アイドルなんだし、仕方ないってわかってるけど。だけどそれでもやっぱり、一応恋人同士である以上は、こころよくはない。
そんなことを、学校の廊下で女の子にかこまれている大気を見ながら考えて、自分に苦笑う。
しょせんそんなのはただの独占欲であって、相手にはめいわくでしかない。それがわかっているからこそ、あえて、心にしまっておいたつもりだのに。
(大気には1人でかかえこむな、なんて言っておいて…。だめだなあ…)
「…さん、
七子さん」
「…ふえ?」
「聞いてましたか?」
「…ごめんなさい」
おおきくため息をついてから、つづける。
「あなたからは、ないんですか?」
「…なにが?」
「今日、家庭科で…」
「あー、あれ。…美奈子ちゃんにあげちゃった。大気はほかの女子からたくさんもらうだろうし、そんなに食べきれないと思って」
「それは、全部おことわりしました。…あなたが、気にすると思って」
……え。
「気づいてないとでも、思ってたんですか、あなたのやきもちに。…あきらかに顔にでてます」
「まじですか」
「まじですよ?」
……うわあ、やってしもた……。
「…ううう…」
「それで? クッキー、本当にないんですか?」
「…ありまふ…」
おずおずと、かばんにしまってあった、調理実習のクッキーをわたす。
「すなおにおなりなさい」
「…はひ…」
けっきょくかなわないんだなあと、思い知らされた今日――。
――私が本来、女であることは……話したでしょう?
――うん。
――女心くらい、多少はわかるんですよ。
――……なるほど。
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思ってたこと見抜かれて、たじたじになってるさまが、なぜか好きなんですよねえ…。
大気は女の子ってより、他人の気持ちに敏感であってほしいな、と思います(それが喩え、好きな人限定であってもいい←)
お題配布元
いろは唄でお題130409