今夜は貞ちゃんの歓迎会ね、とうれしそうにこぼす審神者について、太鼓鐘は本丸を案内されにむかう。部屋は、伊達の刀といっしょになるらしい。
「おい、これ以上ふえたら、いくらなんでもきゅうくつだ。俺は、べつの部屋で寝る」
「なに言ってんだよ、伽羅ちゃん。せっかくひさびさに再会したんだからさ、つもる話しもあるだろ?」
「…俺にはないな」
「伽羅ちゃんってば、あいかわらずつれないねえ。貞ちゃん、伽羅ちゃんはすなおじゃないから、貞ちゃんがきてうれしいって言えないんだよ」
やいのやいのいいあいながらも、たのしそうな伊達組に、審神者も笑う。
「ところで、あの人たちは? なーんか、刀剣男士じゃないっぽいけど…」
「ああ、貞ちゃんには、まだ説明してなかったね。あの人たちはわけあって、うちの本丸で暮らしているのよ。たいせつな仲間でもあるから、仲良くしてね」
「仲間かー、なら、心配ないな! ちょっと自己紹介してくる!」
あれだけあかるく、すなおそうな太鼓鐘のことだ。すぐに、みなとうちとけてしまうだろう。
「貞ちゃんって、ちょっとイメージとちがうかも。もっとこう、おちついた子かと思ってた。すなおであかるくて、いい子そう」
「うん、貞ちゃんはすなおだしあかるいし、ムードメーカーだよ。鶴さんと、ちょっと似てるかな。そのせいか、よく鶴さんといたずらしては、僕や伽羅ちゃんをこまらせてたね」
鶴丸を見ると、はっとしてからばつの悪そうな苦笑いをうかべる。
「たまに、やりすぎてな。光坊にめちゃくちゃしかられる」
「あんたはいつだって、極端すぎるんだ。ちいさなことにおどろいたかと思えば、突然でかいおどろきがほしいと、ろくなことをしない」
日常のささいなことにおどろいては「こういうちいさなおどろきも、おつなもんだ」と言っていたかと思えば、おどろきがたらない! と、さまざまないたずらをしかけてくる。それが、この本丸の鶴丸国永だ。
「よそさまじゃ、おとしあなほったりするそうですよ、鶴さんは」
「うちの鶴さんは、そこまではしないよね、そういえば…」
「いや、なに…。やったことは、あるんだぜ? ただなあ…。みずからはまったあげく、まえの主にこっぴどくしかられてな…。いらい、やっていない」
「…みずから落ちるって、鶴さん…」
「鶴さんのおとしあな禁止令なんて、母からも聞いてなかったな…」
自分であなにはまり、母にさんざんしかられる鶴丸がよういに想像できて、ちいさく笑ってしまう。
「さーて、それじゃ、腕によりをかけないとね! 貞ちゃんのために、今日はいつも以上にはりきって料理しちゃうよ!」
「おう、光坊の料理、たのしみだぜ!」
「…ずんだもちは、あるのか?」
審神者が思っていたよりも、伊達組は仲がいいらしい。ずんだを作るという燭台切に、伽羅がすこしだけ、うれしそうな顔をした。……ように、審神者には見えた──。
→25・星矢、27・氷河、29・紫龍、31・瞬、33・一輝
お題配布元:
紅に沈む