「リョウ~」
「んあ?」
寝惚けた声と顔で、私を見るリョウ。……まだ寝てたのか……。
「今すぐシャワー浴びて、これに着替えてね!」
「…ナニ、コレ」
「見てわかるでしょ! 浴衣よ浴衣!」
「はあ…?」
しぶしぶだけど、バスルームへ。それを見届けると、私も浴衣に袖を通した──。
「へー、え」
「な、何…?」
「馬子にも衣装」
「…それはこっちのセリフよ」
プイッと、顔をそらす。
「嘘だって。…似合ってるぜ?」
「ふーんだ」
「…で? 俺にまで浴衣着させるなんて、どういうつもり?」
「…花火、見たいなって…。どうせなら、浴衣も着たいなーと、思ったから…」
リョウは、わかりやすく肩をすくめる。
「そういうことは、先に言っとけ。…ほら、行くぞ」
リョウは腕をからめるように、とでもいわんばかりに、自分の腰に手を置く。
「…ありがとう…」
浴衣美人に目を奪われたりするのかと思っていたけれど、そんなことはなくて。リョウは珍しく、きちんと私だけに付き合ってくれた。
そんな嬉しさからか、いつも以上にはしゃいでいたら。
「おっと!」
突然腕を引かれる。
「あんまりはしゃいでると、はぐれるぞ?」
「あ、りがと…」
すっぽりと胸におさめられて、ドキドキがとまらない。おかげで、花火にもいまいち集中できないまま、帰路についた。
マンションまであと数メートル、というところで、急にリョウが立ちどまる。
「どうしたの?」
リョウの視線の先には、チンピラがいた。
「おーおー、見せつけてくれちゃって」
「かわいい子連れてんね、お兄さん」
「…おたくらは?」
「いいからさ、その子、俺らに貸してよ」
「…すまんが、こいつはものじゃない。貸し借りはできんよ」
不敵に笑うリョウに、あーあ、と思う。
「黙って言うこと聞いた方が、身のためだぜ?」
「ほーお、身のためというのは、つまりこういうことかな?」
と、リョウはチンピラを簡単にのしてしまった。
「り、リョウ…手加減してあげないと、死んじゃうから…」
「ったく、今時のガキは、礼儀ってもんを知らん」
「…それ、ちょっと親父臭いよ?」
「おやっ…!」
「あのね、君たち。この人を敵に回すと、多分次は命ないよ? だから、やめときなさいね?」
チンピラの1人に近寄った瞬間、首をとられ、ナイフをつきつけられる。……油断してたわ……。
「動くと、この女を…」
「どうするって?」
すでに愛銃をとりだしていたリョウが、チンピラを睨みつける。
「お前たちも知っているはずだ。…シティハンターの名前を」
「…あ? あれだろ、凄腕の殺し屋。…それがどうした」
「あー、あのね、この人がその"シティハンター"よ」
「んなっ!?」
撃鉄をさげたリョウに、チンピラがひっ、と小さく悲鳴をあげた。
「わかったら、さっさと行け」
「は、ははは、はいー!!」
あわてて逃げて行くチンピラに、小さく手をふると。
「…怒って、る…?」
「べっつに~。ただ、俺の相棒にしちゃ、間が抜けてんなーって」
「だって、いざとなったらリョウは助けてくれるもの」
笑顔で返す。
「…ばーろー…」
暗闇でよくは見えなかったけど、おそらく紅くなっているであろうリョウの頬に、思わず笑みがこぼれた──。
**********
照れ隠しにナンパして殴られるパターンですね(^q^)←
お題配布元
○○な色でお題バトン110628