「あれ、
七子さん?」
「あ、星矢さん…」
ぽやーんとしているが、変なところで運のいい
七子。星矢の顔を見て、すこしだけほっとする。
「堀川さん、だっけ? いっしょにいたんじゃないのか?」
「1人でお手洗いに行くついでに、しっかり迷子になりました」
真顔で言われ、星矢がふきだす。
「ここ、なれた店なんじゃないのかよ…!」
「いえ…。くるたびにさまがわりしてるので、なれたようでいて、実はなれてないんですよね。いつものルートからはずれたら、みごとに迷子です」
「きみ、結構おもしろい人だったんだな…ははっ」
「私は、いたって大まじめのつもりなんですが…」
ふだんはしっかりしているのに、こうしたことをよくやる。そのために、刀剣男士たちにもよく天然認識をされてしまう。本人はまったくもって、大まじめにぼけている。というか、ぼけているつもりなど、これっぽっちもないのだが。
「天然ねえ。たしかに、そんな感じだ」
「しつれいな。ときどき、ちょっとばかりぬけてるだけですよ」
「いや、それ自分で言っちゃだめだろ」
「そうですか?」
まだすこし笑っている星矢に、苦笑をかえす。
「ところで、きみを追ってきてたやつは、知り合いかい?」
「あ、やっぱり…。いえ、たぶんちがいます。お手洗いからずっと、あとをつけられているような気がして、さまよっていて迷子になったので…。でも、星矢さんがいてくれて、ほんとたすかりました」
「なるほどな。…あ、そうだ。星矢さん、なんて他人行儀に呼ばなくていいぜ? きがるに、星矢って呼んでくれよ。敬語とかも、いちいちめんどうだ。タメ口でいいんだぞ?」
「え、でも、たとえ1つでも年上は年上ですし…。それにこれ…敬語は、ある種のくせなんですよ。でも、星矢さ…星矢…がそういうなら…そうさせてもらいますね」
「おう、そのほうがオレも、気が楽だ。そうしてくれ。オレも、
七子って呼ぶからさ」
星矢の提案で、すこしだけ休憩するために、目についた喫茶店へ。こんなものまであるとは、よろず屋とは名ばかりの、まさにショッピングモールである。未来はいろいろとすごいなと、星矢はただ、歓心しどおしだ。
「ここは都会なほうですから、母の故郷に行くと、ぜんぜんちがいますよ。田舎なので、なんにもないです。自然があるだけで。…といってもその自然すらも、政府の管理下にある、人工的なものですが…」
1度ほろんでしまった自然を、完全にもとにもどすことなどできない。それは、この数百年で証明された。人間の力など、しょせんは自然の前では無力なのである。
「人間は、おろかです。でも、だからこそ、やりなおすことができる。そのためには、過去をきちんと守らなければならない。そのための戦を、私たちはしている」
「強いんだな、
七子は」
「いえ、弱いんです。だからこそ、戦うんです」
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お題バトン