双子と弁当屋の娘
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「これ、どうしよう」
机に肘をつき、溜め息をついたサクラの手にはライモンにある遊園地のパスポートが三枚。
新聞片手にサクラとは向かいの場所に腰を下ろした老人は「まだ言ってたのか」と呆れ顔で新聞を広げる。
「だってせっかく貰ったのに捨てるのは勿体ないでしょ?」
パスポートは貰い物だった。
丁度今、老人が開いた新聞の店のおじさんに貰った物で、「余った」から昔からの馴染みで三枚貰ったのだ。
だがこの家にはサクラと老人の二人しかおらず老人曰く「一日中、観覧車を乗っていたいのならついていってやろう」との事。だがそれではつまらないとサクラは譲歩を求めるのだが、老人は譲らなかった。
それならいっそ、誰かにあげようと考えたのだが近所付き合い等無縁の場所で欲しがる知り合いもいない。
「せっかく貰ったんだ。誰かと行ってくればいいだろ
この間、泊まりにきた双子はどうだ?」
「トウコちゃんとトウヤ君は駄目。今、フキヨセシティに向かってるから」
「そう言えばバッチを集めてるんだってな」
「そうよ。だから忙しくて遊園地で遊んでる暇がないの」
そうか、と老人は新聞を捲った。
「・・・他に友人はいないのか?」
流石に友人が二人とかはないだろと言った老人にサクラは友人らしい人を頭に浮かべた。
「・・・」
「おい、どうした?」
急に落ち込み出したサクラに老人は驚いて肩を揺する。
「よくよく考えて見ると知り合いばっかりで友人が殆どいなかった」
サクラの暗い告白に老人は「そうか」としか言えなかった。
「まあ、何だその・・・友人なんて作ろうと思えばすぐに作れるさ」
「そう、だよね」
落ち込むサクラの側にいたゾロアークがサクラの頭を撫でて、リビングにいた幼いポケモン達は慰めてか甘えてかまるで押しくらまんじゅうの様にぎゅうぎゅうに体を押し合った。
「ほれ、お前を慰めようと先生やちび達がおる。貰い手がいなかったら先生やちび達を連れて三回遊園地にでも行けば良いだろ」
「・・・最終はそうするよ」
未だぎゅうぎゅうと抱き付く彼等に笑みを浮かべながらサクラは言った。
「遊園地のチケット?」
差し出された薄い紙を見てクダリは頭を傾げた。
「知り合いから三枚貰ったんですけど一緒に行く相手がいなくて」
説明しながらもサクラはお弁当を袋に詰めた。
ミックスフライに幕の内のお弁当、味噌汁も袋に入れて「どうぞ」とカウンター向こうの相手に渡す。
「これは遊園地のパスポートではありませんか。こんなものを頂いて宜しいのですか」
弁当を受け取ったノボリの言葉にサクラは苦笑い。
「ノボリさんやクダリさん以外に譲る相手もいないですし、一人で遊園地に行っても仕方無いですから」
遊園地にいけると期待している幼いポケモン達には悪いが流石に人間一人、ポケモン大勢では視覚的に私の精神的にも虚しいモノがあった。
一人で遊園地何て寂しすぎるし、広い遊園地で幼いポケモン達の面倒を見ながらっというのも骨が折れそうだ。
それならば、と丁度店にお弁当を買いにきたノボリさんとクダリさんに渡してみた。
そう言えば二人に会うのは久し振りかも
「ですがこんな高価なものを頂くわけには」
「大丈夫です。貰い物だから元手はタダなんです。もしお仕事で行けそうにないんでしたら職場の方にあげても良いですし、取り敢えず貰って下さい」
サクラがここまで言ってもノボリは渋った表情をした。
するとクダリが「そうだ」と声を上げる。
「だったらこの三枚のチケットを使って僕達二人と、サクラちゃんで遊園地に行こう!」
「え」
「それは素晴らしいアイデアでございます!その案ならば三枚のチケットも有効に使えますし、サクラ様も遊園地に行けますね」
「え、あの」
「でしょー
僕ってば頭良い!」
「確かサクラ様は土日がお休みでございましたね」
「そうなの?」
「あ、はい。一応・・・」
前に少し話しただけの筈なのに覚えていたノボリの記憶力にサクラは思わず拍手を送りたくなる。
「だったら今週の土曜、どう?」
「そう言えば今週はまた点検が入っていました」
「どうって」
暇だと答えればクダリは満開の笑顔で「じゃあ決まり!」と言う。
「じゃあ今週土曜!」
「13時丁度に遊園地の入り口でお待ち下さい」
「可愛い服着てきてね」
「あの・・・!」
サクラが反論する隙も断わる隙も一切なかった。
今週の土曜、楽しみにしていると追撃も許さず帰っていく二人にサクラはただうちひしがれる。
「何やあの二人。ごっつご機嫌やったで」
独特なしゃべり方に顔を上げればカウンター向こうにクラウドが立っていた。
二人の帰った方向を怪訝な顔で見つめるクラウドにサクラご注文は何か尋ねる。
「チキン南蛮の弁当に味噌汁一つ頼むわ」
ソース多目になと言ったクラウドにサクラはそのまま後ろで調理をする老人に伝えた。
弁当箱に大盛りご飯と、甘酢に浸けたカツがこれでもかと言うほど乗せられる。
「何か悪いなじいさん。何時もサービスしてもろうて」
クラウドの言葉に老人は「何言ってんだ」と笑う。
「サービスなんかしとらんよ。これが家の並盛りさ」
ぎっちぎちで弁当の蓋も閉まるか閉まらないか、おかずの詰められた弁当を袋に入れる。
別の袋に入らなかったタルタルソース入りの容器を入れて味噌汁や弁当の袋と一緒にクラウドへ渡した。
「チキン南蛮のお弁当とお味噌汁ですね」
どうぞ、と渡せば「おおきにな」と何時もの様に飴を渡される。
ハート型の苺の飴という随分可愛らしいものに意外だとサクラが顔を上げれば、クラウドは照れた顔をしていた。
「貰いもんや!」
「クラウドさんにこんな可愛らしいものをあげる人がいるんですね」
そうからかえば喧しいわ!と額にデコピンをされてサクラは悶絶する。
「そう言う自分はどうなんや?ボス二人とデートやないか」
「デートって!そんな、
違います!!」
にやにやといやらしく笑うクラウドにサクラは否定するのだが、聞き入れて貰えず。
「せっかくボス二人が貴重な休み使ってまで誘ってくれたんや。
確り着飾ってボス二人を喜ばせたりや」
「だーかーらー!」
私の話を聞いてと言うも結局、最後まで聞いて貰えずクラウドは勝手に煽って仕事場に戻っていく。
「デートじゃないのに・・・」
聞く相手もおらず、サクラが呟いた言葉は虚しく消えた。