「美朱~! あんったね、またこんなに食い散らかしてっ!!」
私の彼氏は、すごくめんどう見がいい。というか、世話焼き。まあ、美朱を放っておけないと思っている人は、他にもたくさんいるわけだけれども……。
「そんなんだと、たまちゃんに見捨てられちゃうわよ!」
「えっ! それはやだ!」
「なら、もっと女らしくしなさい!」
……そして、元"オカマ"です……。
「
七子、今なにか言ったでしょ?」
「い、いいいいっ、言ってないです! オカマとか言ってないです!」
「そういうこと言うのはこの口かしら…?」
「いひゃい、いひゃいお…!」
今はいろいろあって、長かった髪も切ってしまったし、男の格好してるんだけどね。
「…柳宿のバカぢから」
「ああ、そうよ! あたしはバカぢからですよ! なんせ、2人も手がかかる子持ちですもの、仕方ないでしょうが! 誰のせいだと思ってんの!?」
と、美朱と2人してほおをつねられる。
「いひゃいいいいいっっっお」
「なんれ、あらしまで~~~っっっ!?」
つねられたほおをさすりながら、宮廷内を歩いていると。
「ちょっと、そんなに強くつねったかしら?」
「ううん。なんていうか…あてつけ?」
「…あんたね…」
苦笑う柳宿に、
微笑む。
「ときどき、疑問なのよね~…」
「…なにが?」
「あたしって、あんたのなに?」
「え、と…か、れし?」
「うん。…でもあんた、あたしと美朱がいちゃついてても、ぜんっぜん気にしてないわよね」
ああ! と、手を叩く。
「気にしてたの?」
「…べっつに!」
……わかりやすいなあ……。
「それはね、第1に…あなたを信じているから。第2に、美朱と柳宿がいちゃついても、姉妹か女友だち同士でいちゃついてるようにしか見えないからだよ!」
「…って、前者はともかく…後者は聞き捨てならない・わ・ね!」
「いひゃいいいいいいっっっっ!!!!」
つねっていた手を放してくれたかと思うと、突然人の悪い笑みを浮かべる。
「"女同士"なら、こんなことしても、問題はないわけよね?」
「って! ちょっと!」
気づいたら、柳宿の腕の中にすっぽりとおさまっている。そのままあごをつかまれ、見つめられた。
「な、なに…?」
「なーにー? あんた、ほんとに男と付きあったことないの?」
「なっ! なかったらなんなの!?」
「…ふーん。ほんとに、あたしが初めてなんだ」
ますます人の悪い笑みになった柳宿に、いごこちが悪いったらない。
「あの、放してください」
「いーや。だって、あんたはあたしのものだもの」
強く抱きしめれられて、耳元でささやかれた。
「誰にもわたさない。あたしが、しあわせにする」
「え…?」
「にっぶいわね~! 嫁にこいって言ってんの!」
「…はい~?」
彼の言葉を完全に理解するのに、しばし時間がかった。……だって、まさか、そんな……。彼と私じゃ、住む世界がちがうわけで……。
「こらっ! あーんた、またよけいなこと考えてるわね? …あたしだって…凄く悩んだんだから…。単純に、好きだってだけじゃ…越えられない壁があるんだもの…。でも、それも全部ふくめて、あんたを受けとめる覚悟をしたのよ…。あとは、あんたしだいよ」
「私、しだい…」
「おとずれるかどうかわからない悲しい未来を心配するより、今を生きるしかないんじゃない? それを教えてくれたのは、他でもないあんたじゃないの」
「…うん、そうだね…。…いいよ。私も…柳宿の傍にいたい…というか、おいてください」
「…ありがとう、
七子」
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妬きもちを焼いてほしかった柳宿、というお話
お題配布元
お題110331