とある悪食娘の話
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暫くして羅門の予想から羅半が仕事の合間に調べに調べ、猫猫が連れられた先が判明した。
「まさか姉さんが後宮にいるだなんて」
「まあ奴隷制度が撤廃された今、拐かされた娘の行先としては確かにそこぐらいしか無いな」
他にも娼館や国外も考えられたが花街で猫猫の事はそこそこに知れ渡っている上緑青館の女主人が目を光らせてくれているのでもし何処かの娼館に売ろうものならすぐに見つかる。
国外は距離も時間もお金を掛かるので羅半曰く一番あり得ないらしく、羅門が一番可能性があると言った後宮に焦点を絞って調べた所確かに後宮に入った下女の一人に猫猫の名前があったと言う。
以外に近くにいたと笑って見せた羅半は睡眠時間を削って迄調べていてくれたのだろう、目の下に濃い隈をこさえていた。
「まあ、この目では確認していないが後宮に入ったという猫猫は左腕が裂傷や火傷、噛み傷で酷く傷付いていたというからほぼほぼ本人だと思って良いだろう」
「確かにそれ程傷を負ってるのは姉さん位しかいないわ」
何時もの様に厨房で話す山茶と羅半。
羅漢は羅半に連れて来られた羅門に猫猫の行方と今後の対応について釘を刺されていた。
猫猫が後宮にいると分かった時点で羅半は羅門に報告していた。
その報告を聞いた羅門は帝のお手付きが無い限り最低二年務めれば後宮から出れる仕組みを理由に猫猫が自分から後宮を出たいと言うまで待っていようと言った。
羅半は後宮で働いて出るお給料を計算して羅門の意見に賛成していた。
山茶も猫猫が後宮を出たいと願っていないのならと同じく賛成派なのだが問題は羅漢で、猫猫が後宮にいると分かれば何としても男子禁制である後宮に乗り込みそうである。
そうさせない為の羅門の召喚なのであるが、羅漢がそう簡単に納得するのか心配する山茶に対し羅半はもう安心だと出来上がった夕飯のおかずを摘み食いしていた。
羅半が安心していた通り後宮にいる猫猫については暫く様子見、もし猫猫から助けてくれと言われたら迅速に対応という事で夕食が出来る頃には話がついていた。
羅漢は猫猫から助けを求められれば何が何でも爸爸が助けるからね、と一人息を巻いていたが猫猫が羅漢に助けを求める事だけは無いだろうなとその場にいた三人は思った。
前回の家族会議という名の羅門による羅漢への言い聞かせの時と同様に夕食を食べて行く事になった羅門。
今回は羅漢と山茶も加わり四人で夕食を囲む。
元々食事中はあまり喋らないのだが今日は羅門がいるので羅漢があれこれ喋りかけていた。
そんな羅漢に羅門は優しく応えており、二人の話を聴きながら山茶は上手く蒸しあがった包子を齧る。
考えるのは先程居場所が分かった猫猫の事で、少しでも良いから猫猫の元気な顔が見たいと山茶は思った。
そんな山茶の思いを知っていたかの様に翌日の朝、久し振りに会った雇い主は山茶に後宮への共を命じた。
猫猫の行方も分かり、迷惑をかけたお詫びのお菓子を携えて久し振りに朝から出勤してきた山茶に壬氏も水蓮も驚いた。
姉の行方分かったと報告すれば二人は我が事の様に喜んで見せ、口々に祝いの言葉をけかけてくれる。
「それで勝手なのですがまた今日から以前の様にお務めさせていただきたくお願いを申し上げに参りました」
壬氏の返答も効かぬ間に山茶の手を握った水蓮は微笑んで見せる。
「お仕事は山程あるから二人で頑張りましょうね」
「はい!お休みさせていただいたのを取り戻す為頑張ります」
そう意気込む二人の間に割って入りる様に制止を求めたのは壬氏であった。
盛り上がる二人の邪魔をして申し訳ないという気持ちがあるらしく、始めに詫びの言葉を述べた壬氏は山茶の顔を見た。
「実は会ってもらいたい妃がいるのだ」
「お妃様にでございますか」
丁度、朝食がまだだった壬氏。
山茶はその給仕をしながら壬氏の話を聞く。
どうやら上級妃の一人が近頃自室に閉じ籠り塞ぎ込んでいるらしくあまり食事も摂れていないとの事。
今の所は見るからに窶れた様子もないがそれも時間の問題で、その対応にどうしたものかと悩んでいた壬氏に話を何処で聴いたのか阿多妃が山茶なら何とかなるだろうと言ったと言う。
壬氏は何故自分の元で働く侍女なのか阿多妃に尋ねたが訳も根拠も何も教えて貰えず只彼女は「会わせれば何とかしてくれるさ」となんとも人任せな発言をしていたとか。
他に策も無く壬氏が何度訪ねても妃は自室で啜り泣くばかり。
もし此処で帝が妃の所にやって来て食事を摂るように言えば妃も最低限の食事をしたかもしれないが帝は帝で阿多妃の案に賛成らしい。
「つまりこれは壬氏様の命令であり、勅命であるという事なのですね」
「そういう事だ」
壬氏は何やら考え事をする様子の山茶を見て、彼女は何者か考えた。
帝と帝が東宮時代からの妃である阿多妃から信頼を寄せられる存在。
壬氏もこれまで山茶が何者か気になり調べた事もあるのだが調べがつく前に帝に止められた。
帝曰く色々後悔するとの事で、普段と違った帝の様子に壬氏もそれ以来山茶について調べてはいない。
「分かりました。そのお務め私に出来る限り励ませて頂きます」
「頼りにしているぞ」
兎に角、未知なる事が多い山茶であるが早数年となる付き合いから壬氏もそれなりに彼女に対して信頼を寄せている。
そして、他に策もない以上山茶の働きに壬氏は期待する他無かった。