籠の中の鳥(複数/黒執事)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「浮気だす」
「浮気だな」
「えー坊ちゃん、浮気してるの?」
「・・・うるさいぞお前達!!」
馬車の中だというのに館にいるときと変わらぬ賑やかさにユメは笑う。
楽しそうだな、何て笑っていればセバスチャンが小さく声をかける。
「手を出して下さい」
「こうですか?」
と、手を受け皿の様にして出せばセバスチャンは懐から可愛らしい包みを取り出してユメの手の上に置いた。
これは?と尋ねれば何故か気まずそうな声で「ジンジャーキャンディーです」と答える。
包みの中身がジンジャーキャンディーだと言うのは分かった。
だが、何故セバスチャンさんがキャンディーを?なんて考えていれば心の中を読み取ったかの様に「風邪がまだ治りきっていないのでしょう?」と小さな声で囁く様に言う。
「風邪が治りきっていない貴女を航海に連れ出す坊ちゃんも坊ちゃんですが付いていく貴女も貴女ですよ。
辛いのは貴女なのに、」
「そうですね。でも離れられないのはお互いですから」
「・・・飴は」
「え?」
「飴は、喉が辛い時に食べて下さい。気休め位にはなるでしょう」
「あ、ありがとうございます」
貰った飴をユメは肩からかけていた鞄にしまう。
「港に到着しました」
馬を引いていた騎手が外から声をかけると、シエルは「いくぞ」とユメの手を引いた。
馬車から降りて、空気を吸い込めば潮の香りがする。
「これがカンパニア号か~!!」
馬車から見えた船は近付くとその大きさに再度驚かせる。
でけーな、と驚くバルドに誰もが頷くほどカンパニア号は巨体だった。
その大きな船に乗る人々は誰もが楽しげな表情を浮かべていて見送りのフィニはシエルに同行するスネークを羨ましがった。
それを窘めるのはセバスチャンだった。
「従僕は主人の外出に同行するのも仕事ですからね。
留守中、皆さんは皆さんの仕事をしっかり頼みますよ」
「「「イエッサー!!」」」
注意されたかと思いきや、セバスチャンの言葉に使用人達は笑顔で見送る。
「では、行ってくる」
「行ってきます」
シエルと繋いだ手が強く引かれてユメは転ばないよう気を付けながら船への道を登る。
「間もなく出航ですね」
時計を見たセバスチャンが呟けば船がその大きな声をあげた。
進み出した船に港からは見送りの声が聴こえる。
人混みの中に手を振り見送りをするフィニ達を見付けてユメはシエルと共に甲板の手摺へと近付いた。
「どうした?」
帽子が海へと落ちないよう押さえながら尋ねてきたシエルにユメは人混みの中で手を振るフィニ達を指さす。
「皆が手を振ってる!」
手を振ってくれているフィニ達にユメも振り返していればシエルもフィニ達の姿を見付けたのか「本当だな」と遠くなる港を見つめていた。
「坊ちゃーん!!
行ってらっしゃーい!!」
こうして無事出航となったカンパニア号は、
悲鳴と血飛沫が舞う夜へと船を進めるのであった。