籠の中の鳥(複数/黒執事)
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船が港を出て海洋へと出たところでシエル達一向は彼女と出会った。
彼女はシエルを見て、初めは驚いた顔をしていたがすぐに涙を浮かべて嬉しさに体を震わせていた。
それもそうだ、始めにこの航海を誘ったのは彼女で誘いを断ったシエルが同じ船にいるのだ。
「お・・・驚かせようと思ってな」
同じ船に乗るのだからいつかは会うだろうと思っていたシエルだったがまさかこんなにもすぐに会うとは思っていなかった様でとっさに言った言葉がそれだった。
シエルと手を繋いでいたユメは手を離し、この状況を笑っていたセバスチャンの後ろに隠れる。
「ユメ・・・「一緒に来れないって言ってたのに
嬉しい!!」
ぎゅーっと効果音が聴こえてきそうな程シエルを抱き締める彼女、エリザベス。
誰だ?と言わんばかりに首を傾げたスネークにユメは「シエルの許嫁です」と耳打ちする。
スネークは驚いた表情を見せたがユメは気にしていない様でシエルとエリザベスのやり取りを眺めていた。
エリザベスの後ろから近付いてくる三人にユメは「あ、」と声をあげて姿が完全に隠れる様セバスチャンの後ろで身を潜める。
「エリザベス!!人前ではしたない真似はおよしなさい!!」
現れたのはエリザベスの母親であるフランシスと
「・・・・・・」
「そうだぞリジー
それに・・・僕はまだお前を義弟とは認めてないからな!!
その夫、アレクシスとミッドフォード公爵家長男であるエドワード。
「早く離れろ!!」
「はあ・・・」
「・・・・・・」
「どうしました?ミッドフォードの方々は初対面ではない筈ですが」
ひたすら自分の後ろに隠れて様子を伺うだけのユメにセバスチャンは尋ねた。
ユメには人見知りの気があるのは知っているセバスチャンだがさっきも言った通り初対面ではない筈なのだ。
なのに隠れたままで挨拶をしようともしないのはおかしい。
「そうなのですが、」
ユメはこそっと執事と従僕へと訳を話した。
「恐いんです」
何って顔が、
娘のエリザベスとは違いフランシス夫人もアレクシス公爵も厳しそうな顔をしていて近寄り難い雰囲気を持っているし、またその息子であるエドワードは会う度に眉間には皺が寄っている。
「恐いというより気迫に負けているのかもしれない」
「それは俺も同意だってダンが言ってる」
そう言ったスネークの耳の所で小さな蛇が頷いていた。
「そこで何をこそこそと話しているんだ」
頭上からの声に顔を上げれば腕を組んで仁王立ちをしたフランシス。
「あ、あの、・・・こんにちは」
「ああ、お前は」
「ユメです。叔母様」
エリザベスから離れたシエルがフランシス夫人とユメの間に割って入るかの様に立ち紹介する。
名前を聞いて覚えがあった様で
「そうだ、ユメだったな」
とユメの肩を叩いた。
フランシス夫人は親しく接してはくれているのだか気迫ばかりはなくせない様でユメは畏縮してしまう。
姿勢が良いとは言えないユメに片眉をつり上げたフランシス夫人は「背筋は伸ばしなさい!」と厳しい声で注意する。
「は、はいっ」
ピンッと伸びた背筋にフランシス夫人は納得したようで「それでいい」とユメに笑いかけた。
その顔が綺麗だと思ったのだがやはり表情が戻ると気迫も凄い。
目を合わせるだけで圧倒されるかのような気迫にユメは負けそうだった。
自分の前に立つシエルにユメは無言で助けを求める。
「あー・・・叔母様、こんな冷たい風が当たる場所で立ち話も何ですし中に入って話をしませんか?」
「・・・良いだろう」
シエルの提案にあっさりと了承したフランシス夫人はシエルを隣に置いて歩き出した。
それに続いてアレクシス公爵、セバスチャンスネークと付いていく。
ユメは視線を感じて逆に視線を追った。
視線の先にいたのはエリザベスで普段の明るい表情とは違い、複雑な表情をしている。
「エリザベスさ「あ!シエル待ってよ」
声をかけようとした瞬間にエリザベスはシエルの元へと走って行ってしまう。
避けられているかの様な感覚にユメはそれもそうかと納得するしかなかった。
彼女はシエルの公式な妻であり、私は彼女の夫の側に立つ得体の知れない女なのだ。
しょうがないか、何て一人で納得すれば不意に肩を叩かれて振り向く。
そこにいたのはエドワードだった。
「行かないのか?」
そう尋ねられ辺りを見渡せは皆がいない。
行きますと言おうとした瞬間に馬車に乗っていた時と同じ咳が出る。
「お、おい大丈夫か?!」
思わずしゃがみこんだユメに驚いたエドワードは誰かを呼ぼうとするのだが、それをユメは止めた。
「大丈夫ですから・・・先に行っていて下さい」
そう言ってまたすぐに咳き込んだユメにエドワードは自分が着ていたジャケットを脱いで、ユメの肩へとかける。
「英國紳士たるもの体調が優れない女性をデッキに一人になどできない。
僕が側にいるから落ち着いたら皆のいる中へ入ろう」
エドワードは宣言通りユメの咳が治まる迄側にいた。
「先程はありがとうございました」
「気にするな。僕は紳士らしい行いをした迄だ」
にっこりと微笑んだユメに対しエドワードの顔が仄かに赤みが差す。
それに気付いたユメが「お顔が赤いですよ」とエドワードの額へと手を伸ばすのだがそれはエドワードの手によって止められる。
「僕は何ともない。それよりも早く皆に追いつかなければ・・・行くぞ!」
「は、はいっ」
差し出された手に手を乗せると掴まれエドワードは走りだす。
それにつられてユメも走った。
(綺麗な船の綺麗なデッキで)
(騒ぎの二日前)