「リュミエール、あまりお嬢ちゃんを不安にさせるようなことは言うもんじゃない」
「いえ、わたくしはあくまで一般論として…」
「あー、ですが、殺されたのは知らないかただったんですよね? だったら、それはないと私は思うんですがねぇ」
相変わらず、のんびり口調のルヴァである。
「なんにせよ…犯人は彼女が顔を見ていたかどうかまでは知らないのではないのか? ならば、ねらわれるかのうせいはじゅうぶんあるはず…。そうではないのか、ジュリアス?」
今日のクラヴィスは、ずいぶんやる気なようだ。
「だが、それをいうのならば、犯人とておなじことではないか?」
と返すジュリアスに、オスカーが問う。
「どういうことですか?」
「つまり、犯人が彼女の…
七子の顔を見た、ということだ」
その1言で、ぜんいんの視線が、
七子にあつまる。
「それは、まちがいないと思います…。実は…」
彼女がとりだしたのは予告状のようなもので、それにはこう書いてあった。
†鳥が嘆き哀しむ刻限、
少女の瞳と身体は紅く燃え上がる。
その刹那、13の鐘が鳴り、地獄の淵が口を開けて少女を待つ。†
†天は慟哭をあげ、鳥は鎮魂の儀を執り行う。
そして、お前と私は一つになる。†
‡‡地獄の帽子屋‡‡
「…エルンストからあずかっている予告状にも、おなじようなことが書いてありましたね…」
エルンストとは、彼らがいつも世話になっている警察署の捜査一課課長である。
「ルヴァさま…! それは本当ですか?」
「よし。オスカー、オリヴィエ、リュミエールは
ライカの警護に当たってくれ。私たちはこの"地獄の帽子屋"とやらについて、調べてみよう。」
「今日からしばらくのあいだ、お嬢ちゃんの住まいはここだ。まあ、自分の家だと思って好きなように使ってくれ」
案内されたのはなかなか豪華なマンションで、どうやらこの3人…リュミエール・オスカー・オリヴィエの住まいらしい。
「え? でも私、寮長になにも言ってませんし…」
「ああ、心配いらないよ。あそこの現学園長殿と、知り合いなんだ。たぶん、許可とってあるはずだよ」
学園長……たしかあのライトグリーンの髪と茶色がかった黄緑色の瞳の、独特の方言の人……。
なんでそんな人と知り合いなのかしら? とは言わず。
「ならいいんですけど…」
「それから、犯人が捕まるまでは私たちがあんたの学校にもぐりこめるようてはいしてくれるってさ。」
「ええっ!? ど、どうやってですか??」
どう見たって、20歳はすぎているようにしか見えないのに。
「臨時講師とでも、言うのではないでしょうか? まさか、生徒…なんてことはないと思いますよ。」
「いや、ルヴァの作戦だったら、ありえるかもよ?」
「いくらルヴァでもそれはないだろう。まあ、リュミエールの意見が、1番妥当だろうな」
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