Lilith
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
気付けばこの世に産まれ落ちていた。
何故自分が此処にいるのかも分からずただ歩いて走って、回って好きに過ごしていたらいつの間にか現地の言葉で夜と呼ばれていた。
かと思えば嵐の妖怪と呼ばれたり悪霊呼ばわりされたりとそれはもう散々で腹が立った私は森へと引き籠もる事に決めた。
住み着いた森は鬱蒼としていて深く、獰猛な動物もいるからと人はおいそれと近付く事もないので私はそこで一人楽しく暮らしていた。
ある日病んでしまった母親の為にと決死の思いで薬草を摘みに来た幼い兄弟と出会い、暇潰しに作ってみた薬を渡した事で森の周辺住む人々から長く森の賢者等と大層な呼び名を貰ったりもした。
そんなこんなでのんびり過ごした数世紀、そうもいかなくなったのは森に住み着いてどれ位経った頃か、人間が人間を狩りだした頃である。
どうも大多数の人間が信奉する神は私の様な少し不思議でおかしな人間に厳しいらしく、そんな神に祈りを捧げる人々は怪しい人間を片っ端から捕らえては尋問をして自分が魔女だと認めた者を処刑しているらしい。
近頃は夫に先立たれ独り身となった女性を魔女とでっち上げるなんて事も横行しているらしく、魔女の使い魔とされ街から逃げてきたという黒猫からその話を聞いた。
寡婦というだけで処刑する彼等の事だからきっと私の様な少し人と違うものは率先して惨たらしく殺してしまいたいだろう。
不老不死ではあるが痛覚が人並みにある私としては出来る限り痛い事は避けたいので私は住み慣れた森を出る事を決めた。
自分が不老不死だと知ったのは遠い昔、人間の街に住んでいた時である。
ある日自分と同じ様な姿の人々を見つけた私はそこへと混じった。
人との生活は何もかも新鮮で毎日が楽しくて仕方がなかったがある日ふと誰かが気が付いた。
どうして貴女は老いもせず何時迄も若く瑞々しくいるのか?
震える皺くちゃの指でそう尋ねたのは住み着いた当初良くしてくれた隣の家の娘であった。
彼女の言葉に周りがまるで夢から醒めたかの様に私を何か怖ろしいものでも見るかの様な視線を向ける。
誰かが叫んだ。
悪霊だと
それから着の身着の儘そこを飛び出した。
さっきまで優しかった人達の豹変に驚いて慌てていた為周りをよく見ていなかった私は走る勢いのまま前日の大雨で増水していた大河に落ちて溺れた。
踠き苦しみ、次第に河の底に沈んで薄れゆく意識の中初めて死を意識した。
獣に襲われた彼も、病気に苦しんでいたあの子も、老いてある日眠ったまま起きなかったあの人も、きっと皆こうやって死んでいったのだ。
そして私もこのまま、
と思ったら生きていた。
激しい河の流れの先で岸に打ち上げられていた私は目を覚ました。
この時は偶々運良くと思っていたが長く生きていく中で崖から落ちる事もあったし足を滑らせ井戸に落ちた事もあった。
道を尋ねた相手の妻に夫の浮気相手と誤解されて刺された事もあったし何日も食べる事も飲む事も出来ず砂漠で倒れた事もあった。
そうしている間にも世界は国が幾つも起こり滅ぼし滅ぼされてを繰り返し私は漸く自分が不老不死だという事に気がつく。
その頃には異物を嫌う彼等人間の性にも多少の理解を示していた私は行き着いた先の森に引きこもるのだがこれも時代の流れなのか、そうも言ってられなくなり私は今から森を出る。
これからどうしようか考えて安直に人間狩りの行われていない地を探す事にした。
あくまでも一部地域の信奉された神の教え故の事なのでその神の教えの届かぬ所ならばという考えである。
そうと決まればと、最低限の荷物を纏めて抱えた。
神の教えが届かぬのは西か東か果ては北か南の大地か、私はこれから始める長い旅の一歩を踏み出した。
そんなこんなで住み慣れた森を離れてそれから何世紀。
長く一定の場所にいるのは不味いからと姿を変え時に化け、辺りを転々とする。
気付いたら人間狩りは終息していたけれども意外にも楽しかった一人旅に私は相変わらず定住せずに其処彼処をふらふらとしていた。
そうやって何時もの様に訪れた見知らぬ街で私は子供を拾った。
孤児では無いけれど母はおらず父も行方知れずで暫く会っていないという子供である。
この国では珍しい黒髪は手入れもされずバサバサで、まともに食事も出来ていないのかはたまた精神的なものかその子供の瞳は酷く濁っていた。
何気なく関わった手前その子供を置いて他所の街に彷徨う何て事も出来ずそれなりに育つまで子供の家を間借りしながら子供の世話をする事にした。
せめてこの子供が一人で生きていける様にと沢山の事を教えた。
料理に洗濯、子供が一人でも生きていける様にと生活する術。
知識に勉強、一般的な教養に儀礼と自分に教えれる限りの事を教えていたら行方知れずだった子供の父親が帰ってきた。
勿論その場は大いに揉めた。
久しぶりに戻った家に見知らぬ女が増えていたのである。
男は警戒を露わにして威嚇するかの様に吠えて騒いだが、子供本人の希望もあり私のちょっと不思議な力で父親と連れの女性には子供の事を忘れてもらい、お帰り頂いた。
子供の希望とは言え子供の記憶を父親から消してしまい頼れる親戚もいない為、今度こそ子供は天涯孤独の身となってしまった。
その事もあり私はますます子供を可愛がり育てた。
初めて会った時はバサバサだった黒髪は今は艶やかに、瞳には一切の濁りはあらずきらきらと美しく輝いている。
正直言うと長い長い生で初めての子育てに私は嵌ってしまっていた。
その時の、いや、その時から私は親馬鹿なる病を患っていた。
仕方が無い。だって可愛いのだ。
しかもこの子育ては通常の子育てより期間が短い。
子供の夢は国家公務員である騎士で、その為に入学を目指す首都の士官学校は全寮制。
入学したら卒業まで寮の生活となる。
そうなれば今迄面倒を見ていた私は不要で、だからこそそれまでは、一時の夢の様な短い期間ではあるけれどこの子供を慈しもうと思っていた。
のだけれど、
「あら、まさか私を置いて何処かへ行くなんて言わないわよね?」
彼女はそう言って何故か私を入学当日になっても離してくれなかった。
見送りなんてまともに出来ないと思い子供が眠っている間にさよならをしようと思っていたのに、子供と一緒に眠っていたベッドから抜け出さそうとしていた所で私は腕を掴まれてしまい捕らえられてしまう。
そしてそのまま早朝の家族会議となり、私は勝手にいなくなろうとした事を謝り、改めていなくなろうとした訳を子供に説明したのだが、その時には私のちょっと不思議な力を知っていた子供は私に離れる事を許さず学校迄付いてくる事を強いた。
私はまだ年齢も年齢だから親の真似事とはいえこんな私でも急に離れるのは寂しいのだろうと子供の心情を解釈し、納得して子供の望みを叶えるべく姿を変えてまだ暫くは側に居続ける事を決めた。
子供は次第に美しい女性になり、士官学校を卒業して軍人として働き出すと私を置いて何処かへ出かける事も増えたしボーイフレンドと思わしき男性と共にいる事も増えた。
猫に姿を変えていた私は彼女のベットで微睡みながら今度こそお別れを実感する。
彼女と別れたら次は何処へ行こうか。
此処は雨がよく降るから次は暖かくて雨の少ない土地に行こうと昔に歩いた南の地を頭に浮かべる。
そこでまた暫く滞在して今度は北の大地で芸術を堪能する生活をするのだと漠然とではあるがそれからの生活を思い浮かべていたがやはり彼女は私を離してくれなかった。
結婚という言葉に私は目を瞬かせた。
といか此処は何処なのか。
私は何時もの様に日向で微睡んでいた。
今日はよく晴れていて日差しが暖かくついついうとうとしてしまった迄は覚えているのだが気付いたらまるで貴族が住む様なお屋敷のベッドに寝かされていた。
以前いた彼女の部屋も彼女が頑張って昇進した為広く絢爛な部屋ではあったが此処は規模が違う。
屋敷と言うより宮殿の様だと呟いたら彼女は悪戯が成功した様な顔をして肯定した。
「此処はアリエス離宮。私と貴女の宮殿よ」
彼女によるとつまりこうだ。
皇帝から求婚された。
それに私は驚いたし私はてっきり結婚はビスマルク君とすると思っていたのだがそれはもうおかしそうに彼女に否定された。
ビスマルク君は同僚であり戦友で男女のあれこれは一切ないと言う。
二つの意味で驚いた私に彼女はもっと凄い驚きを提供してくれる。
皇帝の求婚は勿論断れないし元々断る気も無かったと言うのだが結婚するにあたり一つ条件を出したと言う。
己の上司でこのブリタニアという国の最高権力者にである。
その条件とはこの離宮で、彼女は結婚しても私を離す気はさらさらなかったらしく、けれど後宮では他の皇妃の目が邪魔だからと自分の離宮を建てて貰うのを条件に求婚を受けたのだとか。
私は目眩がした。
話を聞く限り皇帝は彼女に思いを寄せてくれているのかそんな事かとあっさり了承してくれたらしいのだが、己の上司におねだりをするこの豪胆ぶりは一体誰に似たのか私は途方に暮れた。
彼女はそんな私を抱き上げて狭い額に唇を落とす。
「誰にって貴女しかいないじゃない。私の母親も姉妹も友も全部貴女なんだから」
そして瞳を細め、笑みを浮かべた彼女は
「これからもずっと一緒にいましょうね」
と私に笑い告げた。
何故自分が此処にいるのかも分からずただ歩いて走って、回って好きに過ごしていたらいつの間にか現地の言葉で夜と呼ばれていた。
かと思えば嵐の妖怪と呼ばれたり悪霊呼ばわりされたりとそれはもう散々で腹が立った私は森へと引き籠もる事に決めた。
住み着いた森は鬱蒼としていて深く、獰猛な動物もいるからと人はおいそれと近付く事もないので私はそこで一人楽しく暮らしていた。
ある日病んでしまった母親の為にと決死の思いで薬草を摘みに来た幼い兄弟と出会い、暇潰しに作ってみた薬を渡した事で森の周辺住む人々から長く森の賢者等と大層な呼び名を貰ったりもした。
そんなこんなでのんびり過ごした数世紀、そうもいかなくなったのは森に住み着いてどれ位経った頃か、人間が人間を狩りだした頃である。
どうも大多数の人間が信奉する神は私の様な少し不思議でおかしな人間に厳しいらしく、そんな神に祈りを捧げる人々は怪しい人間を片っ端から捕らえては尋問をして自分が魔女だと認めた者を処刑しているらしい。
近頃は夫に先立たれ独り身となった女性を魔女とでっち上げるなんて事も横行しているらしく、魔女の使い魔とされ街から逃げてきたという黒猫からその話を聞いた。
寡婦というだけで処刑する彼等の事だからきっと私の様な少し人と違うものは率先して惨たらしく殺してしまいたいだろう。
不老不死ではあるが痛覚が人並みにある私としては出来る限り痛い事は避けたいので私は住み慣れた森を出る事を決めた。
自分が不老不死だと知ったのは遠い昔、人間の街に住んでいた時である。
ある日自分と同じ様な姿の人々を見つけた私はそこへと混じった。
人との生活は何もかも新鮮で毎日が楽しくて仕方がなかったがある日ふと誰かが気が付いた。
どうして貴女は老いもせず何時迄も若く瑞々しくいるのか?
震える皺くちゃの指でそう尋ねたのは住み着いた当初良くしてくれた隣の家の娘であった。
彼女の言葉に周りがまるで夢から醒めたかの様に私を何か怖ろしいものでも見るかの様な視線を向ける。
誰かが叫んだ。
悪霊だと
それから着の身着の儘そこを飛び出した。
さっきまで優しかった人達の豹変に驚いて慌てていた為周りをよく見ていなかった私は走る勢いのまま前日の大雨で増水していた大河に落ちて溺れた。
踠き苦しみ、次第に河の底に沈んで薄れゆく意識の中初めて死を意識した。
獣に襲われた彼も、病気に苦しんでいたあの子も、老いてある日眠ったまま起きなかったあの人も、きっと皆こうやって死んでいったのだ。
そして私もこのまま、
と思ったら生きていた。
激しい河の流れの先で岸に打ち上げられていた私は目を覚ました。
この時は偶々運良くと思っていたが長く生きていく中で崖から落ちる事もあったし足を滑らせ井戸に落ちた事もあった。
道を尋ねた相手の妻に夫の浮気相手と誤解されて刺された事もあったし何日も食べる事も飲む事も出来ず砂漠で倒れた事もあった。
そうしている間にも世界は国が幾つも起こり滅ぼし滅ぼされてを繰り返し私は漸く自分が不老不死だという事に気がつく。
その頃には異物を嫌う彼等人間の性にも多少の理解を示していた私は行き着いた先の森に引きこもるのだがこれも時代の流れなのか、そうも言ってられなくなり私は今から森を出る。
これからどうしようか考えて安直に人間狩りの行われていない地を探す事にした。
あくまでも一部地域の信奉された神の教え故の事なのでその神の教えの届かぬ所ならばという考えである。
そうと決まればと、最低限の荷物を纏めて抱えた。
神の教えが届かぬのは西か東か果ては北か南の大地か、私はこれから始める長い旅の一歩を踏み出した。
そんなこんなで住み慣れた森を離れてそれから何世紀。
長く一定の場所にいるのは不味いからと姿を変え時に化け、辺りを転々とする。
気付いたら人間狩りは終息していたけれども意外にも楽しかった一人旅に私は相変わらず定住せずに其処彼処をふらふらとしていた。
そうやって何時もの様に訪れた見知らぬ街で私は子供を拾った。
孤児では無いけれど母はおらず父も行方知れずで暫く会っていないという子供である。
この国では珍しい黒髪は手入れもされずバサバサで、まともに食事も出来ていないのかはたまた精神的なものかその子供の瞳は酷く濁っていた。
何気なく関わった手前その子供を置いて他所の街に彷徨う何て事も出来ずそれなりに育つまで子供の家を間借りしながら子供の世話をする事にした。
せめてこの子供が一人で生きていける様にと沢山の事を教えた。
料理に洗濯、子供が一人でも生きていける様にと生活する術。
知識に勉強、一般的な教養に儀礼と自分に教えれる限りの事を教えていたら行方知れずだった子供の父親が帰ってきた。
勿論その場は大いに揉めた。
久しぶりに戻った家に見知らぬ女が増えていたのである。
男は警戒を露わにして威嚇するかの様に吠えて騒いだが、子供本人の希望もあり私のちょっと不思議な力で父親と連れの女性には子供の事を忘れてもらい、お帰り頂いた。
子供の希望とは言え子供の記憶を父親から消してしまい頼れる親戚もいない為、今度こそ子供は天涯孤独の身となってしまった。
その事もあり私はますます子供を可愛がり育てた。
初めて会った時はバサバサだった黒髪は今は艶やかに、瞳には一切の濁りはあらずきらきらと美しく輝いている。
正直言うと長い長い生で初めての子育てに私は嵌ってしまっていた。
その時の、いや、その時から私は親馬鹿なる病を患っていた。
仕方が無い。だって可愛いのだ。
しかもこの子育ては通常の子育てより期間が短い。
子供の夢は国家公務員である騎士で、その為に入学を目指す首都の士官学校は全寮制。
入学したら卒業まで寮の生活となる。
そうなれば今迄面倒を見ていた私は不要で、だからこそそれまでは、一時の夢の様な短い期間ではあるけれどこの子供を慈しもうと思っていた。
のだけれど、
「あら、まさか私を置いて何処かへ行くなんて言わないわよね?」
彼女はそう言って何故か私を入学当日になっても離してくれなかった。
見送りなんてまともに出来ないと思い子供が眠っている間にさよならをしようと思っていたのに、子供と一緒に眠っていたベッドから抜け出さそうとしていた所で私は腕を掴まれてしまい捕らえられてしまう。
そしてそのまま早朝の家族会議となり、私は勝手にいなくなろうとした事を謝り、改めていなくなろうとした訳を子供に説明したのだが、その時には私のちょっと不思議な力を知っていた子供は私に離れる事を許さず学校迄付いてくる事を強いた。
私はまだ年齢も年齢だから親の真似事とはいえこんな私でも急に離れるのは寂しいのだろうと子供の心情を解釈し、納得して子供の望みを叶えるべく姿を変えてまだ暫くは側に居続ける事を決めた。
子供は次第に美しい女性になり、士官学校を卒業して軍人として働き出すと私を置いて何処かへ出かける事も増えたしボーイフレンドと思わしき男性と共にいる事も増えた。
猫に姿を変えていた私は彼女のベットで微睡みながら今度こそお別れを実感する。
彼女と別れたら次は何処へ行こうか。
此処は雨がよく降るから次は暖かくて雨の少ない土地に行こうと昔に歩いた南の地を頭に浮かべる。
そこでまた暫く滞在して今度は北の大地で芸術を堪能する生活をするのだと漠然とではあるがそれからの生活を思い浮かべていたがやはり彼女は私を離してくれなかった。
結婚という言葉に私は目を瞬かせた。
といか此処は何処なのか。
私は何時もの様に日向で微睡んでいた。
今日はよく晴れていて日差しが暖かくついついうとうとしてしまった迄は覚えているのだが気付いたらまるで貴族が住む様なお屋敷のベッドに寝かされていた。
以前いた彼女の部屋も彼女が頑張って昇進した為広く絢爛な部屋ではあったが此処は規模が違う。
屋敷と言うより宮殿の様だと呟いたら彼女は悪戯が成功した様な顔をして肯定した。
「此処はアリエス離宮。私と貴女の宮殿よ」
彼女によるとつまりこうだ。
皇帝から求婚された。
それに私は驚いたし私はてっきり結婚はビスマルク君とすると思っていたのだがそれはもうおかしそうに彼女に否定された。
ビスマルク君は同僚であり戦友で男女のあれこれは一切ないと言う。
二つの意味で驚いた私に彼女はもっと凄い驚きを提供してくれる。
皇帝の求婚は勿論断れないし元々断る気も無かったと言うのだが結婚するにあたり一つ条件を出したと言う。
己の上司でこのブリタニアという国の最高権力者にである。
その条件とはこの離宮で、彼女は結婚しても私を離す気はさらさらなかったらしく、けれど後宮では他の皇妃の目が邪魔だからと自分の離宮を建てて貰うのを条件に求婚を受けたのだとか。
私は目眩がした。
話を聞く限り皇帝は彼女に思いを寄せてくれているのかそんな事かとあっさり了承してくれたらしいのだが、己の上司におねだりをするこの豪胆ぶりは一体誰に似たのか私は途方に暮れた。
彼女はそんな私を抱き上げて狭い額に唇を落とす。
「誰にって貴女しかいないじゃない。私の母親も姉妹も友も全部貴女なんだから」
そして瞳を細め、笑みを浮かべた彼女は
「これからもずっと一緒にいましょうね」
と私に笑い告げた。
1/2ページ