受け止めてくれたゾロアークの腕から降りて一人｢十点満点！｣なんて体操の選手みたいにポーズをとってみたら

｢珍しいな、お前が空から落ちてくるなんて｣

と上からの声。
見上げればおじいちゃんが二階の窓から煙草を吸っていた。

｢しかも着陸の準備もなく・・・先生、お疲れさん｣

｢おじいちゃん、これには色々訳があってね｣

『大丈夫だ、じいさん。何時もの事だから』

｢何時ものって何ですか？！何時ものって、私そんなに落ちてるんですか｣

『五月蝿い。声を荒げるな』

ゾロアークに叩かれた。
パートナーを叩く何てどういう事なのとか思うけど反論出来るわけもなく｢すみません教官｣何て答えればゾロアークの容赦ないプロレス技が私を襲う。

｢ギブギブギブギブ！

本当にもうギブです教官！｣

『まだ言うか！』

私の一言でゾロアークの締め技に力がより入る。
やばいどころじゃない、意識が、意識が遠退く。

｢もうその辺にしてやってくれ先生。客も来たようだしな｣

飛びかけか意識の底でおじいちゃんの｢どっこいしょ｣という声が聴こえた。
力が緩くなったゾロアークの腕から逃れ、思いっきり息を吸う。


のだが、横からミルタンク捨て身タックルでも受けた様な衝撃に意識がまた飛びかけた。

｢うわぁぁぁんっ！

サクラちゃんごめんね僕のアーケオスが振り落として
何処も怪我してない！？｣

｢クダリ、さん。
私は大丈夫ですから｣

ね？と子供に諭すように言えばクダリさんは良かったと笑った。
私も内心、意識が飛ばなくて良かったと思う。

｢それより此処が弁当屋


ライモン亭ですよ｣


｢ここが・・・

思ってたより小さいね｣

クダリさんの素直な感想に神経がぴくりとしたが此処は我慢だ。
気にしている事とはいえ、相手は何を言ってもお客様。

｢我慢我慢・・・｣

『心の声が出かかってるぞ』

ゾロアークの指摘におっといけない、とサクラは慌てて口を押さえた。

｢おい、サクラ。

そのぼうず、客なんだろう？だったらすぐにこっち来て相手してやれ｣

｢は～い、おじいちゃん｣

｢え、おじいちゃん？｣

本日二度目であろうか、クダリの訳が分かっていない顔にサクラは面白い人だなと笑った。

｢クダリさんには言って無かったんですけどこの弁当屋って私の家何です。

助けてもらったお礼にたっぷりオマケしますからちょっと待ってて下さいね｣

そう言ってサクラは驚くクダリを尻目に弁当屋に入ると少ししてカウンター付きの窓に現れた。

｢これがメニューです｣

と渡されたのは手書きのメニュー。

｢結構品数あるんだね｣

｢はい、お客さんの要望を聞いてたら何時の間にか増えちゃいまして｣

｢そうなんだ・・・あ、エビフライ弁当！でも唐揚げも食べてみたいな！｣

だけどこっちも美味しそう、でもやっぱりと悩むクダリにサクラが一つ提案を出した。


｢ミックスフライ？｣

｢はい、それなら色々な種類のおかずが楽しめますよ｣

即決だった。
少し時間がかかるからとお茶の入ったカップを渡され店の前に置かれたベンチを勧められてクダリは腰を下ろす。
店からは揚げ物を揚げる音が聴こえた。

｢注文受けてから作るんだ｣

｢出来立てホカホカが家の売りですから｣

そう言って店から出てきたサクラの手には透明な袋にリボンでラッピングされた物。

｢それ、お菓子？｣

と目を輝かせたクダリが立ち上がればポケモン用のですけどと渡してくる。

｢ポロックと言いまして、イッシュから離れた地方のお菓子なんです｣

｢これが、ポケモンの？｣

ぱっと見た感じは四角い飴、もしくはカラフルなキャラメルのような見た目。
ポロックが珍しくて眺めるクダリ、サクラは店に呼ばれて戻るとお弁当を袋に入れてまた出てくる。

｢お待たせしました｣

と渡された弁当を受け取り、まだ代金を払っていない事に気付いたクダリは慌てて財布を出すのだが止められた。

｢え、でも代金｣

｢これも助けてもらったお礼です｣

だよね、おじいちゃんとサクラが店の中にいた老人に声をかければ

｢こいつがあんたにお世話になったて聞いてな。
弁当はそのお礼だ｣

と、言う。

｢豪快なおじいさんだね｣

｢それが自慢なんです｣

ふふ、と笑うサクラにクダリも笑った。