双子と弁当屋の娘
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どうやらダルマッカも、ダルマッカが連れてきたポケモン達も彼のポケモンらしい。
『林檎、もっと頂戴!』
手を出してねだるダルマッカにサクラは「はいはい」と兎に切った林檎を渡した。
『ありがとう』
「どういたしまして」
ご丁寧に頭を下げたお行儀の良いダルマッカの頭を撫でれば、それを見たプラスルとマイナンの二匹が勢いよく飛びかかってくる。
「一体、何っ」
『僕達も』『撫でて』
どうやらダルマッカの頭を撫でているのを見てやきもちを妬いたらしい二匹。
その愛らしさに思いっきり抱き締めていればゾロアークが呆れた顔をしてこちらを見ていた。
「ゾロアークもやきもち?」
『焼き餅?』『やきもちー!』
『そんなんじゃねぇよ』
ぷいっと顔を反らすゾロアークにサクラは強がっちゃってと笑う。
「しょうがないからゾロアークもぎゅーね!」
『一緒に』『ぎゅー』
二匹と結託して抱きしめようとすれば、ゾロアークはゾロアに化けてサクラが回した腕から逃げ出す。
「恥ずかしがらなくても良いのに・・・あたっ」
ゾロアークを追い回していた筈なのに突然、目の前が真っ白になった。
別に気を失ったわけではない、いる事をすっかり忘れていた彼にサクラがぶつかったのだ。
「ごめんなさい」
ぶつかった事に存在を忘れかけていた事も含めて謝った。
「僕は大丈夫」
笑みを浮かべて返した彼にサクラは安心する。
近頃は誰かにぶつかる度に絡まれていたので彼の至って普通な反応にサクラは新鮮さを感じれた。
『なにやってんだよ』
見事な跳躍力でサクラの肩へと移ったゾロアーク。
サクラと一緒になってゾロアークを追いかけていたプラスルとマイナンもサクラの空いた肩や頭に移動する。
「ゾロアークを追いかけるのに夢中になっちゃって」
『『大丈夫?』』
大丈夫、大丈夫とサクラが二匹に手を伸ばせば、その腕を使って二匹は何時もの定位置であるサクラの腕の中に収まった。
「二匹は優しいのに、ゾロアークは・・・」
『何だよ』
横目で見ながらあからさまに溜め息を付けばゾロアークは噛み付くのだが凝視とまではいかない男のまっすぐな視線が気になって一人と一匹はやり取りを止める。
「君はポケモン達の話が聞こえるんだね」
男の言葉にサクラの動きが止まった。
肩にいたゾロアークも動きを止めて男を見つめる。
「・・・何で」
驚きの余り、思考までも止まった頭で唯一口に出せたのはその短い言葉だけ。
サクラの問いに男は不思議そうな顔をした。
「何でってポケモンと会話していたのは君だよ。
世の中には長く付き合っていれば言葉が解らなくても通じ合えるって言っている人間がいるみたいだけど君は確かにポケモンと会話していた」
「会話している様に見えただけかもしれないですよ」
やはり彼は先程の様に笑みを浮かべている。
が、何時からだ。彼の笑みが薄ら笑いに見える様になったのは
「君達は只、自分の言いたい事を言うだけじゃなく互いの言葉を理解し、確りと受け答えをしていた。
僕は君がポケモンと話していたと断言出来る」
「どうして」
そこまで言えるのか。
そう思うと同時にサクラの中には仮定が一つ。
まさか、そんな
あり得ないと思いながらもその仮定ならば彼の言葉も納得出来る。
彼はまるでサクラとポケモンの会話を理解しているような口振りだった。
サクラの言葉は理解出来て当たり前、人間が理解出来る言葉で話しているのだから
ならポケモンの言葉は?
いくらサクラとポケモンが会話している様に見えても普通の人にはポケモンがただサクラに向かって鳴いている様にしか見えない。
なら彼が先程否定した"会話"しているのでなく"通じ合っている"説でも充分だ。
だが、彼は自分からその説を否定し"会話"していると断言した。
それはつまりサクラが話す言葉は勿論、ポケモンが話す言葉も理解しているという事。
「だって、僕もポケモンの話が聞こえるから」
まるでサクラの思考を読んでいたかの様に彼は答えた。
サクラは思わず足を一歩、後ろに引く。
「ポケモンの声を聞ける人を見るのは自分以外で初めてだよ」
嬉しいなと素直に彼は気持ちを伝えてくるのに、サクラは何だか得体のしれないモノにでも遭遇したような気分だった。
例えるなら見た目は見慣れたものなのに中身は不明で未知なるモノ。
見た目は見知ったモノでも中身はよく分からないものなのでどう対処したら良いのか分からない。
目の前の男も同じで、見た目は普通の人間だが中身は得体が知れない為にどう対処対応すれば良いのか解らなかった。
「実は君の事は前から知ってたんだ」
男の前から知っていた告白にサクラは「何処かであったりとか」したのか尋ねれば「していない」と彼は答える。
「僕、トウコとトウヤに興味を持って旅する二人の後を追ったりしてたんだ。そうしたら彼等と君がこの街で会った。始めはそんなに興味が無かったんだけどトウコやトウヤと一緒に観察している内に君がポケモンの声を聞けるのに気付いてね」
「ちょっと待って下さい!」
早口で淡々と話す彼の話しにだんだんと頭の処理が出来なくなったサクラは一旦、無理矢理に彼が話すのを止めさせた。
そこで何とか深呼吸を繰り返し、彼が話した事を思い出す。
「つまり、貴方はトウコちゃんとトウヤ君が言ってたストーカーさん何ですね。
あれ、でもさっきは違うって」
言った筈だ。
しかしトウコトウヤから聞いていたストーカーの特徴は目の前の彼と一致しているし、男が先程話した事を総合すれば
目の前の男=ストーカー
は間違いない。
なら、何故男は自身がストーカーである事を否定したのか。
今さら自身がストーカーだと仄めかすのなら否定する事も無かったのに
サクラが男に対してそんな疑問を抱いていれば、彼はご丁寧にも答えてくれた。
「他人にストーカー呼ばわりされる覚えは無いけど僕みたいな人間をストーカーと呼ぶのならストーカーなのかもね」
疑問にあっさり答え、自身をストーカーだと認めた男にサクラはあんぐりと口を開く。
男の潔さに呆れ半分、驚き半分のサクラにゾロアークが小さく耳打ち。
『こいつ、ストーカーの意味を解って無いんじゃないの』
「・・・かもしれない」
さっきの薄笑いは何処へやら無邪気にポケモンと戯れる男に視線を向けた。
「まあ、それは良いとして何で二人のストーカーさんがまだライモンにいるんですか」
既にトウコもトウヤもライモンを出て違う街にいるのだ。
なのに二人のストーカーである彼はまだライモンにいて、サクラの目の前にいる。
「何でって、君にも興味を持ったからだよ。トウコやトウヤとは違う興味、君はポケモンの声が聞こえる」
一歩近付く男にサクラは一歩下がった。
「君にも問いたい。僕と同じ様に声が聞こえる君に」
「・・・何をですか」
「人間の都合でモンスターボールに閉じ込められるポケモンは果たしてシアワセなのか、否か」
じりじりと迫る男にサクラも少しずつ後ろへ下がっていたが、とうとう下がる事も出来なくなってしまった。
木に当たり、彼の腕が邪魔をして横からも逃げられない。
逃げ場を四方塞がれたサクラに男はその端整な顔を近付ける。
二人の距離が一定を越えた所でサクラは彼の胸板を押し、これ以上近づけさすまいと抵抗するのだが既に力負けしていた。
「そんなの、
私に聞かずにポケモンに聞けば良いじゃないですか!」
サクラが声を上げたと同時に肩にいたゾロアークがサクラと男の間に飛び出す。
その刹那、ゾロアークが化けていたゾロアの姿が霞み、男は何か強い力で後ろに飛ばされる。
飛ばされた衝撃で視界に入り込む迄ずれた帽子を直せば目の前には2メートルはあろうかオレンジの巨体。
風に靡く立派な鬣、鋭い目付きで男を睨むウインディはサクラを守るにして立ち塞がる。
「初めてみるポケモンだね。
君の肩で僕を威嚇している子達も初めて見るし君の周りは僕にとって初めてだらけだ」
男の澱んだ瞳が一瞬だけ輝いた気がした。
一度、ゾロアークに飛ばされたにも関わらず先程から言うサクラへの興味か、それともサクラが連れたポケモン達へ好奇心からか男は此方に近付いてくる。
「ゾロアー・・・今はウインディだね」
サクラはウインディの背に跨がると雑木林から出るようお願いした。
『良いのか』
ちらりと此方へ向かってくる緑を見て、彼は尋ねるのだがサクラは彼の鬣に顔を埋めて頷く。
「あの人怖い」
それがサクラの率直な感想。
トウコとトウヤと同様にストーキングされていた事よりも相手の得体の知れない雰囲気にサクラは恐怖した。
サクラを背に乗せたウインディは彼女が確りと自分の体にしがみついているのを確かめると近付く男を睨み付けて"にほんばれ"する。
薄暗い雑木林に視界を遮る程の強い日差しが差し込むと、相手が目を瞑る内に雑木林を脱け出した。
其処から"こうそくいどう"を使い目にも留まらぬ速さで雑木林から離れればノボリとクダリと会う約束をした噴水はすぐ。
足を止めると同時に姿をウインディからゾロアークに戻ってもらい、彼の肩から降りたサクラはさも走ってきたかの様な素振りで噴水の反対側にいた二人の前に出る。
「すみません、長いことお待たせして」
そう言ったサクラの足元には少し遅れてゾロアに化けたゾロアーク。
「そんなに待ってない!」
と言ったクダリからは何やら咀嚼の音が聞こえた。
見れば少し前に彼が食べたいと言っていたポップコーンがピカチュウを模した容器に入ってクダリに抱えられている。
「待ったと言ってもほんの10分程度でございます」
ノボリの言葉にサクラは腕時計を見れば、確かに二人と別れてから10分経ったか経っていないかだった。
「嘘っ」
あれほど長く感じた時間が10分!
その事実にサクラはただ驚くしか無い。
まだ遊園地で遊んでもいないのに体を襲う疲労感に深い溜め息を吐いていれば何時の間に肩へ移動したのか、プラスルとマイナンが『お疲れさん』と言わんばかりにサクラの肩を叩いた。
噴水の縁に座っていたクダリは立ち上がり、
「じゃあ、サクラちゃんも戻ってきたし」
サクラの手を掴むと
「さっそく園内を回りましょう」
もう片方はノボリが掴む。
「ライモンの遊園地は凄く大きいから」
「半日あっても周りきれません」
のんびりしてはいられないと言う二人に「そうですね」とサクラは笑った。
遊園地にはまだ来たばかりなのだから
『林檎、もっと頂戴!』
手を出してねだるダルマッカにサクラは「はいはい」と兎に切った林檎を渡した。
『ありがとう』
「どういたしまして」
ご丁寧に頭を下げたお行儀の良いダルマッカの頭を撫でれば、それを見たプラスルとマイナンの二匹が勢いよく飛びかかってくる。
「一体、何っ」
『僕達も』『撫でて』
どうやらダルマッカの頭を撫でているのを見てやきもちを妬いたらしい二匹。
その愛らしさに思いっきり抱き締めていればゾロアークが呆れた顔をしてこちらを見ていた。
「ゾロアークもやきもち?」
『焼き餅?』『やきもちー!』
『そんなんじゃねぇよ』
ぷいっと顔を反らすゾロアークにサクラは強がっちゃってと笑う。
「しょうがないからゾロアークもぎゅーね!」
『一緒に』『ぎゅー』
二匹と結託して抱きしめようとすれば、ゾロアークはゾロアに化けてサクラが回した腕から逃げ出す。
「恥ずかしがらなくても良いのに・・・あたっ」
ゾロアークを追い回していた筈なのに突然、目の前が真っ白になった。
別に気を失ったわけではない、いる事をすっかり忘れていた彼にサクラがぶつかったのだ。
「ごめんなさい」
ぶつかった事に存在を忘れかけていた事も含めて謝った。
「僕は大丈夫」
笑みを浮かべて返した彼にサクラは安心する。
近頃は誰かにぶつかる度に絡まれていたので彼の至って普通な反応にサクラは新鮮さを感じれた。
『なにやってんだよ』
見事な跳躍力でサクラの肩へと移ったゾロアーク。
サクラと一緒になってゾロアークを追いかけていたプラスルとマイナンもサクラの空いた肩や頭に移動する。
「ゾロアークを追いかけるのに夢中になっちゃって」
『『大丈夫?』』
大丈夫、大丈夫とサクラが二匹に手を伸ばせば、その腕を使って二匹は何時もの定位置であるサクラの腕の中に収まった。
「二匹は優しいのに、ゾロアークは・・・」
『何だよ』
横目で見ながらあからさまに溜め息を付けばゾロアークは噛み付くのだが凝視とまではいかない男のまっすぐな視線が気になって一人と一匹はやり取りを止める。
「君はポケモン達の話が聞こえるんだね」
男の言葉にサクラの動きが止まった。
肩にいたゾロアークも動きを止めて男を見つめる。
「・・・何で」
驚きの余り、思考までも止まった頭で唯一口に出せたのはその短い言葉だけ。
サクラの問いに男は不思議そうな顔をした。
「何でってポケモンと会話していたのは君だよ。
世の中には長く付き合っていれば言葉が解らなくても通じ合えるって言っている人間がいるみたいだけど君は確かにポケモンと会話していた」
「会話している様に見えただけかもしれないですよ」
やはり彼は先程の様に笑みを浮かべている。
が、何時からだ。彼の笑みが薄ら笑いに見える様になったのは
「君達は只、自分の言いたい事を言うだけじゃなく互いの言葉を理解し、確りと受け答えをしていた。
僕は君がポケモンと話していたと断言出来る」
「どうして」
そこまで言えるのか。
そう思うと同時にサクラの中には仮定が一つ。
まさか、そんな
あり得ないと思いながらもその仮定ならば彼の言葉も納得出来る。
彼はまるでサクラとポケモンの会話を理解しているような口振りだった。
サクラの言葉は理解出来て当たり前、人間が理解出来る言葉で話しているのだから
ならポケモンの言葉は?
いくらサクラとポケモンが会話している様に見えても普通の人にはポケモンがただサクラに向かって鳴いている様にしか見えない。
なら彼が先程否定した"会話"しているのでなく"通じ合っている"説でも充分だ。
だが、彼は自分からその説を否定し"会話"していると断言した。
それはつまりサクラが話す言葉は勿論、ポケモンが話す言葉も理解しているという事。
「だって、僕もポケモンの話が聞こえるから」
まるでサクラの思考を読んでいたかの様に彼は答えた。
サクラは思わず足を一歩、後ろに引く。
「ポケモンの声を聞ける人を見るのは自分以外で初めてだよ」
嬉しいなと素直に彼は気持ちを伝えてくるのに、サクラは何だか得体のしれないモノにでも遭遇したような気分だった。
例えるなら見た目は見慣れたものなのに中身は不明で未知なるモノ。
見た目は見知ったモノでも中身はよく分からないものなのでどう対処したら良いのか分からない。
目の前の男も同じで、見た目は普通の人間だが中身は得体が知れない為にどう対処対応すれば良いのか解らなかった。
「実は君の事は前から知ってたんだ」
男の前から知っていた告白にサクラは「何処かであったりとか」したのか尋ねれば「していない」と彼は答える。
「僕、トウコとトウヤに興味を持って旅する二人の後を追ったりしてたんだ。そうしたら彼等と君がこの街で会った。始めはそんなに興味が無かったんだけどトウコやトウヤと一緒に観察している内に君がポケモンの声を聞けるのに気付いてね」
「ちょっと待って下さい!」
早口で淡々と話す彼の話しにだんだんと頭の処理が出来なくなったサクラは一旦、無理矢理に彼が話すのを止めさせた。
そこで何とか深呼吸を繰り返し、彼が話した事を思い出す。
「つまり、貴方はトウコちゃんとトウヤ君が言ってたストーカーさん何ですね。
あれ、でもさっきは違うって」
言った筈だ。
しかしトウコトウヤから聞いていたストーカーの特徴は目の前の彼と一致しているし、男が先程話した事を総合すれば
目の前の男=ストーカー
は間違いない。
なら、何故男は自身がストーカーである事を否定したのか。
今さら自身がストーカーだと仄めかすのなら否定する事も無かったのに
サクラが男に対してそんな疑問を抱いていれば、彼はご丁寧にも答えてくれた。
「他人にストーカー呼ばわりされる覚えは無いけど僕みたいな人間をストーカーと呼ぶのならストーカーなのかもね」
疑問にあっさり答え、自身をストーカーだと認めた男にサクラはあんぐりと口を開く。
男の潔さに呆れ半分、驚き半分のサクラにゾロアークが小さく耳打ち。
『こいつ、ストーカーの意味を解って無いんじゃないの』
「・・・かもしれない」
さっきの薄笑いは何処へやら無邪気にポケモンと戯れる男に視線を向けた。
「まあ、それは良いとして何で二人のストーカーさんがまだライモンにいるんですか」
既にトウコもトウヤもライモンを出て違う街にいるのだ。
なのに二人のストーカーである彼はまだライモンにいて、サクラの目の前にいる。
「何でって、君にも興味を持ったからだよ。トウコやトウヤとは違う興味、君はポケモンの声が聞こえる」
一歩近付く男にサクラは一歩下がった。
「君にも問いたい。僕と同じ様に声が聞こえる君に」
「・・・何をですか」
「人間の都合でモンスターボールに閉じ込められるポケモンは果たしてシアワセなのか、否か」
じりじりと迫る男にサクラも少しずつ後ろへ下がっていたが、とうとう下がる事も出来なくなってしまった。
木に当たり、彼の腕が邪魔をして横からも逃げられない。
逃げ場を四方塞がれたサクラに男はその端整な顔を近付ける。
二人の距離が一定を越えた所でサクラは彼の胸板を押し、これ以上近づけさすまいと抵抗するのだが既に力負けしていた。
「そんなの、
私に聞かずにポケモンに聞けば良いじゃないですか!」
サクラが声を上げたと同時に肩にいたゾロアークがサクラと男の間に飛び出す。
その刹那、ゾロアークが化けていたゾロアの姿が霞み、男は何か強い力で後ろに飛ばされる。
飛ばされた衝撃で視界に入り込む迄ずれた帽子を直せば目の前には2メートルはあろうかオレンジの巨体。
風に靡く立派な鬣、鋭い目付きで男を睨むウインディはサクラを守るにして立ち塞がる。
「初めてみるポケモンだね。
君の肩で僕を威嚇している子達も初めて見るし君の周りは僕にとって初めてだらけだ」
男の澱んだ瞳が一瞬だけ輝いた気がした。
一度、ゾロアークに飛ばされたにも関わらず先程から言うサクラへの興味か、それともサクラが連れたポケモン達へ好奇心からか男は此方に近付いてくる。
「ゾロアー・・・今はウインディだね」
サクラはウインディの背に跨がると雑木林から出るようお願いした。
『良いのか』
ちらりと此方へ向かってくる緑を見て、彼は尋ねるのだがサクラは彼の鬣に顔を埋めて頷く。
「あの人怖い」
それがサクラの率直な感想。
トウコとトウヤと同様にストーキングされていた事よりも相手の得体の知れない雰囲気にサクラは恐怖した。
サクラを背に乗せたウインディは彼女が確りと自分の体にしがみついているのを確かめると近付く男を睨み付けて"にほんばれ"する。
薄暗い雑木林に視界を遮る程の強い日差しが差し込むと、相手が目を瞑る内に雑木林を脱け出した。
其処から"こうそくいどう"を使い目にも留まらぬ速さで雑木林から離れればノボリとクダリと会う約束をした噴水はすぐ。
足を止めると同時に姿をウインディからゾロアークに戻ってもらい、彼の肩から降りたサクラはさも走ってきたかの様な素振りで噴水の反対側にいた二人の前に出る。
「すみません、長いことお待たせして」
そう言ったサクラの足元には少し遅れてゾロアに化けたゾロアーク。
「そんなに待ってない!」
と言ったクダリからは何やら咀嚼の音が聞こえた。
見れば少し前に彼が食べたいと言っていたポップコーンがピカチュウを模した容器に入ってクダリに抱えられている。
「待ったと言ってもほんの10分程度でございます」
ノボリの言葉にサクラは腕時計を見れば、確かに二人と別れてから10分経ったか経っていないかだった。
「嘘っ」
あれほど長く感じた時間が10分!
その事実にサクラはただ驚くしか無い。
まだ遊園地で遊んでもいないのに体を襲う疲労感に深い溜め息を吐いていれば何時の間に肩へ移動したのか、プラスルとマイナンが『お疲れさん』と言わんばかりにサクラの肩を叩いた。
噴水の縁に座っていたクダリは立ち上がり、
「じゃあ、サクラちゃんも戻ってきたし」
サクラの手を掴むと
「さっそく園内を回りましょう」
もう片方はノボリが掴む。
「ライモンの遊園地は凄く大きいから」
「半日あっても周りきれません」
のんびりしてはいられないと言う二人に「そうですね」とサクラは笑った。
遊園地にはまだ来たばかりなのだから