赤ちゃん本丸
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ななしがあやして周り、何とか5人の赤ん坊が泣き止んだ頃、こんのすけは目を覚ました。
こんのすけにとってはこの状況が夢であって欲しかった様だ。
「やはり夢などではないのですね」
審神者専用の通販サイトで購入した抱っこ紐で前後に2人、そして赤ちゃん用の布団に転がせた3人を懸命に玩具であやすななしを見て現実だと悟ったのかこんのすけは小さく漏らした。
「しかし見事なものですね」
流石に学習したのかこんのすけは小声で話かけた。
「何とかね。しかし通販サイトが使えて良かったよ」
何かと忙しい審神者の皆様に即日発送即日お届け。
そんなキャッチコピーの通販サイトがある事を講習で聞いていた。
何でもあるという事なのでその時はその内お世話になるのだろうなと思っていたななしであるがまさか本丸に就任一日目にベビー用品を買うことになってななしは笑った。
「まさかベビー用品まであるとは」
「今や戦況は一進一退。子育ての為にと審神者を辞められても政府も困りますからね。品揃えは国内随一だと自負しております」
「そんなに凄いのに特定の人しか使えないなんて勿体無いね」
ななし自身はネット通販などこれが生まれて初めてであるが、液晶に並ぶその品揃えはこんのすけの言う通り国内随一だろうと思った。
「それでこれからどうすれば良いのかな?」
本来で有れば初期刀の顕現を経て戦場に、それから手入れ、鍛刀とやる事がある筈である。
「まさかこの子達を戦場に送れなんて言わないよね?」
ななしは布団に転がる三振を隠す様に移動すると胸に抱く山姥切を守る様に腕を構える。
「まさかその様な事!刀も握れぬ赤ん坊を戦場に送るなど、幾らなんでもあり得ません」
そう答えたこんのすけにななしは緊張を解いた。
少しとはいえ緊迫した空気を感じたのかななしの背におぶられた赤ん坊が小さく泣き出す。
「ああ、加州ちゃんごめんねー。怖かったねー」
ななしは音の出る玩具を振って加州清光と思われる赤ん坊をあやしていた。
あやすのが早かった為、先程の甲高い五重奏の再演はなく、山姥切国広と思われる赤ん坊に至ってはうつらうつらと船を漕いでいる。
「原因は分かりませぬが、誠、就任した審神者様が貴女様で良かったと思います」
こんのすけはしみじみとそう零した。
政府に聞いて来ると言って消えたこんのすけ。
ななしはこんのすけがいない間に自分と赤ん坊の部屋を整える事にした。
講習で習った事を思い出して広い本丸内を歩く。
「執務室は確か」そう独り言を漏らすななしは赤ん坊三人を寝かした乳母車を押していた。
室内、ましてや木材が敷かれた床の上で乳母車を押すことは躊躇われたがまだ歩けない赤ん坊とはいえ目を離す事は恐ろしくて出来なかった。
三つ子用のベビーカーもあったがそれでは廊下の幅と合わず大きめの乳母車に寝かせている。
「陸奥ちゃんは何か面白い物でもあったのかな?」
きらきらとした瞳で喃語を話ながら忙しなく腕を伸ばし動かし、視線をあっちにこっちにと行き来する陸奥守吉行。
「蜂須賀ちゃんは虎さんのぬいぐるみが気に入ったみたいだね」
刀派が虎徹なので冗談で買ってみたベビー用の愛らしくデフォルメされた虎のぬいぐるみは存外、蜂須賀虎徹のお気に召したらしい。
先程から咥えて離さない。
「歌仙ちゃんは、うん、ごめんね。邪魔しちゃって」
歌仙兼定は雅なものが好きだと事前の講習で聞いていた。しかしななしにはそもそもそも雅な物が分からなかった。
ならばと戦装束に花をつけている位だからと何処ぞのプリンセスばりに季節の花を乳母車に飾ってみたところお気に召したらしい。
うっとりと、自分の世界に入った歌仙兼定を邪魔しないようななしは口をつぐんだ。
そんなななしの背中で加州清光がじたばたと暴れる。
「あーあー加州ちゃんの事忘れてないよー加州ちゃんのおてて、小さくて可愛いねー」
雑という勿れ。
ななしは誰か聞いてる訳でもないのに内心呟く。
加州清光は定期的に構わないとぐずるのである。
ぐずったとしても何処が可愛いか誉めてあげるとすぐに収まるので可愛いものである。
片手で乳母車を押しながら空いたもう片方の手で加州清光の手を握って上げれば嬉しそうな声が聞こえる。
良かったと安堵の息を吐いたななしは自分の胸元に視線を落とした。
親指をしゃぶりながらもう片方の手でしっかりとななしの服を握るのは山姥切国広である。
すぐに泣き出す加州清光を前に抱いた方があやすのに都合が良かったのだが、唯一眠る山姥切国広がななしの服を握って離さない為そうはいかなかった。
赤ん坊といえど流石刀剣男士というべきか、恐ろしく力が強い。
そうしてやってきた執務室。
その奥にある襖を開けるとななしには広すぎる位の部屋があった。
ベッドに机、簡易キッチン。
部屋の真ん中にはななしの荷物が置かれている。
「今日からここが私の部屋か。広いな」
実際は単身向けの部屋より少し広いぐらいしかないのだがこれまで小さな家に沢山の兄妹と暮らしていたななしにはとても広く感じられた。
「取り敢えずベビーベットを注文してと、」
端末を取り出し、通販サイトから大きなベビーベットを注文する。
途端にズドンと音が聞こえたので振り向くと、そこにはベビーベットであろう、大きな段ボールがあった。
「相変わらず何処から来るのか分からない」
音がしたのだから落ちて来たのだろうとななしは荷物の上を覗きこむがそこには木目の天井しかない。
「まずはベッドの設置か」
ななしは時折、赤ん坊達を構いながら段ボールを開けて説明書と睨めっこをしながらベッドを自身のベッドの側に設置した。
追加でベッドのサイズに合った布団を敷くと陸奥守吉行から順にベッドへと寝かせる。
「陸奥ちゃんと蜂須賀ちゃんは大人しいね。歌仙ちゃんは暴れないでーお花も一緒だから落ち着いてー」
乳母車から抱えた際は暴れた歌仙であったがお花を側に置いてあげれば暴れていたのが嘘の様に落ち着く。
生花の為にすぐに枯れてしまうが機嫌が良いならばと、ななしは追加注文を心に決めた。
「加州ちゃんもみんなと同じベッドに行こうね」
背中から下そうとして一瞬、泣きそうになったがななしの顔を見るなり瞳に涙を浮かべながらも微笑む。
「加州ちゃん本当、可愛いよ。赤ちゃんタレントになれるよ」
言葉を理解しているかは分からないがついつい話しかけてしまう。
こちょこちょとお腹をくすぐればきゃらきゃらと笑って見せた。
「さて、我が初期刀のまんばちゃん」
ななしは抱っこ紐で抱えた山姥切国広を見た。
先程、歌仙兼定が暴れたり、加州清光が泣きそうになっても山姥切国広だけは起きる素振りもない。
「みんなの服と本体を回収に行きたいから君もベッドで眠ってほしいんだけどな」
誰も彼も赤ん坊だというのに重い鎧や防具を身につけていたが赤ん坊の玉の肌に何かあったらどうするじゃいとななしは揃いの産衣を着せていた。
そして脱がした鎧や防具は幾らななしでも五人の赤ん坊と共に荷物までは持てなかったので先程いた部屋に置いて来たのだ。
赤ん坊を皆、ベッドに収め、身軽な内に置いて来たそれらを取りに行きたいななしであるが山姥切国広はななしの服を握って離さない。
結局、無理に引き離すのを諦めたななしは何往復かして荷物を運び終えた。
これで一息吐けると思ったななしであったが赤ん坊が一斉に泣き出す。
それまですやすやと眠っていた山姥切国広までも泣き出すのでななしは慌てた。
「何で急に、あ、あー」
「ただいま戻りました!」
ポンっと、何処からともなく現れたこんのすけは悲鳴を上げた。
「今度は何事でございますか?!」
耳を押さたこんのすけは悲鳴混じりにななしへと問う。
「多分、お腹がすいたんだと思う」
始めはおむつかと思ったななしであるが彼等が泣き出したのは一斉であった。
それぞれご機嫌に過ごしていた。
だというのに泣き出したものだから彼等は空腹なのだろうとななしは当たりをつける。
「刀剣男士って赤ちゃん用のミルクを飲ませても大丈夫だよね」
「は、はい。皆さま食事も人間と変わらぬ物を召し上がりますのでミルクも大丈夫だと思われます」
ななしはこんのすけに確認するや慣れた手つきで赤ん坊用のミルクに哺乳瓶、哺乳瓶を煮沸する道具に薬缶、それからベビー用と書かれた麦茶を注文した。
「ミルクをあげないのですか?」
「その前に哺乳瓶を消毒しないと」
哺乳瓶の消毒は説明書と共にこんのすけへと託した。
託した相手は狐だが良かったのかと思ったななしであるが管狐であるから大丈夫だろうという結論に落ち着いた。
こんのすけが哺乳瓶を殺菌している間にななしは泣いている彼等に麦茶を飲ませる。
「すぐにご飯が出来るから待っててね」
ななしが実家で使っていたのは親戚のお古であった為に消毒をするだけでかなり時間を要していたが、使うのは神様だからと消毒時間の短くて高い物を購入していた。
お金が無くて何にしてもアナログ、前時代的なものしか知らないななしはしみじみと技術の発展に感嘆する。
哺乳瓶の殺菌が終わるとミルク作成に入った。
空の哺乳瓶を並べ、それぞれに規定量の粉末とお湯を注ぐ。
そして蓋をし、人肌まで温くなるのをすると一人ずつ飲ませた。
これがまた大変であった。
五人共に腹ペコだったので一人に飲ませると残りが泣くのだ。
腕に抱いていたからという理由で一番にミルクを与えられた山姥切国広はマイペースにミルクを飲んでいるが、その時ですら掴んだままの服を離さない。
加州清光はお腹が空いて不機嫌だというのにななし側にいないから顔を真っ赤にして泣いている。
残りの三人も麦茶を飲ませたとはいえ全く足りていない。
ななしもこんのすけも何とか平等に接したいのだがななしもこんのすけも使える手はそれぞれ二本しかないのだ。
仕方なしにあっちにもこっちにも、反復横跳びの動きでミルクを与えていたななしは思った。
ベビーシッターが欲しいと