貞ちゃん歓迎会のよいんもふけきれないまま、どんちゃんさわぎをしていた次郎や
蜻蛉切、不動
行光さえも寝しずまったころ。
夜中にふと目をさますと、同室のものは全員眠っているようだ。とりあえず厠に行こうと、しずかにふとんから抜けでる。
(あれは…
七子か…?)
星空のした、ましろい着物と、赤い袴をきた少女がたたずんでいる。少女というか女性は、この本丸には、
七子しかいないはずだ。
「あ…」
あの、と声をかけようとして、だがとまる。その瞳に、涙のようなものが見えたから。
「おかあさん、この本丸に、また新しい刀がきましたよ。…けど、もう私の霊力は限界かもしれません。政府から、あたらしい審神者が派遣されてくると、連絡がありました…」
「どういうことだ? ここの人たちにとって、主はきみだけなんだろう?」
はじかれたかのように、氷河をふりかえる。
「…審神者は、その霊力によって刀剣男士を人間のすがたにしているの」
だが彼女の場合、もともと霊力は弱いほうで、今まではなんとか霊力をあげるサプリなどを使ってたもってきた。だがそれも、そろそろ限界がちかい。
「ないものをあるようにするのだから、ちいさいうつわに、むりに水を入れようとするのとおなじ」
政府もそれに気づいており、あたらしい審神者と、任を代わるようにとの通達があった。
「完全に限界がきてしまうまえであれば、審神者は交代できる。けど、私が完全にだめになってしまってからでは、おそい」
「…もし、完全にだめになってしまったら、どうなる…?」
「私は、神隠しにでもあったかのように、ここから消えてなくなるわ」
そうなれば、刀剣男士もいっしょに消えてしまうだろう。せっかくあげた練度も、無意味に終わってしまうのだ。
「まえから、そんな気配はあったから、かくごはしてたけど…。意外にはやくやってきちゃって、ちょっとセンチになってたとこ」
「…
七子…」
無意識にのばした手は、
七子をとらえる。抱きしめてしまったのだと気づいたが、案外そのぬくもりがここちよくて、はなさなくてもいいか。という気分になった。
「…氷、河…?」
「この約1ヶ月、気づいたらオレは…
七子を見ていた…」
「…え…?」
「もしもかなうなら、このままきみを…連れさってしまいたい…」
その刹那、なにかがはじけるような音がして、2人のまわりを光が舞う。走馬灯のように、母がいたころの本丸が見えた。母と……鶴丸が、仲むつまじくしているのも。
そこにいる母は本当にしわあせそうで、鶴丸もまた、おなじようにしあわせそうな顔をしている。
──ああ、そうか、私のおとうさんは……。
映像を見ていて、ふとそこまで考えがいたったたところで、
攸日の意識はとぎれた──。
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お題バトン