刀剣乱舞

廊下を歩いていた鶴丸国永と鶯丸は中庭を挟んだ向かい側の廊下に般若が歩いていたのを見た。
誰かを探しているのか辺りを見渡しながら廊下を練り歩くその様に何事かと、鶴丸国永は目を丸くする。
結局、探し人は見つからなかったのか廊下の奥へと消える般若。
その後ろ姿を見送りながら鶴丸国永は頭を傾げた。

「ありゃあ三日月か?はろうぃんは昨日だっただろ」

本日は11月1日。
審神者主催の仮装パーティーは昨日の内に閉幕している。
だというのに般若の面を着けて徘徊する三日月宗近。

「とうとうマジに耄碌したか」

日頃から本気か冗談なのか惚けた言動の多い事もあり、てっきり何時ものかと笑う鶴丸国永であったが隣から否定が飛んできた。

「三日月は一期一振を探しているんだ」

「一期を?あんな面を付けて?」

一期一振といえば先程、般若面を付けて歩いていた三日月宗近の旦那である。
それは仲睦まじい、側から見れば暑苦しい程に夫婦仲が良いというのに何故、三日月宗近は般若面など着けて旦那を探しているのか鶴丸国永には訳が分からない。

「一期が昨日、他所の審神者を口説いたらしい。その様子を乱藤四郎が今朝方、三日月に伝えて」

「一期を探してるわけかー」

夫婦仲は大変よろしいのだが、この本丸の一期一振は前の主人の影響か女性にだらしないところがあった。
美人となればそれが他所の審神者だろうと、女士であろうと、付喪神であろうと、ところ構わず口説くのだ。
しかしそれもこの本丸に三日月宗近が顕現するまでの話。
三日月宗近が顕現して以後は一期一振は一途に三日月宗近だけを思い、落ち着いた。
と、思っていたのだがそうでもなかったらしい。

「お前様、今日という今日は・・・」

漸く、三日月宗近は一期一振を見つけたのか二人の声が何処からともなく聞こえてくる。

「落ち着いてくだされ三日月!私は何もしておりません!無実です!何処にいるんだ!乱!乱!昨日の事をちゃんと、正しく三日月に説明しなさい」

「問答無用だ」

その後、暫く一期一振を見る事は無かった。
一期一振が他所の審神者を口説いていたというのは結局のところ乱の勘違いだったらしく、翌週には何時も通り仲睦まじい二人の姿が見られた。
抜刀寸前の夫婦喧嘩から一転、馬鹿ップルと呼ばれても遜色ない二人の様子に新入りの村雲江が戸惑っていたが先輩である五月雨江が何時もの事だから放っておくのが良いと言葉をかけるのだった。
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