創作刀剣男士
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「私は源範頼の太刀、」
とそこで言葉を切ったその刀は自身の発したその名に覚えが無いという顔の審神者の表情を見ると眉を八の字に下げた。
「・・・え、範頼様を知らない?」
戸惑い気味に尋ねられ、知らないと同意を示す審神者にその刀は頭を押さえる。
「私の事は庭の木か何かと思って下さい」
思案の後に困った様に笑ったその刀の名は蒲の太刀と名乗った。
蒲の太刀のその名の由来は彼の元主人である源範頼に由来する。
源範頼とは源頼朝の弟であり、義経の兄でもあった人物。
鎌倉で頼朝達と合流する迄の彼が母親の故郷である蒲御厨で過ごしていた事から範頼は周りから蒲殿と呼ばれていた。
そして頼朝から範頼に送られた太刀は蒲殿の太刀という事で蒲の太刀と呼ばれる事となり、蒲の太刀という名が定着したという。
「私にも銘はあったのですが皆が皆、私の事を蒲殿の太刀、蒲の太刀と呼ぶものですからすっかりその気になってしまって」
元の名は忘れてしまったのだと蒲の太刀は恥ずかし気に言った。
5.その審神者の名は
蒲の太刀って源氏刀にしては珍しいタイプだよね
6.その審神者の名は
大人しいと言うか控えめと言うか
7.その審神者の名は
他の源氏刀は陽気というか愉快なのが多いからなー
8.その審神者の名は
正直、影が薄い
9.その審神者の名は
顕現時の台詞で「私の事は庭の木か何かと思って下さい」って言ってたけどたまに本当に庭木と同化してて気付かない時がある
10.その審神者の名は
壁とかにもね
この前、不意に声をかけられた蜻蛉切が驚いて軒から転げ落ちたもん
11.その審神者の名は
>10
あるあるある
12.その審神者の名は
流石、太刀の中で隠蔽値最高の男
13.その審神者の名は
始めこそ見間違いかと思ったけど今じゃ納得だね
14.その審神者の名は
短刀とのかくれんぼでも唯一見つからないらしいな
15.その審神者の名は
なお、かくれんぼに参加していた事も忘れられる模様
16.その審神者の名は
誘った今剣ちゃん本人にまで忘れてるからな
17.その審神者の名は
今剣と蒲の太刀って仲良いの?
18.その審神者の名は
うちは仲良いよ。
刀派は違うみたいだけど本当の兄弟みたいだし今剣ちゃんは蒲の太刀を「兄上」何て呼んでる
19.その審神者の名は
蒲の太刀の元主人も義経の追討には直接関わってないし、何なら身内の武将が義経を匿って解官されてるぐらいだし確執はない感じなのかな?
20.その審神者の名は
まあ、甘えてくる今剣ちゃんに蒲の太刀は一線引いてるというか恐縮しっぱなしというか他人行儀なんだけどね
21.その審神者の名は
ちょっと蒲の太刀さん
22.その審神者の名は
嘘だろ蒲の太刀さん
23.その審神者の名は
>20
分かる。様子を見てると緊張でか汗を滝の様に掻いてるし笑顔もぎこちない
24.その審神者の名は
あんなに可愛い今剣ちゃんに兄上と慕われて何を困る事があるの?!羨ましい!!!
25.その審神者の名は
本音丸見えでワロタ
胃が痛むとはこういう感じなのかと蒲の太刀は己の腹を撫でて小さく溜息を吐いた。
昔の昔、元の主人が兄弟に振り回される度に胃が痛むと腹を押さえていたのを思い出す。
その時の蒲の太刀は未だ鋼の身で、肉体など勿論持ってはいなかったので臓腑が痛むという事にピンっと来なかった。
しかし今ならよく分かる。
「ストレス、とは恐ろしいものだ」
と感慨深く溢した。
そんな蒲の太刀の元へ今剣が笑顔で駆けてくる。
「あにうえ」と親し気に、大きく腕を振って向かって来る今剣に蒲の太刀の胃は再びちくりと痛む。
蒲の太刀と今剣は同じ刀派でもなければ親である刀匠が師弟であった事実もない。
そもそも蒲の太刀は元の主人と同じ呼び名が嬉しくて元の名を忘れた薄情者である。
元の名と共に親の顔もすっかり忘れてしまった。
だったら今剣とは正真正銘兄弟の関係の可能性もあり得るが他の三条派の刀の様子を見れば分かる。
蒲の太刀は三条派と縁も縁もない全くの赤の他刃である。
ならば何故そんな縁もない今剣から蒲の太刀が兄上と呼ばれているかというと今剣の元の主人である源義経が蒲の太刀の元の主人を兄上と呼んでいたからで、彼もその真似をしているのだ。
「あにうえ!いまからみなとかくれんぼをするのです!いっしょにしましょう」
「今剣はこの前も私を誘ってくれただろう?偶には岩融殿を誘ってはどうだろうか」
「岩融はあのからだです。かくれてもすぐにみつかってしまいます!」
今剣の言葉にだろうなと蒲の太刀は内心頷く。
加えて短刀達の偵察値を考えれば薙刀の岩融が短刀達のかくれんぼに参加するなど無茶な話。
けれどこの本丸の岩融は蒲の太刀が顕現する以前はかくれんぼによく参加していたのだという。
「それに岩融はせっかくなのだからあにうえとあそんでこいといっておりました!だから岩融のことはきにしなくてだいじょうぶですよ」
そう言った今剣の向こう側、此方の様子を窺っていたのだろう。
向かいの軒に立つ岩融が蒲の太刀に向かってサムズアップしていた。
兄弟で楽しんで来いとでも言っているのだろう。
岩融の要らぬ気遣いに蒲の太刀は渇いた笑みを浮かべる。
蒲の太刀と今剣は真の兄弟ではない。
元の主人達がそうであっただけで、蒲の太刀は親の顔も忘れた薄情物である。
キリキリと内で痛む胃を蒲の太刀は周りに分からぬよう押さえる。
「(範頼様、)」
「さあさあ、いきましょう!あにうえ」
今剣が自身を兄と言うのなら、年長の者らしく今は遊んでいる暇などないのだと、諭し、袖を引く今剣の小さな手を解く事も許される。
許される筈なのだが、
「(今なら義経殿のお誘いを断る事が出来なかった貴方様のお気持ちがよく分かります)」
今剣の大きな瞳が期待と喜びに満ち溢れ、煌めく様に蒲の太刀は抵抗が出来なかった。
ただの刀であった当時は内心困りながらも義経に振り回される範頼を不思議に思っていた蒲の太刀であるが、いざ己が元主人と同じ立場に立ってみるとその気持ちがよく分かる。
「(ああ、胃が痛い)」
けれど断る事も出来ず、蒲の太刀は今剣に手を引かれるがまま、短刀達が集まる集合場所へと向かった。
蒲の太刀は源氏の刀でありながら源氏の刀が苦手である。
そもそも蒲の太刀の実装が遅かったのも知名度だとか、逸話がだとかいう問題があった訳ではなく他の源氏刀と会うのが嫌だと蒲の太刀がごねたからである。
結局、スカウトに来た役人から義経の刀であった今剣や膝丸、頼朝の刀であった髭切も戦場で活躍しているというのに自身は何もしなくて良いのかと言われたからだ。
そしてその囁きにより元主人である範頼が他の兄弟よりも鎌倉入りが遅れて大変苦労した事を思い出し、急遽実装へと至った。
しかしだからといって源氏刀に対する苦手意識が無くなった事もなく、寧ろ心構えもないままに実装へと至った為に蒲の太刀は源氏刀を前にすると落ち着かない。
そもそも、と蒲の太刀は内心、拳を握る。
源氏は身内争いが多すぎるのである。
お陰で蒲の太刀は源氏刀が苦手だし、木曽義仲と縁のある刀と出会ってしまったらその場から逃げ出す自信がある。
「(巴殿を紹介された時は思わず逃げ出してしまったし)」
巴という名に、薙刀と聞いて巴形薙刀を義仲の妾であった巴御前の縁者と勘違いした故である。
その時はすぐさま勘違いに気付いて謝った蒲の太刀であるがそれほどに駄目なのだ。
そして義仲程でも無いが義経と縁の者も苦手である。
蒲の太刀の元主人は頼朝と義経が対立した際、せめて中立に立てば良かったものの頼朝方に付いた。
範頼と義経が直接対峙する事は無かったものの、範頼は自身の兵を義経追討に向かった藤原範資に貸している。
結果として範資は義経を討つどころか彼を匿い、それが露見した事で解官されているのだが範頼が義経の事を見捨てた事に変わりはない。
「(実の、血の繋がった兄弟だというのに)」
平気で身内争いをするのが源氏である。
そんな事があったにもかかわらず今剣はあにうえ、と蒲の太刀を慕って来るのだ。
その理由が分からず、いつか油断した隙を付かれ寝首を掻かれるのでは、と蒲の太刀は今日も内心怯えている。