ときどき、なんでこの人が私なんかに惚れたのかって、疑問に思う。私なんよりずっと美人で……男のクセして、女の子にまちがわれる。しかもめんどう見もいいから、男女を問わず人気者だし……。
おさななじみだから、必然的に小さいころから一所だった。だから、あんまり恋愛感情とか意識した事もなくて。まさか、告白されるなんて考えてもいなかったから、最初はただ……驚いた。でも、まあいっか……なんて、付き合い始めたのがかれこれ3ヶ月前。
一般的な恋人がするようなことは、大体やったろうか。まだおたがい未成年だし? 変なことはしてないけど。一所に帰ったり、お昼を一緒に食べたり、デートしたり……。
あと、付きあってみてあらためて思ったけど……女心もよくわかってくれる。しかも空気も読めるしで、なんていうか……非の打ちどころがない。あえて言うなれば、オカマなことだけかな。いや……正確には、"元"オカマか。
「
七子、おくれてごめん」
「柳娟。…ううん、へーきだよ」
少しだけ息をはずませている柳娟に、微笑む。
「…そうお? …嘘はいけないわね~」
「あなたを待つのも、たのしいからへーきなの」
「…たいした殺し文句ね、それ」
「え、そうなの?」
「…無自覚なとこが、手に負えないわ…」
苦笑をかえして、手をにぎってくる。
「さ、帰ろっか」
「うん」
手をつないで歩く夕暮れの道のりは、長いようでいてあっという間で。1分……否、たった1秒でさえも、貴重に思えた。そんなことを考えて立ち止まると、彼が不思議そうに振りかえった。
「どしたの?」
「私って、柳娟の恋人…で、いいんだよね?」
「…当たりまえでしょ」
「これからもずっと?」
「あんたが、あたしでいいなら、ね。あたしは…あんたを手放す気はまったくないけど」
でも、人間の心なんて変わるものだし……。
「どうしたのよ、ほんと」
「…なんでもない!」
簡単に振りほどけた手に、少し先を歩く。
「
七子?」
怪訝に聞いてくる柳娟に、夕日を背にして、振りかえる。
「ほんとに、なんでもないから」
なんでもない。そう言った彼女の顔は、薄暗い中な上に、夕日による逆光で……よく見えなかった。けれど、微笑んでいるように見えた。
("なんでもない"じゃないわよ…)
あの子がどう思ってるかはわからないけれど、あたしは……あの子と結婚もしたいとまで考えている。今すぐには無理だけれど、いつかかならず……。
「
七子!」
少し先を行く
七子を、うしろから抱きしめた。
「あたしは、あんたがいなきゃダメになっちゃうんだからね。…だから、となりにいればいいの。…いてよね」
「柳…娟…。う、ん…」
「あんたじゃなきゃ意味がないし、あんた意外の女になんか、興味ないのよ」
「…うん…」
「わかったら、もうそんな顔しないで…。あたしがそんな顔させてるのかと思ったら、つらくて…やるせないわ…」
ほおにふれると、あんのじょう涙が指にふれる。
「あんただけ…なんだからね」
「…うん…」
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柳宿がどこかに行ってしまうような気がしている主、という設定。実際にこの後、彼は朱雀7星として旅立つのです…
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お題110401