「あ、ねえ、おなかすかない? さっきあそこで、おいしそうなクレープ屋さん見つけたんだけど、1人じゃ行きづらくて…」
「ほんとですか!? 私、クレープだいすきなんですよ!」
「それならよかった。じゃあ、行こっか」
「はい!」
ぶなんにブラックチョコとバナナ、バニラアイスのクレープをたのんだ瞬の横で、
七子はソーセージとレタスのサラダ系クレープをたのんでいる。これってちょっと、立場が逆じゃないかな? と苦笑いしている瞬を気にもせず、マイペースにすわる場所を物色しはじめる
七子。
(なんか、変わった子だなあ…)
世間一般の女の子といえば、はやりのハデな服を身にまとってみたり、イケメンと見ればさわいでみたり。偏見かもしれないが、そんなイメージが強い。実際、瞬のまわりにいた女の子といえば、そういう子がおおかった。もちろん、沙織はふくまないで、の話しだが。
(マイペースというか、わが道を行くタイプなんだろうな。自分の道を、まっすぐにしっかり歩いている、というか)
自分をしっかり持っているという意味では、とてもいいことだろう。だが、周囲にはなじめず、社会では苦労しそうだ。まあ彼女の場合、すでに審神者として働いているので、その心配はないだろう。
考えごとをしながら食べているうちにも、時間はすぎて行くものだ。それに、本当においしそうに食べている
攸日を見ていたら、そんなことはどうでもいいのではないか。きっとこういうすなおな彼女だからこそ、あれだけの刀剣男士がだまってついてくるのだろう。そんな気がしてきた。
「あー、おいしかったー」
「
七子は、本当においしそうに食べるよね」
「そうですか? 食べることにこだわりはないけど、おいしいものはおいしく食べないと、作った人にしつれいかなって。まずくなくてきらいなものでなければ、なんでも食べるけど…」
やはりこういうすなおな彼女だからこそ、あれだけの刀剣男士がだまってついてくるのだろう。
「きみは、それでいいんだと思うよ。まだ知り合って2日だけど、僕はそのままのきみのほうが好きだな」
「そうですか? 変わった考えかただ、ってよく言われるけど。人がどう見ていようが、私は私だもの」
たしかに変わった考えかただ、と片づけてしまえば、かんたんなことだろう。だがそれも、彼女の個性であろうに。
「歌仙さんとかには、よくしかられます。特に食べることをわすれてるときとか、よけいに」
「それはまあ、ふつうにおこられると思うよ」
心配されているからこそのおしかりただろうとは思うが、そもそも食べることをわすれるというのは、どうなのだろうか。
「最悪、なにも食べないでも生きては行けるんだ」
「それは、だめだよ。食べるものは、ちゃんと食べないと」
「えー…」
会話をしているうちに見えてきた堀川に、迷子になった審神者がおこられるまで、あと数秒。
→
お題配布元:
虹色の調べ