青い空に暖かな大陽、

気持ちのいい風が吹いて

彼に気持ち良いね、と言えば

『そうだな』

と彼は私の腕に顔を埋めながら答えた。
ポケモンの背中に乗って空を飛ぶのは慣れているが何時もは早朝か夜中なのでこんな昼間に乗るのは久し振りに近い。

｢あ、そのまま真っ直ぐに飛んで下さいね｣

｢分かってるよ｣

まさかさっきまで悪そうな人達に追われてたなんて嘘の様だ。


｢ねえ、君の名前教えて｣

男の言葉にサクラはそういえば自己紹介がまだだった事を思い出す。

｢私はサクラって言います。この子はゾロアーク｣

頭を撫でられた彼は返事はなく欠伸を出す。

｢ゾロアーク？｣

｢ゾロアークです｣

男はサクラが抱くポケモンの名に頭を傾げていた。
ゾロアークと言えば高さが1.6ｍはあるポケモンなのだがサクラが抱いた"ゾロアーク"はどう見ても高さが1ｍも無く、容姿も一般的ゾロアークと異なっていた。

｢ゾロアのニックネーム？｣

サクラの腕に顔を埋めたポケモンはどう見てもゾロアークでなくゾロアだ。
なら、ゾロアークとはこの先進化するであろうゾロアのニックネームなのか

だがサクラは訳が分からない様子の彼を楽しむ様な笑みを浮かべて｢彼のニックネームは"教官"ですよ｣と答えると『だから教官は止めろ！』とゾロアークが吠えた。

｢ごめん、ごめん。

だってゾロアークってたまに教官とか先生っぽいんだもん｣

ポケモンと会話してる？と言った風に見えるサクラ。
男の視線に気付いたサクラは｢会話の途中でごめんなさい｣と謝る。

｢えっと、お・・・兄さんの名前は？｣

｢僕はクダリ！サブウェイで駅員してる。

僕達を運んでるのはアーケオス｣

｢クダリ、さん。改めてさっきはありがとうございました｣

深々と頭を下げたサクラにクダリは軽く肩を叩く。

｢気にしないで
僕は君を助ける、君が僕を助ける。これでギブアンドテイク！｣

｢だから良いの！｣と笑ったクダリにサクラも微笑んだ。
互いに自己紹介を終えたサクラは自分達を運ぶアーケオスの羽根を優しく撫でる。

｢アーケオスもありがとう。
重くて大変なのに私を乗せてくれて｣

そんな事無いよ、と答えるアーケオスだったが様子がおかしい。
鳴き声が途切れ、少し震えているのだ。
先程迄なにもなかっただけにクダリも驚いていた。

｢アーケオス？どうしたの？｣

『クダリさん、もう無理です・・・ぷはっ』

人間で言う笑うのを耐えているかのような様子、無理と言った通りアーケオスは体をじたばたと動かし笑い出す。

傾くサクラの体を重力が地面へと引っ張る。

｢｢あ、｣｣

サクラとクダリの声が重なった。

『脇腹はマジ無理』

とアーケオスの声が聞こえ、私が撫でた所が脇腹だったんだろうなとサクラは考えていた。
クダリが必至な顔をし叫んでいるが、サクラはかなり余裕のある表情。

｢クダリさんはアーケオスが落ち着いたら此処に降りて来て下さい！

私は大丈夫ですから｣

そう言ったサクラの体は地面との距離が殆ど無かった。
それでも余裕なサクラ、彼女の腕にいたゾロアークは飛び出し姿を変える。


タンッ

と地面に足を付ける立派な脚に

落ちてくるサクラを支える腕

伸びた鬣はまさしくゾロアークだった。