「主君にお客さまだなんて、めずらしいですね!」
「あはっ、なんか、強そうなお兄さんたちだね! 僕と乱れたいの?」
「乱、大将がしつれいのないように、って言ってたのわすれたのか? 悪いな、俺っちの兄弟が」
「すみません、わが弟たちは人数が多いもので、個性的なのですよ」
秋田藤四郎・乱藤四郎・
薬研藤四郎・
一期一振が、つぎつぎ声をかけてくる。
「なんばしよっと?」
「でかいからって、いばんなよ!」
「あ、だめですよ、こちらは主君のお客さまで…!」
「しつれいのないように、言われているのです…!」
博多藤四郎・後藤藤四郎・平野藤四郎・前田藤四郎。藤四郎の名前から推察できるが、みな一期の兄弟刀である。ちなみに、藤四郎はあと4人、藤四郎ではない兄弟刀も2人いるとか。
「この本丸には、何人の刀剣男士がいるんですか?」
「えっーと、今はたぶん、52振だったかな。あ、1振っていうのは、人間でいうとこの1人とおんなじだから。あ、俺、信濃藤四郎」
「瞬、あまりふかいりするな。どうせ俺たちは、とおりすがりの存在なんだからな」
「兄さん…、もう…」
空き部屋を作ったからと、案内される。
「大所帯ですから、あまりしずけさは保証しかねますが、こちらを自由に使ってください。おふろは、大浴場を使ってくださってかまいません。
厠…お手洗いは、あちらです」
「すっげー、ひろい屋敷だぜ…。なあ、氷河…」
「あ、ああ…」
「うちは、人数だけは多いので。練度は、あんまりですけどね。母はちゃんとやってたようですが、私はまだまだ子どもというか、勉強することが多いので」
苦笑いをうかべると。
「ちょっと待てよ、あんた、いくつなんだ?」
「ちょっと、星矢! 女性に年齢訊くのは、しつれいすぎるよ!」
「だいじょうぶですよ。そんなに年じゃないし。ちなみに、13です」
「え、僕とおないどし…」
訊けば、星矢と紫龍、氷河は14歳、一輝もまだ15歳だという。おとなっぽいのか、とてもそうは見えないが。
「その年で52人もの男をたばねているとは、みあげたものだな」
紫龍の言葉に、すこしおどろいたような表情を見せる。
「そうですか? 私にとって彼らは仲間であり、たいせつな存在。だから、むちゃをさせたくない、傷ついたらなおしてあげる。私は私にできることを、せいいっぱいやってるだけです」
審神者は、自分で戦いにでられるわけではない。それを苦に思うことはあるが、できないことはどうにもならない。ならば、自分ができることを一生懸命してあげたい。それだけを考えてやってきた。
「私には、歴史修正主義者と戦う力はありません。ですから、のほほんと指示をだしているだけでいいのかと、葛藤したこともたくさんあります」
それでもいい。ここに主がいるから、彼らは帰ってくるのだ。そう言った刀剣は、だれだっただろう。
「人には、それぞれの役目がある。それをまっとうすれば、かならずみんなもついてきてくれる。そう、彼らはおしえてくれました」
主である自分にしかできないことが、彼らにはできない。それとどうじに、彼らにしかできないことが、自分にはできない。
「たりないものは、たがいにおぎないあえばいい。母にもそう言われて、ここをたくされましたから」
障子をあけながら、言葉をつむぐと。
「こちらの部屋をお貸ししますので、ご自由にお使いください。本丸内なら、どこでも自由に見てもらってかまいません。うちの男士たちにも、そのむねはつたえてありますので」
「いいのか、よそものの俺たちがうろついても。あの管ぎつねとやらの話しでは、あんたは時の政府という連中に、命令されただけだろう」
「に、兄さん…!」
「うちの男士たちは、よそものだなんてあつかいをするようなものではないですから、だいじょうぶです。好奇心から、いろいろお訊きするかもしれませんが」
うちの男士たちをバカにするなという意志が、目にあらわれている。
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お題配布元:
光と闇