯えたように、近づいてきたリッカーたちは反撃することもなく、すごすごと天井や壁の闇へと這い戻っていく。この一個体は、群れの中でも一際強い力を持っているようだった。ティナは苦笑いしながら、その独占欲の強さに内心で舌を巻く。
「そんなに意地悪しないであげて。みんな仲間でしょう?」
そう言うティナの声を無視してリッカーは彼女に向き直った。ずるりと長い舌を引き戻し、口角を吊り上げるようにして、楽しげに喉を鳴らす。そして、まるで「待て」をされた犬のように、ティナの正面できちんと座り直した。ハァハァ、と荒い吐息がリッカーの裂けた口元から漏れる。興奮しているのか、生温かい涎が一滴、ぽとりと糸を引いて床へ滴り落ちた。じっと見つめてくるような見えない視線。ティナの唇を小突くように優しく頭を寄せ、それから高い声で甘えるように鳴いた。
言葉はなくとも、その熱い要求は嫌というほど伝わってきた。
周囲では、退けられた他のリッカーたちが、天井や壁をやきもきとした様子でソワソワと這い回っている。その包囲網のような空気に耐えかねて、ティナは諦めたようにため息をこぼし、リッカーの口元へ軽く自身の唇を重ねた。
その瞬間、飼育室の静寂を破り、リッカーの喉から歓喜の奇声が響き渡った。物足りないとばかりに、リッカーの頑強な前肢がティナの肩を突き飛ばす。背中が冷たい金属の壁に叩きつけられた。逃げ道を塞がれ、見上げるほどの巨体に押し潰される。驚きに目を見開いたティナの隙を突き、リッカーはぬるりと濡れた、驚くほど熱い舌を彼女の口内へとねじ込んできた。
「んんっ……ッ! や、ん、んぐっ……!」
強引に抉るようにうねる舌。苦しさに耐えかねて必死に鼻や喉で息を吸おうとするたび、腐肉と鉄が混ざり合ったようなむわりとした臭気が直接喉の奥へと流れ込んでくる。酸素を求める呼吸そのものが肺を濃厚な異臭で満たし、頭を酷く眩ませていった。
(もっと奥まで、満たしたい)
そんな本能が突き動かしているのか。リッカーは舌を止めることなく、さらにその先へ、抵抗するティナの喉の奥へと強引に侵入を試みた。
「あ、ぐ……っ、ん、ぅっ!!」
喉の奥まで侵食してくる異物感に、ティナが思わず激しくえずく。苦しげに涙目で首を振るが、リッカーは構うことなく、ただそこにある『穴』を埋めるように、さらに深く、容赦なくその長い舌をねじ込んでくる。まるで彼女の喉の奥にある深い闇さえも、自分の体の一部で塗りつぶそうとするような執拗な侵略。
「ごふっ、んっ……ぅ、ぅぐ……ッ!!」
苦しさで全身が硬直する。酸素を奪われ、視界が白く明滅するほどの強烈な接触。異物を押し返そうとティナの喉は無意識に収縮し、リッカーの舌を締め付ける。しかしリッカーはその感触を、恍惚とした様子で喉を鳴らしながら楽しんでいるようだった。
自ら重ねた口づけ。けれど、返ってきたのは甘い愛撫などではなく、抗いようのない暴力的な質感だった。「大丈夫」と自分に言い聞かせる意識すら、ぬめりを帯びた肉の厚みと、口腔を隙間なく埋め尽くす容赦のない質量に呑み込まれていく。受け止めたいと願う感情を置き去りにして、喉の奥まで侵入してくる熱い蠢きに、脳と肉体が本能的な拒絶とパニックを起こしていく。ただ必死に、その異質な温もりに耐えることしかできなかった。
「ぅ、あ……がっ……ぅうっ……」
考えることすらできなくなり、ティナの思考と意識が限界を迎える頃、リッカーはようやく満足したのかズルリと素早く舌をその口に引き戻した。喉から長い異物が一気に引き抜かれ、その反動でティナの体はビクリと大きく跳ねる。
そのまま冷たい床に仰向けで寝転がり、しばらく動くことができなかった。喉の奥に残った違和感を抱え、何度か嗚咽の混ざった咳を吐き出し、やっとの思いで起き上がると、顎を伝うベットリとした涎を白衣の袖で拭った。
解放されたティナは、赤く染まった頬を震わせ、酸素を求めてひどく乱れた呼吸を整える。それなのにリッカーはまだ足りないとばかりに、荒い息を吐きながらティナの太ももにその大きな頭部を擦りつけてきた。太ももの肉を押し潰すように滑らせるその仕草。それは、雄としての本能が求める次なる欲求を彼女に察してほしいと問いかけるような、切実で執拗な強請だった。
ストッキング越しに伝わる熱情。彼が何を望んでいるのかを理解してしまった瞬間、背筋に冷たいものが走る。これを受け入れてしまえば、研究員と実験体という一線を完全に踏み越え、二度と後戻りはできなくなる。触れられている場所から広がる熱に眩暈を覚えながらも、ティナは逃げ出すために必死で思考を巡らせ始めた。
本能的な危機感が力無く横たわっていたティナの身体を突き動かした。脚の隙間に身体をねじ込ませようとするリッカーから逃げるよう身をかわし、重い二重扉の開閉スイッチに手を伸ばす。ゆっくりと開かれる扉の隙間に一刻も早くと体を滑り込ませ、外へと飛び出した。
張り詰めた胸を撫で下ろし、乱れる心音を抱えながらハッチの分厚いガラス窓から中を覗き込むと、リッカーはティナが戻ってくるのを期待しているのか、首を傾げたままドアのすぐ前で大人しく座り込んで待っていた。しかし数秒後、他の個体たちから「抜け駆けの仕返し」と言わんばかりの襲撃を受け、リッカーは獰猛な咆哮を上げて、視界の奥の暗闇へと飛び去っていった。
冷たい通路に取り残されたティナは、まだ熱を持ったままの自身の唇にそっと指先を触れ、乱れた衣類を整えながら、深く吐息を漏らす。そして自分の中に目覚めつつある雌の本能を理性で抑え込むように血液サンプルの入ったケースを胸に抱きかかえ、急ぎ足で研究室へと戻るのだった。
end.
1/1ページ