寒空の下。キミは今にも泣きだしそうな顔で、
「こんなにあなたを想っていたのにな」
とつぶやいた。
オイラはそれをしっかり聞いていた。キミは、オイラがそこにいることに、気づいていなかったから。それでも、キミをもとの世界に帰したのだ……。
「はあ…」
「井宿、元気ないね! そんなことなら、なんで巫女と行かなかった!」
「…オイラと彼女では、住む世界がちがうのだ…」
それに、俺に人を愛する資格はない。
「なら、もうしんきくさいため息はやめるね! 私たち、そういううじうじしたの、きらい!」
「…そんなこと言われても、これはむじかくだから、こまるのだ~…」
娘娘には、もうすこしやさしさというものをおぼえてほしいのだ……。
「知ってるね、井宿! 巫女はまだ、最後のねがいごと、言ってないアル!」
「…え?」
「かくれてないで、井宿のとこ行くネ!」
「…あ、えと…ただ、いま…井宿…」
自分でもわかるほど、目を見ひらく。
「な、ぜ…もどってきた、のだ…?」
「うん…。井宿には言ってなかったけど…私、むこうの世界と、きちんとおわかれしてきたんだ。そのために、1回帰ったの」
「最後のねがいごとで、こっちにきた! 巫女、井宿が好きネ!」
「あっ、ちょっ、娘娘!」
はずかしそうに目線をはずす
七子。
「井宿と一緒にいたくて、もどってきたネ?」
「う、うん…」
「これで井宿も、しんきくさいため息やめる! よかったアル!」
「そんなこと、かってに決めないでほしいのだ! なんの相談もなしに、かってにむこうの世界を捨ててくるなんて…」
「…私、かくごはできてるよ。めいわくなら、はっきり言ってね? それなりの準備はしてきたから」
準備? と聞きかえす。
「井宿にふられたら、星宿が栄陽に呼んでくれるって…」
「…それはまた、ずいぶんと用意周到なのだ」
「もうむこうには帰れないんだもの、あたりまえでしょう…」
「…本当にキミは、なんでもオイラに相談なしで決めてしまうのだな。こまった
娘なのだ」
まだ、オイラの心は……準備ができていないというのに。
「…ごめんなさい…」
「星宿のとこになんて、行かせない。…キミのことは、オイラ…俺が、最後まで責任を持つのだ」
「ち、ちり…?」
面をはずし、そっと抱きしめる。
「…
七子、これからも…俺のそばにいてくれるか?」
「…うん。だって、私…そのためにもどってきたんだもの…」
「…ありがとう。…だが」
「え?」
「これからは、なんでもかってに決めたらだめなのだよ? きちんと、俺に相談すること。いいね?」
1つうなずく。
「…いい子だ」
「井宿」
「ん?」
「だいすき」
「…ああ、俺もだ」
抱きしめる手をゆるめ、そっと口づけた――。
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ツイッターの診断ででたやつを元に作成。なんだかなー…
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お題2120403