病院から帰った後、老人は出かけた。
知り合いに会うとかで夕食はいらないとの事。
なら軽く済まそうと思っていたのだが

｢サクラさん、今日の夕飯は何ですか？｣

｢献立が決まってないなら俺、ハンバーグが良いです｣

｢なら私は海老フライ！｣

他人の家だからと遠慮もなく注文ばかりの二人にサクラの思惑は脆く淡く崩れさる。

｢・・・今日の夕飯、めんどくさいからもうぶぶ漬けでもいい？｣

｢ぶぶ漬けって早く帰れって催促じゃないですか！！｣

｢よく知ってるね｣

ジョウトのある地方の婉曲表現だと言うのに意味を理解したトウヤに凄い凄いと拍手を送れば｢そこは意味を知らないふりをしましょうよ｣とサクラは言われる。

｢だって早く帰ってくれないかなぁと思ったのは本音だし｣

包み隠さず自分の心意を伝えればトウコとトウヤは大袈裟にショックを受けた顔をして自分達の後ろにあった机に足をぶつけていた。

｢｢酷い！｣｣

｢そんな事言われても・・・

私、さっき病院を退院しただけだしね｣

病院では特に何かあったというわけでもなく様子見で滞在していたので体力は有り余っていたのだが気分的に乗り気でない。
ここの所どたばたしていたので今日ぐらいはだらけていたかったのだ。

｢退院って、

サクラさん何処か体の調子が悪かったんですか？｣

サクラの発した"退院"という単語に反応を示すトウコ。

｢あれ、私言ってなかったっけ｣

話していたと思っていたのだがそんな事はなかったらしい。
見るからに困惑するトウコとトウヤにサクラは入院してた事、ついでに近況を二人に話した。

結果、

｢その警察官ぶっ飛ばす！！｣

｢いや、その前にＮでしょ。

あの野郎、私のサクラさんに迫る何て｣

説明の仕方を間違えたのか二人に変なスイッチが入りました。
リザードンの燃え盛る尻尾の炎のように背景を怒りの炎に燃やすトウヤとトウコ。

｢そうだな、まずはあの変態ストーカーだよな！｣

｢まずはあいつを吊し上げてやる｣

二人に火を付けたのは自分だと言うのに我関せず焉と一人お茶を飲むサクラ。
その側ではテープでぐるぐる巻きにされているモンスターボールが転がり暴れている。

｢若いって良いね｣

と、二人とは年齢がそんなに変わらないにも関わらず染々と年寄り臭い事を呟くサクラ。
そんなサクラにゾロアークは突っ込みを入れたいのだが今はテープでぐるぐる巻きにされたモンスターボールの中、入れるに入れられず虚しく彼女の側を転がっていた。

｢じゃあ、まずはあの緑の変態から！｣

｢あの緑の変態ストーカーからね！｣

サクラがお茶を飲み、ほっこりしている間に二人の話しは纏まったらしい。
まずはＮから吊し上げてやると息を巻く二人が向かったのは、二階に続くサクラの家の階段だった。

｢ちょっと、どうしてＮさんを探すのに家の階段を登ってるの｣

｢え、だって｣

｢Ｎは

サクラさん家の屋上に｣