深く黒い瞳がこちらを見つめる。
その瞳は潤み、男を誘っていた。

｢・・・さん。私、私は｣

その先の言葉は彼が心待ちにしていた言葉だろう。
彼は何も言わなくても良いとリンネの頬に手を当てる。
その手を包みこむ様に手で握り二人の視線が交わう。

近づく吐息

愛しき者の匂い。

後少し、もう少し。
二人の距離は今までで一番近い。

唇が触れる触れないかの距離だった。



鶏が鳴く。



それも凄く近くで
彼は目を開け、勢いよく体を起こした。
その隣ではリンネがすやすやと眠っている。

｢夢あるか｣

ふーと息を吐き、嬉しいやら虚しいやら複雑な気持ちになる。

彼は隣に眠るリンネに手を伸ばし、頬を撫でた。頬を撫でられ、リンネは｢ん・・・｣と声を漏らして身動きする。

そういえばまだ部屋が暗い事に気付き窓に視線を移すと外は白い。

まだ夜が明けたばかりあるかと考えていると寝台側で何かが動く。

｢・・・あ、お前は｣

寝台の側には外で放し飼いにしてある筈の鶏が鳴いていた。








今日の朝ご飯。

(朝餉は粥に鶏肉あるかな)(こけーっ？！)