「
七子さん、こっちだよ!」
「え…?」
ぽやーんとはしているものの、変なところは運がいい。それがこの、
七子という審神者である。腕をひかれ、腕のぬし……瞬の顔を見、すこしだけほっとした顔になる。
「堀川さん、だったっけ? 彼といっしょにいたんじゃないの? 1人になって、へいき?」
「それが…その…。お手洗いに行って、迷子になりました…」
真顔でそうかえされ、瞬がポカーンとする。だがすぐにはっとして。
「ここ、なれたお店じゃないの…? 迷子になったって…え…?」
「いえ、それが…。ここはくるたびにさまがわりしてるので、なれたようでいて、実はなれてないんです。いつものルートからちょっとだけはずれたら、みごとに迷子です…」
笑いそうになるのをひっしにこらえ、口もとをおさえる。
「きみって、なんていうか、結構おもしろい人だったんだね…」
「私は、いたって大まじめなつもりなんですが…。よく言われます、不本意ながら…」
ふだんはしっかりしているのに、こうしたことをよくやってしまう。そのせいなのか、刀剣男士たちにもよく天然認定をされてしっている。本人はまったくもって、大まじめにぼけているのだが。というか、ぼけているつもりなど、これっぽっちもないわけで。
「天然かあ。たしかに、そんな感じがします。ふだんはしっかりしてるっぽいのに、ちょっと抜けてるのかなって」
「むう、しつれいな。ときどき、ちょっとばかりぬけてるだけですよ」
いよいよもってふきだしそうになり、こまったように笑う瞬。
「いや、それたぶん、自分で言っちゃだめだと思うけどな…」
「え、そうですか? 今まで天然認定を否定すると、かなりのかくりつで、天然と決めつけられたので…」
すこしだけではあるが笑っている瞬に、苦笑をかえすしかない。
「ところで、きみを追ってきていた人は、知り合いなの?」
「あ、やっぱりだれかいたんですか…。いえ、たぶん…かくじつにちがいます。お手洗いからずっと、あとをつけられているような気がして、気のせいかとさまよっていて迷子に…。でも、瞬さんがここにいてくれて、ほんっとにたすかりました」
あのままおいかけられたままでは、どうしていいかわからずに、ただとほうにくれていただろう。
「そうだったんだ。役にたててよかった。…あ、そうだ。瞬さん、なんて他人行儀だから、きがるに瞬って呼んでね。敬語とかも、気をつかわれてるみたいだから、いらないよ?」
笑顔でそう言われ、きょとんとしてしまった。
「え、あ、でも…まだ知り合ったばかりだし…。それにこれ…敬語は、ある種のくせなんですよ。でも、瞬さ…瞬…がそういうのなら…そうさせてもらいま…もらうね」
「うん、そうしてよ。そのほうが僕も気が楽だし。僕もこれからは、きみのことを
七子って呼ぶよ」
すこし目をひらいてから、照れたようにはにかむ
七子に。
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お題配布元:
文章想像バトン3