家から飛び出し逃げ惑う人間達。
それをまるで狐か兎でも追いかけるかのように捕まえ殺した。

夜中に集落を襲うという奇襲作戦は見事に成功し、夜明けには集落は荒れ地の様になっていた。

｢同じ人間のくせしてよくここまで出来るあるな｣

鼻をつく異臭は慣れてしまいもうどんな臭いかすらも分からない。
その代わり、と言ってもいいのだろうか体の一部が酷く傷んだ。

当たり前だ彼は自分の手で自分の一部を壊したのだ。

それでもまだ痛みは弱かった。
これなら自分の足で帰れる、と安堵した時だ。

軍が殲滅をした筈の集落の真ん中で小さな子供が蹲っていた。

周りを見渡せば幸運にも軍の人間は一人もいない。
彼は慌てて駆け寄った。

子供は苦しそうに｢あっあっ｣と声を漏らし胸を押さえていた。

白い服は胸の所だけが赤く染まっている。

怪我をしているのかと無理矢理に胸を押さえる子供の手を退かせて服を破る。

子供の胸は切り傷なのか刺し傷なのかも分からないほど酷く抉れ傷付いていた。
止まる事を知らないのか傷口からは血が体を伝って流れていく。


始めに触れた時と違い、子供の体が冷たくなりだし瞳もだんだんと虚ろになっていた。



彼は気が付くと無我夢中に走っていた。

一体何処まで走っていくのか分からないまま


走っている途中、子供は震える腕を伸ばして彼の頬に触れた。
その表情は青白になっていたがとても愛しそうに、愛しき子供でも見るかの様な表情。

そして子供は彼には聞こえない消え入りそうな声で呟いた。


ああ、会いたかった。


私の愛しき子！













リンネを拾い何が変わったかと言うと自分の生活と考え方だろう。

今まで嫌いだった人間でも中には良い奴がいる事。

笑う事が大切な事。

人を大切に思う気持ち。

とにかく色々なものが自分の中で変わった。

それら全てがリンネから与えられたと言っても過言ではない。


だからこそ彼は言いたかった。


『だから我がリンネを』











幸せにしなくちゃならいんだ。
(リンネが我に与えてくれた様に)