ライモンの警察署に来て一番にした事は身分証の確認だった。
財布から勝手に抜かれたトレーナーカードを使って、個人情報、トレーナーとしての経歴を調べられた。
その膨大な情報量に私はこの先トレーナーカードを無くすまいと心に誓う
だってえげつない程の情報量なのだ。

｢君、養子なんだね｣

｢ええ、まあ｣

トレーナーカードなのに戸籍謄本何かに載るような情報が入ってるのもどうかと思う。

｢保証人の人も可哀想にね。良かれと思って養ってた子供がまさかこんな爆発事件を起こすなんて｣

・・・さっきからやってないって言ってる筈なんだけどな
全然聞いて貰えないし警官に嫌味言われて何なの今日。

これ以上幸せを逃がしてたまるかと溜め息が出そうとなるのを我慢するサクラだが既に限界が近い。
自分の個人情報を読み上げては嫌味を言う警官にサクラはほとほとうんざりをしていたのだ。

｢へー君、ジム戦とかもしてたんだ・・・なになに｣


そこで、警官の嫌味が止まった。
何事かと、私もジュンサーさんも頭を傾げていれば確かに警官の体は震えていた。
何だトイレでも行きたいのかなこの人はと女子らしからぬ事を考えていれば震えていた警官はやっと口を開く。

｢君、この記録に嘘は？｣

出された書類に警官が指を指したのはジムやリーグ戦の記録だった。
そこをだいたい目を通し、指折り数えてみる。うん、多分合ってる筈だ。

｢ありません｣

と答えたら｢嘘だ！｣と返されてついでに唾も飛んできた。汚ない。

｢ベテラントレーナーでもない、若いトレーナーのお前がこんな記録を作れるわけがないだろ！｣

トレーナーに若いとか関係無いと私は思う。
実際、私とそう年は変わらずジムリーダーになった人やとても強い引きこもりにニートを知っている。
が、この警官はそれを知らないのか私の経歴や記録を否定した。

あれか、私の記録が偽造だと言いたいのか。

そうだとすればとても遺憾だ。
紙に書かれた記録はゾロアークと一緒に頑張って作ってきたもの。
それをいまさっき会った人間に否定される覚えはない。

｢何だその顔は

・・・まあ、良い。このガキは拘置所にでも入れておけ。このトレーナーカードの情報に間違いが無いか確認を取ってから取り調べを再開する｣


事情を話せばすぐに帰して貰えるだろうと思ってたけど、警察もそう甘くは無いようだ。
ジュンサーさんに連れられ、入れたのは鉄の檻。
夜は冷えるから、と毛布を渡されたが毛布の前に靴かスリッパが欲しい。
結局そんな我が儘は言えなかったけど


｢うわぁ｣

何となく足の裏を見て見たら足は泥か血か分からないけど酷く汚れていた。
ガラスが刺さった傷は手当てをしないまま放置していたせいで膿んでいる。

｢ジュンサーさんに頼んだら怪我の手当て位してくれるかな｣

鉄格子に触れてジュンサーさんを呼んでみたけど返事は無い。
というよりそれどころではないと言う感じで鉄格子の向こうは妙に騒がしかった。

｢何かあったの？｣

と呟いた直後。
拘置所の外へと接する壁が音をたてて大穴を空けた。