翌日。昨日の侑士の言葉が気になって、それでもなんとか眠った私は、時間ギリギリに、待ち合わせ場所に到着。とうぜんながら、侑士はすでにきていて。
「おくれてごめん!」
「あぁ、気にすることない。俺も、今きたとこや」
これは侑士の、"優しいうそ"。
「ホント、ごめん!」
「ええって。今日は、べつの形でかえしてもらうつもりやしな」
侑士の笑顔が、とてもおそろしい……。
「ほな、行くで~」
ごきげんで私の手を引き、自分のマンションへと連れて行く。
「えんりょせんと、上がって」
「は、はぁ…。おじゃまします…」
なかに入るなり、何かの箱をわたされる。
「着替えてきて」
「な、なに何…これ…?」
「ええから、向こうで着替えてきてな」
笑顔で言われ、しかたなくとなりの部屋へと、箱を持って行く。箱のなかを見た私は、思わずぜっきょうしそうになり、口元を押さえた。
「なっ、何よこれ…!メイド服?」
それも、膝上15cmくらいの、超ミニ。ごていねいに、黒のヒモパンと、黒いストッキングに…ガーターベルトまで。もちろん、ブラも黒。
(これ…侑士がそろえたのかな、やっぱり…)
一体どんな顔で、これを買いに行ったのだろう。それを想像すると、少し笑えるけど。
(だけど…さすがにこれは…)
着れないよね……。かといって、逃げられそうにもないな……。
結局、覚悟を決めて。箱のなかの物をすべて、身につけた。
(にしても…このスカートのたけは…)
完全に、侑士の好みで選んだな。
(み、短すぎだよ!)
パニエをはいてるから、かろうじて、下着は見えないが。
(このまま侑士のまえに行ったら…)
えじきにされる!
「
七子?まだか?」
言いながら、入ってくるし。
「お、おお…!」
他に言うことはないのか、この男は。
「ええなぁ…」
舐めまわすように見られて、自分でもわかるほど、身体がほてる。
「侑士…も、もういいでしよ?」
「写真、撮らせてくれへんの?」
「…好きにして」
「よっしゃ! えんりょなく!」
侑士のことだから、許可しようがしまいが、撮影されるに決まってる。なら初めから、許可するにかぎるし。ただ、いろんな角度から何枚も撮られるから、気が気じゃない。
(お願いだから、スカートのなかはやめて…)
もっとも、自分で楽しむために撮ってるだけだから、よしとしてるんだけどね。
(これ…またかざる気だな…。てか、私の写真ながめて、なにをしてるやら…)
付きあいだして、はや早3年……。いまだに、なにを考えているのか、わからない。逆に、付きあえば付きあうほど、わからなくなる気がする……。
(おたくだよね、侑士って…まあ、私も人のことは言えないけど)
ゲームや漫画、ジャンルを問わず好きな私。その中から、彼はよく、なにかを借りていく。そして、かならずと言っていいほど、ハマる。趣味が合う……ということだろうか。
彼の部屋の状況を見てしまうと、言葉もない。しかも……私が同じことをすると喜ぶ。
(侑士って、やっぱ変…)
「どないしたん?」
いつの間にか手をとめ、見上げている。
「ううん。考えごとしてただけ。侑士のこと?」
「なんや…うれしいこと、言うてくれるやん」
抱きしめて、言う。
「俺、おまえが好きや。全部…愛したる」
「侑士…バカ?」
「あん?…なんでそうなるんや…」
ぜんぶって言ったって、げんどという物がある。
「同じ物ハマったりとか、いやかも。…好きだよ、侑士のことは」
「意図的に、ハマってるわけちゃうで? ホンマに、オモロイからや」
「わかってるけど…」
侑士が他人の評価を気にしないことは、よく知ってるしさ。
「ごめん…私、今日変だね」
「気にせんとき。女の子はそういう時もある。男とちがって、悩みも多いからね」
そのやさしさがうれしくて、思わず抱きつく。
「侑士、大好き」
「俺もや」
私の髪に口付け、侑士が幸せそうな顔をした──。
ENDE. 080917
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