双子と弁当屋の娘
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四角い弁当箱に綺麗に並ぶおにぎりにおかず、それとは別の箱には色とりどりの野菜やハムが挟まれたサンドイッチ。
まだ弁当箱に詰められていない玉子焼きに小さな手が忍び寄っていた。
「こら!」
玉子焼きに伸ばされた二つの手を軽く叩けば手の主であるプラスルとマイナンは慌てて逃げ出す。
その無邪気な姿にサクラは溜め息一つ。
「もう、隙をみせるとこれなんだから」
弁当のおかずを狙ってやってきたポケモンはプラスルとマイナンだけではない。
既に何匹もの幼いポケモンがおかずを狙っては追い返され、また狙っては追い返されてを繰り返していた。
この状況に落ち着いて弁当も作れないと溢せば、後ろから『全くだ』と返事が返ってくる。
見ればうさぎ型に切った林檎を当たり前の顔をして食べるゾロア(に化けたゾロアーク)の姿。
「そう言うあんたは何をしてるのよ」
振り下ろされたサクラのチョップにゾロアークは軽く潰れた。
ベタリと机に貼り付くゾロアークを睨めば『えー・・・毒味?』等と適当な答えが返ってくる。
「林檎に毒が入ってるわけないでしょ!」
『でもほら、林檎を食べて仮死状態になった姫がいるだろ』
「あれは童話の話!」
「朝から何かしとると思ったら弁当を作っとたのか」
休日のせいかまだ寝間着の老人にサクラは「おはようおじいちゃん」と声を掛けた。
「ああ、おはよう」
と、返して厨房に入った老人は珈琲を作り出す。
インスタントの粉をカップに入れ、湯が沸くのを待っていた老人は目の前に置かれた玉子焼きを一切れ口に放り込む。
「あ、あー!!」
老人が玉子焼きを食べる所を目撃したサクラは大きな声を上げた。
『うるせえ・・・』
「おじいちゃんが玉子焼きを食べたー!」
「味はまずまずだな」
「しかも判定されてる?!」
「年寄りには少し塩が多すぎる気がするが若いあの坊主等相手なら丁度良いだろ」
カップに沸騰したお湯を注いだ老人は笑ってサクラの頭を撫でた。
「デートが上手くいくと良いな」
「デート違う!!」
そう否定しても老人の表情は変わらず、「ついでに朝食も頼む」と頼む事を頼むだけで珈琲片手にリビングへ行ってしまう。
サクラは自分をからかう老人を恨めしげに見つめながらも朝食の準備を始めた。
メインは弁当を作った際に余ったサンドイッチで良いだろうと考えたサクラはおかずを一品作る事を決める。
冷蔵庫から卵を取りだし、サンドイッチや弁当に使って余った野菜を微塵切りに、調味料に牛乳も少し加え混ぜ合わせ弱火のフライパンでじっくり焼くだけ。
「お待たせしましたー
サンドイッチとスパニッシュオムレツにございまーす」
愛想の無い飲食店の店員風に用意した朝食を卓袱台に置いた。
匂いに釣られて集まりだしたポケモン達にはポケモンフーズを与える。
「うん、此方は美味いな」
玉子焼きの時の様な厳しい評価はなく、ただ美味しいと言った老人にサクラは胸を撫で下ろした。
『俺にも一口』
ゾロアークが私の膝の上でせがむので一口あげれば、まだ熱かったのか痛々しい声が聴こえる。
「お前、今日の遊園地はその格好で行くのか」
新聞を眺めながらの問いにサクラは「そう」と答えた。
白いTシャツに七分丈のジーパン。
「これに黒のベストを着ていこうかなって」
何処かのお嬢さんと被る服装だがタンスの中身と相談した結果、これが一番動き易いだろうという答えが出たのだ。
「可愛げないな、」
老人の呟きは聴こえていない。
だが一緒についた溜め息はサクラにも聴こえた。
「どうしたの?」
「いや、何でも・・・あるか」
そう答えた老人は自身の相棒であるルージュラを呼んだ。
特に大声を出したわけでもないのにルージュラはドタバタと二階から一階のリビングへと降りてくる。
「こいつは今日、遊園地でデート何だ。
それを踏まえた上で服を選んでやってくれ」
『任せて、ご主人様』
語尾にハートマークでも付きそうな甘い声で答えたルージュラはサクラの腕を確り掴むと彼女に喋る暇も与えずまた階段を上がっていく。
「さて、後は彼女がどうにかしてくれるだろう」
のんびりと既に休日を満喫している老人は何処か愉しげに程好く冷めた珈琲を口にした。
『やっぱり恐ろしいじいさんだ』
現れたルージュラに慌てて卓袱台下に避難していたゾロアークがそんな事を思っていたなど知らず、休日の午前は忙しなく過ぎていく。
「おー白いボスがちゃんと書類をしとる」
珍しい事もあるなぁ、と言ったクラウドの手には追加の書類が束で握られていた。
その量にクダリは「うわぁ」と心の底から嫌そうな声を漏らす。
だが、いつもなら此処でクダリを叱るノボリの声は無い。
ノボリはクダリが溜めた書類を手伝うのでいっぱいいっぱいだった。
「追加の書類をでしたら何時もの場所に、急ぎの書類でしたら此処に置いて下さい」
クラウドの方を見ず、ひたすら書類に目を通すノボリは指示を出すだけ出して書類にサインをする。
「それ、どっち?」
喋りながらも手を動かすクダリにクラウドは内心驚く。
彼は眉を下げて
「残念やけど今日中ですわ」
と答えた。
「またですか」
憎々しく声を上げたのはノボリ。
その手には今に彼の握力で折れてしまいそうなペンが震えていた。
「どうしてこうも予定が入っている時に限って急ぎの書類が沸いて出てくるのでしょうね」
実を言うと今日の為にと、溜まる書類を昨日の内に片付けたノボリとクダリ。
これなら今日はすぐに帰れるだろうと思っていたのに出勤してみれば急ぎの書類が山の様に二人の机に溜まっていた。
その光景に目眩を感じたのに
「"ボス!挑戦者が12戦目に勝利しました。準備をお願いします"」
インカムのヘッドホンから聴こえる駅員の声にノボリ頭をおさえて立ち上がる。
「今日はえらいお客さんが多い日ですな」
午後からトレインの点検と知ってか知らずか、客足が途切れる事が無かった。
執務室に戻っては出て戻っては出てに仕事が進むわけがなく、今もこうして運ばれてくる書類が机に山を作る。
何時もなら書類仕事の時はコートと制帽を脱ぐ二人も今日は朝からつけぱなしでバトルも書類の業務もこなす。
着脱の時間が惜しいと思う程二人には時間が無かった。
「では、私は行って来ますので
くれぐれもサボらぬ様に」
「分かってる!ちゃんとサボらずしてるから早く帰って来て」
「大丈夫です。速攻で終わらせますので」
不敵な笑みで出ていったノボリをクダリは珍しい者でも見るように見送る。
「何?」
まだ用でもあるのかと言わんばかりに尋ねたクダリの口角はまるでノボリの様に下がっていた。
先程、部屋から出て言った筈のノボリがまだこの部屋にいるかの様な錯覚を起こしながらクラウドは首を横へ振る。
「いや、ボス等が嬢ちゃんとのデート楽しみにしとんやなと思いまして」
今までプライベートよりポケモンバトルと電車に時間を注ぎ込んでいた二人が、少女と行く遊園地の為に必死で仕事を片付けているのだ。
「デートじゃないけど楽しみなのはあってる。
サクラちゃんと遊園地だもん」
何か楽しい事でも想像しているのかやっとクダリの口角は上がった。
動かすペンを止め、仕事の後の遊園地に思いを馳せるクダリをインカムのヘッドホンが現実へと引き戻す。
「"ボス、スーパーダブルで挑戦者が41戦目を勝利しました。準備お願いします"」
「分かった!」
通信が切れたのを確認してからクダリは苛ついた声を上げた。
何時もなら楽しみで仕方がないバトルの知らせが今は煩わしくて仕方がないのだ。
「じゃあ、僕も行ってくるから書類はノボリが言ってたとこに置いといて!」
「分かりましたわ。因みにボス!約束は何時から?」
もう部屋から出掛けていたクダリは大きな声で「13時!」と叫ぶ。
「13時って、」
クラウドが部屋に置かれた時計を見ると後少しで正午になろうと言うときだった。
「もう、一時間切るやないですか」
まだ弁当箱に詰められていない玉子焼きに小さな手が忍び寄っていた。
「こら!」
玉子焼きに伸ばされた二つの手を軽く叩けば手の主であるプラスルとマイナンは慌てて逃げ出す。
その無邪気な姿にサクラは溜め息一つ。
「もう、隙をみせるとこれなんだから」
弁当のおかずを狙ってやってきたポケモンはプラスルとマイナンだけではない。
既に何匹もの幼いポケモンがおかずを狙っては追い返され、また狙っては追い返されてを繰り返していた。
この状況に落ち着いて弁当も作れないと溢せば、後ろから『全くだ』と返事が返ってくる。
見ればうさぎ型に切った林檎を当たり前の顔をして食べるゾロア(に化けたゾロアーク)の姿。
「そう言うあんたは何をしてるのよ」
振り下ろされたサクラのチョップにゾロアークは軽く潰れた。
ベタリと机に貼り付くゾロアークを睨めば『えー・・・毒味?』等と適当な答えが返ってくる。
「林檎に毒が入ってるわけないでしょ!」
『でもほら、林檎を食べて仮死状態になった姫がいるだろ』
「あれは童話の話!」
「朝から何かしとると思ったら弁当を作っとたのか」
休日のせいかまだ寝間着の老人にサクラは「おはようおじいちゃん」と声を掛けた。
「ああ、おはよう」
と、返して厨房に入った老人は珈琲を作り出す。
インスタントの粉をカップに入れ、湯が沸くのを待っていた老人は目の前に置かれた玉子焼きを一切れ口に放り込む。
「あ、あー!!」
老人が玉子焼きを食べる所を目撃したサクラは大きな声を上げた。
『うるせえ・・・』
「おじいちゃんが玉子焼きを食べたー!」
「味はまずまずだな」
「しかも判定されてる?!」
「年寄りには少し塩が多すぎる気がするが若いあの坊主等相手なら丁度良いだろ」
カップに沸騰したお湯を注いだ老人は笑ってサクラの頭を撫でた。
「デートが上手くいくと良いな」
「デート違う!!」
そう否定しても老人の表情は変わらず、「ついでに朝食も頼む」と頼む事を頼むだけで珈琲片手にリビングへ行ってしまう。
サクラは自分をからかう老人を恨めしげに見つめながらも朝食の準備を始めた。
メインは弁当を作った際に余ったサンドイッチで良いだろうと考えたサクラはおかずを一品作る事を決める。
冷蔵庫から卵を取りだし、サンドイッチや弁当に使って余った野菜を微塵切りに、調味料に牛乳も少し加え混ぜ合わせ弱火のフライパンでじっくり焼くだけ。
「お待たせしましたー
サンドイッチとスパニッシュオムレツにございまーす」
愛想の無い飲食店の店員風に用意した朝食を卓袱台に置いた。
匂いに釣られて集まりだしたポケモン達にはポケモンフーズを与える。
「うん、此方は美味いな」
玉子焼きの時の様な厳しい評価はなく、ただ美味しいと言った老人にサクラは胸を撫で下ろした。
『俺にも一口』
ゾロアークが私の膝の上でせがむので一口あげれば、まだ熱かったのか痛々しい声が聴こえる。
「お前、今日の遊園地はその格好で行くのか」
新聞を眺めながらの問いにサクラは「そう」と答えた。
白いTシャツに七分丈のジーパン。
「これに黒のベストを着ていこうかなって」
何処かのお嬢さんと被る服装だがタンスの中身と相談した結果、これが一番動き易いだろうという答えが出たのだ。
「可愛げないな、」
老人の呟きは聴こえていない。
だが一緒についた溜め息はサクラにも聴こえた。
「どうしたの?」
「いや、何でも・・・あるか」
そう答えた老人は自身の相棒であるルージュラを呼んだ。
特に大声を出したわけでもないのにルージュラはドタバタと二階から一階のリビングへと降りてくる。
「こいつは今日、遊園地でデート何だ。
それを踏まえた上で服を選んでやってくれ」
『任せて、ご主人様』
語尾にハートマークでも付きそうな甘い声で答えたルージュラはサクラの腕を確り掴むと彼女に喋る暇も与えずまた階段を上がっていく。
「さて、後は彼女がどうにかしてくれるだろう」
のんびりと既に休日を満喫している老人は何処か愉しげに程好く冷めた珈琲を口にした。
『やっぱり恐ろしいじいさんだ』
現れたルージュラに慌てて卓袱台下に避難していたゾロアークがそんな事を思っていたなど知らず、休日の午前は忙しなく過ぎていく。
「おー白いボスがちゃんと書類をしとる」
珍しい事もあるなぁ、と言ったクラウドの手には追加の書類が束で握られていた。
その量にクダリは「うわぁ」と心の底から嫌そうな声を漏らす。
だが、いつもなら此処でクダリを叱るノボリの声は無い。
ノボリはクダリが溜めた書類を手伝うのでいっぱいいっぱいだった。
「追加の書類をでしたら何時もの場所に、急ぎの書類でしたら此処に置いて下さい」
クラウドの方を見ず、ひたすら書類に目を通すノボリは指示を出すだけ出して書類にサインをする。
「それ、どっち?」
喋りながらも手を動かすクダリにクラウドは内心驚く。
彼は眉を下げて
「残念やけど今日中ですわ」
と答えた。
「またですか」
憎々しく声を上げたのはノボリ。
その手には今に彼の握力で折れてしまいそうなペンが震えていた。
「どうしてこうも予定が入っている時に限って急ぎの書類が沸いて出てくるのでしょうね」
実を言うと今日の為にと、溜まる書類を昨日の内に片付けたノボリとクダリ。
これなら今日はすぐに帰れるだろうと思っていたのに出勤してみれば急ぎの書類が山の様に二人の机に溜まっていた。
その光景に目眩を感じたのに
「"ボス!挑戦者が12戦目に勝利しました。準備をお願いします"」
インカムのヘッドホンから聴こえる駅員の声にノボリ頭をおさえて立ち上がる。
「今日はえらいお客さんが多い日ですな」
午後からトレインの点検と知ってか知らずか、客足が途切れる事が無かった。
執務室に戻っては出て戻っては出てに仕事が進むわけがなく、今もこうして運ばれてくる書類が机に山を作る。
何時もなら書類仕事の時はコートと制帽を脱ぐ二人も今日は朝からつけぱなしでバトルも書類の業務もこなす。
着脱の時間が惜しいと思う程二人には時間が無かった。
「では、私は行って来ますので
くれぐれもサボらぬ様に」
「分かってる!ちゃんとサボらずしてるから早く帰って来て」
「大丈夫です。速攻で終わらせますので」
不敵な笑みで出ていったノボリをクダリは珍しい者でも見るように見送る。
「何?」
まだ用でもあるのかと言わんばかりに尋ねたクダリの口角はまるでノボリの様に下がっていた。
先程、部屋から出て言った筈のノボリがまだこの部屋にいるかの様な錯覚を起こしながらクラウドは首を横へ振る。
「いや、ボス等が嬢ちゃんとのデート楽しみにしとんやなと思いまして」
今までプライベートよりポケモンバトルと電車に時間を注ぎ込んでいた二人が、少女と行く遊園地の為に必死で仕事を片付けているのだ。
「デートじゃないけど楽しみなのはあってる。
サクラちゃんと遊園地だもん」
何か楽しい事でも想像しているのかやっとクダリの口角は上がった。
動かすペンを止め、仕事の後の遊園地に思いを馳せるクダリをインカムのヘッドホンが現実へと引き戻す。
「"ボス、スーパーダブルで挑戦者が41戦目を勝利しました。準備お願いします"」
「分かった!」
通信が切れたのを確認してからクダリは苛ついた声を上げた。
何時もなら楽しみで仕方がないバトルの知らせが今は煩わしくて仕方がないのだ。
「じゃあ、僕も行ってくるから書類はノボリが言ってたとこに置いといて!」
「分かりましたわ。因みにボス!約束は何時から?」
もう部屋から出掛けていたクダリは大きな声で「13時!」と叫ぶ。
「13時って、」
クラウドが部屋に置かれた時計を見ると後少しで正午になろうと言うときだった。
「もう、一時間切るやないですか」