パンのことでまだ言いあらそいをしている、浦飯幽助・桑原和馬・蔵馬・飛影を、ぼたんがあきれて見ている。
ふと、それを見ていた
七子が、ポソリとつぶやく。
「いっそのこと、みんなで料理でもしたら? そうすれば、自分で好きな物食べれるじゃん」
「お、
七子、たまにはいいこと言うじゃねーか!」
「幽助、たまに、はよけい」
「じゃあ、材料はどうします? 誰が買いに行く?」
ここでまた、じゃんけんでもはじめられたら、かなわない。
「私とぼたんさんで行くから、待ってればいいよ」
「じゃあ、オレも行きますよ。荷物持ち、必要でしょ?」
「けどよー、とりあえず今すぐ、なんか食うもんねーか? はらへっちまってよ…」
「桑ちゃん、本当におなかすいてんだねぇ…」
七子が、蔵馬を向く。
「"あの薬草"、持ってないの?」
「え、ああ…。すぐに用意できますよ」
「じゃあ、それ食べさせて」
「お、なんか食うもんあんのか?」
──蔵馬がだした、酎曰く"毒みてーな薬草"を食べさせられ、すっかりおとなしく……むしろダウンしてしまった幽助たち。ちなみに、飛影は食べなかった。
幽助たちをおいて、
七子とぼたん、荷物持ちとしょうして
七子を監視するために着いてきた蔵馬の3人は近所のスーパーへ。
いかんせん
七子はいたずら大好きなので、なにかとんでもない物を作りかねない。しかも、ぼたんがそれをとめない可能性も、なきにしもあらず……だ。
「蔵馬はフランス料理で…飛影は、もんじゃ?」
「ええ。たしか幽助がラーメンで、桑原君は和食」
「いっそ、フルコースにしたれ!」
「ぜんぶ作るのかい?」
七子いわく、「もんじゃラーメンの和食フルコース、プロヴァンス風」らしい。
「…お願いだから、食べられない物は作らないでくださいよ…?」
「うん、たぶんだいじょうぶ」
("たぶん"なんだ…)
ぼたんと蔵馬が同じことを考えたのは、言うまでもない。
「できた!」
「見た目は、普通…ですね」
「これは、もんじゃ焼きか…?」
「なんだ、まとめてだしただけじゃんか。誰だよ、
七子の料理がとんでもないモンなるかも…とか言ったやつは」
七子が、笑顔で幽助を見る。桑原が
七子の様子に、幽助の足を思いきり踏みつけた。
「ってーな、桑原!」
「さ、早速食おうぜ♪」
七子の料理は、案外まとも……むしろ、おいしかったらしい。
きれいにかたづけられた皿を洗いながら、ぼたんが言う。
「
七子ちゃん、料理うまいんだね」
「まあ、父子家庭ですからね」
「あれ、そうだったのかい?」
「言ってませんでした? うちは蔵馬と逆で、母親が小さいときに」
「うちは今、母子家庭じゃないですけどね」
手伝うつもりなのか、洗い場にむぞうさにおかれた皿たちを、とる。
「幽助の周りは、苦労してる連中があつまってるよね」
「それは言えてるわさ。類は友を呼ぶってやつなんじゃないかい?」
「けど、仲良しで…うらやましいです」
「女の子は女の子同士、仲良くしようじゃないか」
螢子や雪菜、女の子もいることだし、とつけくわえて。
「ですね。
七子も、もうりっぱにオレたちの仲間ですよ」
「…ありがとう」
蔵馬の言葉がうれしくて、笑顔をかえす。
「
七子ちゃんは、特に蔵馬と仲良しなんだろ?」
意味ありげな笑いをするぼたんに、苦笑いをかえす蔵馬が、つづけた。
「そんな関係じゃありません。おなじ"妖狐族"として、仲間意識、ですね」
「そうそ。恋愛ごっこは、私たちには、似合わないよ」
妖狐は基本的に、1匹狼が多いのだ。
「どっちかというと、兄妹みたいな」
「ですね。それに、
七子は学校に好きな人がいるんですよ」
「え、気付いてたの?」
「バレバレですよ」
蔵馬に、かくしごとは不可能なのである。
「へぇ、てっきりあたしは付き合ってると、そう思ってたよ」
「ちがいますよー。てか、この男にほる女性がいるなら、見てみたいです。いいのは、顔だけですよ、ぼたんさん。性格は最悪」
「ひどいなー。なにも、そこまで言わなくても」
そう言って笑い合う2人を……ぼたんは少し遠くに見ていた──。
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たまには恋愛絡みではないお話が書きたかったのです(^q^)
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お題081001